第2話 開戦

正暦1025年9月1日 イルピア大陸南部 トーリア共和国


「行ってきまーす」


 トーリア中部にある湖のほとりにて、一人の少年が自転車に乗って家を後にしていく。隣には同級生の少女が自転車に乗ってやってきて、少年に話しかけてくる。


「おはよう、ユーリ。今日もいい天気だね」


「うん…」


 と、その時だった。走っている最中、空から轟音が聞こえてくる。見上げると上空には、数機の軍用機が舞い、白い線を引きながら飛び交っている光景が広がっていた。


・・・


ヴォストキア王国南西部 ベレスク空軍基地


 西部の都市ベレスク、その郊外にある空軍基地にて、十数人のパイロットが会議室に集っていた。


「先程、警戒隊のレーダーが国籍不明機の領空侵犯を確認した。さらに外務省より国防省を介して通達があった。ローディシア共和国がイルピア大陸東部諸国に対して宣戦布告し、軍事侵攻を開始するとの事だ」


 会議室に、にわかにざわめきが広がる。それが意味するものを瞬時に理解していた。


「飛行隊は現時刻を以て戦闘態勢に移行、直ちに国籍不明機を確認し、警告を実施せよ。もし相手が敵対意思を見せてきた場合、即座に応戦せよ!これは訓練ではない!」


『了解!』


 敬礼の後、一同はハンガーへと駆け込む。そしてエンジンを始動させた機体はタキシングで滑走路へと向かっていく。そして滑走路に到達するなり、エンジン出力が高まるのが音で聞こえてくる。


「シールド2、離陸を許可する」

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イルピア大陸戦争 広瀬妟子 @hm80

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