第6話 ずっと

僕の名前は瑠璃祭るりまつりネオン。

幼馴染の千里せんりナリアに恋心を抱いている。

だが相手は僕のことを幼馴染以上には思っていないらしい。

そんなナリアに告ろうとしている人がいるらしい。


そいつの名前は西園寺翔。

非の打ち所のないやつだ。しかも西園寺がナリアに告るのは

なんと今日の予定らしい。

なのに!なのに今日という日に限って外せない用事があり、家から出られない。

そのことを伝えると、大柚がリモート通話で隠し撮りしてくれるらしい。

隠してほしいというのは僕の要望だ。


大柚から電話だ。皆と合流したら掛けてくれと言っているので

全員が揃ったということだろう。


大柚と通話を繋いでから約一時間、西園寺がそれっぽいことを言い始める。

恋バナをしているようだ。心臓の鼓動が早くなる。

すると、

「公開処刑みたいで申し訳ないんだけど、付き合ってくれませんか?」

……沈黙が流れる。

「あぁ...えっとですね...あの...ごめんなさい!」

えっ?なんでだ?ナリア、彼氏欲しいって言ってたじゃないか。

それなのになんで?

「ごめんね、でも友達のままでいてね!」

ナリアが言った。

「アハハ、そうだよなー!やっぱ無理か〜!」

西園寺はポジティブだ。

その後は何もなかったように会話は続いていった。

途中、本命の用事で抜けたが、何事もなかったらしい。

それにしてもなんでだ?正直覚悟は決めていた。


あの後、大柚に、「だから心配要らなかったでしょ!」と言われた。

大柚の奴も何を考えてるんだか全くわからない。


あれから一週間、いつものように三人で遊んでいると、

「ナリア、例のやつ、そろそろ潮時じゃない?」

大柚がニヤニヤしながら言った。

「あぁ、OK。分かった、ちょっと待って。一旦もち...じゃない、落ち着くから。」

ナリアが珍しく動揺している。


「あのね?ネオン?私が付き合ってって言ったら、どうする?」

ちょっと待ってくれ。時間が止まった。

これは「はい」と返すべきなのか。それとも揶揄られているのか?

「揶揄ってる?」

僕が聞くと、

「いいや?真面目に。」

マズイ、手が震えている自覚がある。

ここでOKと返すと、男の子として情けない気がする。

「じゃぁ、逆に僕が付き合ってって言ったらどうする?」

と、言ってみた。

すると、

「ハイハイじれったい!ふたりとも正直に言いなさい!お互いに!」

大柚が言った。

『……付き合ってください!』

ナリアと僕がハモった。

「はい、よくできました〜!これで成立だね!」

お気楽だな大柚は!

「この前のプレッツェル、凄く嬉しかった。昔から、とっても優しくて、

 いつでも明るいネオンが好きだった...。それにしても10年くらい

 気づかないなんて鈍感過ぎるでしょ!」

ナリアが顔を赤くして言う。

「ぼ、僕もナリアの優しさにずっと助けられてきた。

幼馴染としてしか思われていないんじゃないかって思ってたから、

なかなか言い出しづらかったんだけど、想いを伝えられて良かった。」

「私もネオンに幼馴染くらいにしか思われてないんじゃないかって思ってたから、

いま、言えてホントに良かったなって思ってる!」

ナリアが笑った。自然と僕も笑顔になる。改めて素敵だなって思う。

「私の傍にずっといてね!」

「もちろん!これからもよろしくね!」

青空の下、君の姿はとても輝いていた。


「よーし!スタバ行くか〜!」

大柚が言った。

『おー!』

僕等は歩き出す。



ずっと伝えたかった想い、伝えられて良かった。




あれから10年。

僕とナリアは結婚した。沢山喧嘩もしたし、笑顔も沢山あった。

子宝にも恵まれ、無事に第一子が生まれた。

この子とナリアの幸せを守る。僕はそう誓った。


今日は快晴だ。空が澄み切っている。

こんな平和な日常がずっと続いていきますように。




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プレッツェル  音心みら🍀 @negokoromira

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