第12話
「―――まあ、解体のことは明日の自分に任せよう、うん」
一応、思い出せるように頑張って記憶をたどっては見るけど。
ただ、いまいち記憶があいまいなところがあったり、不意に昔の記憶がやたらと蘇ってくることがある。
なんとも妙な感覚。
ここで目覚めた時から、なんとなく感覚が鈍いことは気づいていたが、いまだにその鈍さは続いている。
ただ、その感覚が鈍いせいで痛覚なんかを激しく感じていないのか、それともステアップのせいなのかははっきりとなんとも。
さて、あの付近の様子見をかねて、掘りだした粘土を拾ってこよう。
ホントはいかないほうがいいのかもしれないけど、小心者なんでどうしても確認しておきたい。
こちらに戻ってくる際には確認はしていたものの、もう少し調べて、あの辺りに生息するタイプなのか、それともたまたまあそこにいただけなのかが少し気になる。
さすがにまた掘り出すほどの度胸はないけど。
さくっと遠足気分だった前回とは違い、石で作った手斧もしっかりと持ったまま移動し、少し周りに注意を払いながら土を掘った場所に。
掘り起こした粘土が少しあるので、ツタで編んだ籠の中に粘土質の土を塊で入れていく。
その間にも、周りの確認を怠らないように注意を。
「―――ふぅ」
多くない量の粘土を回収し、改めて周りの確認。
木々の葉の揺れも風が強くないので、大きく動いていない。
目に入る場所には藪の揺れも感じないので、動きの大きな動物はいなさそう?
音や鳴き声なども聞こえない。
そもそもウサギにしてもほかの動物にしても何もない状況やただ一匹で鳴き声あげることは少ないとは思う。
一体だと状況の変化(対外的に危険を感じるときや、獲物に襲い掛かる時など?)がないと声を上げることもないだろうし。
群れや家族などで過ごしているとある程度の鳴き声で意思表示をすることがあるだろうから、この近辺に群れで生息しているってことはなさそう。
この辺りを棲み処としているタイプではないのかな?
そこだけはちょっと一安心。
見た目ラブリーなのに角で突き刺そうと突撃してくるでっかいウサギが、まさかこんなご近所さんにいるとは思いもしなかったので。
そして慎重に仮拠点に戻ってくる。
うん、やっぱり問題はなさそうに思えるのだが。。。
たまたまだったって事、、、かな?
棲み処は別にあって、たまたま自分が掘り掘りしていた時に誘われて出てきたって事なら、まだましか。
粘土が今回の量だとさすがに足りない。まだ何度かは掘りに行かなきゃいけないので、その時の様子を見ながら、別の場所に移動するかどうかも考えていこうか。
粘土こねて成型するところまではやっておこう。
乾かす工程も必要なので、そこまでは終わらせておきたい。
形としては煮炊きが出来そうな鍋?っぽいのと、水を溜めておけそうなツボっぽいの。
あと、そもそも海水を浄水する装置も作りたい。
石で鍋を作って、それで作る予定だったけど土器が作れるのなら、そっちの方が効率は良さそう。
同時に塩も採れて一石二鳥。
ヤシの葉の上に、粘土を置いて、こねこね。
水分はとりあえず海水で。
塩分が高いとうまく粘土状にならないとは思うけど、今はこれでやるしかない。
海水を混ぜて、こねこね。
草や葉の繊維を、さらに細かくちぎって。
土に混ぜ混ぜ、こねこね。
ゆるくなりそうなら、獲ってきた土を混ぜ込み、周りにある砂も混ぜ込み、さらに成型できるような固さに整えていく。
こねこねし続けて、程よい硬さで成形。
まずは土鍋を作成。
陶器とかなら、ホントはひも状にした粘土でくるくると形作っていくのがベストだとは思うけど、粘土の粘度も微妙な感じなので、板状に平たく伸ばした形から、深さをつけて浅めの鍋に成型。
取っ手を作るのは難しいので、取っ手の部分は板状のままにして、持ち運べるように。
とは言っても、しばらくは持ち運びせずに海水を焚き続けて、水と塩を供給できるようにしておきたい。
となると、結局竈がもう一つ必要になるのか。粘土がたくさん採れるなら、土レンガを作ってそれで釜土を作ろうか。
出来上がった土器は、野焼きになるかな。
まあ、乾いてからの話になるだろうけど。
スキルのおかげで多少は乾燥も早くなりそうな気もするので、それほど待たずに済むかな?
いきなり無人島?のんびり生活 くぉんくぉんFox @kuonkuonFox
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