第14話 オチへの階段

 あっという間に人生が変わっていく。そういう時期というのは確かにある。


 俺にとっては今がそれだ。

 

 一方的に振った相手が、俺をおいかけて転校までしてきた。

 そんなことふつうに考えたら許容できないものだけど、相手がアリスだと考えると、ありえないことではないとも思えた。


 そう。

 ありえないことでもない、ということは多々ある。

 まるで漫画みたいな展開でも、実際に体験した人間からしたら、それが真実だ。

『作り話だろ』とののしる相手にも、証拠を見せたら万事解決? いや、そういうわけでもないんだ。


 信じるってそういうことじゃないんだ。


     ?


 さて。

 なんで俺がこんな話をしているかといえば、それは実に代わり映えのしない日曜日の午後のことだった。


 その日、俺は自宅でヘロヘロになっていた。

 平日の疲れというのは、平日に感じないものだ。それは休日になったとたん、ありえない速度で襲い掛かってくる。


 ということで、俺は、ベッドに寝転がって、意味もなくスマホをいじっていた。


 何気ないニュースが上から下へと流れていく。


 芸能人の浮気。

 ラーメン屋倒産。

 地元のニュース。

 芸能人の結婚。

 格闘技の結果。

 DNA鑑定会社の報告義務違反――DNA? 遺伝子?


 俺の手はそこで止まる。

 横たえていた身を起こし、ニュースを見た……。



『様々な分野(主にバイオ)にて急成長を遂げ、去年には上場を果たした×××。DNA鑑定も事業の一つとしているが、近年、クラッカーによる不正アクセスにより、情報改ざんをされ、利用者に不利益を与えていた可能性があることが、内部からの告発により発覚した。その事実を隠し、補助金を受けている国、株主への説明もせず、経営報告に虚偽情報を――』


「いや、待て」


 俺は誰に話している? 知らんけど。


 知らんけど。

 知らんけど――ただ一つ分かるのは、このDNA鑑定の会社。


 俺が依頼した会社じゃないのか……?


 え?

 まじで?

 情報改ざんってまじ?

 それってつまりなんだ?

 俺とアリスの検査結果が間違っていた可能性があるということか?


「うそだろ」


 いや、嘘じゃないっぽい。

 調べれば調べるほど、確かである。

 さらに俺が検査を依頼した時期とまるかぶりしている。

 ありがとう、ネット情報。できれば知らないままのほうが幸せだった。



 なーんだ!

 俺とアリスは兄妹じゃなかったんだ!

 よかったよかった――わけあるかっ。


「……ほかのところで、調べないと」


 本当に間違っていたのなら。

 俺がただただ馬鹿なことをしただけということじゃないか。


 それを確かめるには。


「アリスの毛髪だ……」


 っく。


 別れてしまった今では、髪の毛すら手に入れることが、困難思えたが――やらなければならない。

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元カノが生き別れた双子の妹だと俺だけが知っている 天道 源 @kugakyuu

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