第3話 悪戯……しちゃうわよ……?
//右側のかなり近い距離から
「すぅ……すぅ……んむ……すぅ……」
ベッドの上、あなたにしがみつくようにして眠っている千夏が、耳元で静かな寝息を立てている。
「んんぅ……ん……あ…れ……?」
「えっ……」
目を覚ますと、あなたに抱きつくように添い寝していたことに気付いて言葉を失う千夏。
あなたの身体に回していた手を慌てて引っ込めて、距離を取る。
//右側の中くらいの距離から
「なんで、私……隣……寝てるのっ……!?」
段々とさっきまでのことを思い出してきて、頬を染める。
「……思い出してきた。そういえば私、読み聞かせASMRしてる途中でハグして、そのまま……」
千夏は恐る恐る、仰向けで眠っているあなたの上に覆いかぶさるような体勢になる。
//正面の近くから
「……ねえ、寝てるの?」
「……ねえってば……起きないと、悪戯……しちゃうわよ……?」
//左側の近くから
「……ホントに、するよ?」
ゆっくりと左頬に唇を近付けられ、「ちゅっ」と渇いたリップ音を落として段々離れていく。
//正面の中くらいの距離から
「……しちゃった……やば……私、ほっぺにちゅー……んふふ」
//正面の近くから
「……無防備な寝顔……かわいい」
「……ねえ」
「……寝てる……わよね……?」
少し間を置いてから、右耳に唇を寄せる。
//右側のすごく近くから
「……好き」
その一言を言うなり、弾かれたように距離を取り、あなたに背中を向けて悶える千夏。
//右側の遠くから
「んんぅぅぅんぬううぅぅぬぐぐぐ……」
たっぷりと悶えてから、千夏はのそのそと再びあなたに近付いていく。
(ベッドの上を移動する音)
//正面の近くから
千夏は呼吸を整えながら、ゆっくりと唇を開いた。
「あんたのことが……好き……」
//左側のすぐ近くから
あなたの左耳たぶに「ちゅっ」と軽いキスを落とした。
「んふ……ふふふ」
//斜め左前方の近くから
千夏は溢れ出てしまったような笑みを浮かべながら、あなたの左頬にも「ちゅっ」とキスをした。
//正面の近くから
「……もっといっぱい、お姉ちゃんよりASMR上手になるから、
一生私がASMRしてあげるから……私と付き合ってよ」
//斜め右前方の近くから
千夏は我慢できないとばかりにあなたの首元に顔を寄せて、「スゥゥ」と匂いを吸い込んだ。
「……好き……大好き……」
いつの間にか二人の体は密着していて、千夏はあなたの身体を堪能するように自分の体を擦りつける。
しばらくその体勢のまま、千夏は甘い吐息と時々小さな笑みを漏らす。
やがて満足したように首元から顔を離すと、寝惚けた表情であなたは千夏を見詰めていた。
(あなたが起きたことと、千夏が体を離したことを暗示させるシーツのクシャってなる音)
//正面の近くから
「あ゛っ……お、起きっ……!?」
千夏は慌ててあなたから飛び退く。
(ベッドの軋む音)
あなたはゆっくり上半身を起こし、眠い目を擦りながら千夏の方へと体を向けた。
//正面の中くらいの距離から
「ちがっ、あのっ、これは、そのっ……!私からあんたに、そのっ、だ、抱き着いてたんじゃなくて……!」
「……そんなに落ち着かれたら、慌ててる私がバカみたいじゃない……」
あなたが想像よりも落ち着いていたことに千夏は文句を垂れるも、その声は小さすぎてあなたには聞こえず、聞き返した。
「なんて?って……なんでもないわよ!!」
「怒ってないし!!」
あなたが落ち着き過ぎていることに対する怒りと、照れ隠しとでぷりぷりしている千夏を、あなたは抱きしめます。
//左側の近くから
「ちょっ……!なに抱きしめてっ……!?」
「……ふにゃふにゃしちゃって。
あーあ。なんかあんた見てたらちょっと落ち着いてきちゃったし、添い寝ASMRでもしてあげよっか?」
揶揄うように千夏はそう言ったが、あなたは既に夢の世界へ旅立っていた。
「……って、もう寝てるし。どんだけ意識されてないのよ、私。…………はぁ」
千夏はあなたをベッドに寝かせる。
//正面の近くから
あなたのおでこに「ちゅっ」とキスを落とした。
//右側のすぐ近くから
「絶対あんたに振り向かせてみせるから」
千夏はそれだけ言い残すと、完全に眠ってしまっているあなたの頭を軽く撫でて、起こさないよう静かに部屋から出て行った。
(扉の開閉音)
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