第11話
「は、話せばわか、ぬぉあーーっ!?」
ここ数年で一番と言っていいほどの声をあげながら、突然襲い掛かってきた角の生えたウサギの突進を避けまくっております。
突進してきては避け。
突進してきては避けを続け、少しずつ海とは反対方向に。
流石に拠点側には引き連れていくのは抵抗があった。
取り払った藪の奥側。
始めてきた方角だが、少し平たんな地形になっていて、少しずつ太い木が目立つようにってきている。
「きゅーっ!」
「ぬぉっー」
くそっ、もふもふで可愛いくせに、やたらと殺意が高いうさぎさんめ。
きゅーとか、もきゅとか言って可愛さアピってたくせに。
突進してきたウサギをひらりと避け、、、れは出来なかったけど、かろうじて避けて。
すれ違いざまに石の手斧を使って反撃。
「んぎゅーっ!!!」
流石にかわいくない野太い悲鳴が。
あれだけ殺意高く襲われ続けるとさすがに反撃しないわけにもいかず。。。
「きゅ、きゅうぅ………」
流石に一撃必殺と言うわけにもいかなかったが、明らかに動きが鈍くなっている。
最後の力を振り絞ってなのか、再び突進。
「ぎゅ、ぎゅーーっ!!!」
さっきとは違って少し余裕をもって避け、とどめの一撃を入れる。
視線を飛ばし、聞き耳を立てながら周りを一応確認しておく。
コレが一羽だけとは限らないし、ここに転移?させられてから最高に叫び散らかしていたので、下手をしたらほかの動物も集めてしまっている可能性もある。
海岸沿いでのんびりまったり平和に過ごしていたところだが、実は砂浜も危険だったのでは?
来なかったのは、やはり毎日火を焚いていたおかげなのでは?
くるりと見回し物音を確認するが、ほかには居なさそうな気が。
気配は認識できていないが、ステの高さで、視力と耳はよくなっている感じがする。
「とりあえずは、大丈夫、かな―――?」
絶対とは言えないが、ひとまずは。
角ウサギを抱え上げて、仮拠点の方向へ歩いていく。なかなかの体長と重さのはずだが苦も無く持ち運び出来ているので、こういうところで改めてステアップの恩恵を感じる。
それにしてもやばかった。
ちょっと地球では見ないレベルの大きさのウサギ。
下手したらセントバーナード級?はあるぐらい。いや、セントバーナード見たことあるわけじゃないので、イメージなんだけどね。
おまけにでっかい角が生えてるし。
あの角で突進受けたんだろうか?
よく死んでなかったよなぁ。
着てるYシャツには相変わらず傷一つ、汚れ一つもついていない。
やたら強度の高い謎Yシャツのおかげで助かったのか、それともステが高くなってるせいか?
単純に体感での話で、そもそもステが数値で見えないからどうなのかはわからないけど。
「ともかく、助かったことと、いただく命に感謝を」
―――ぱんぱんぺこり
危なかった状況はともかくとして、食料と素材が手に入ったのはありがたい。
肉、骨、角、毛皮。
内臓系は魚の罠籠用の餌に使えるかな。
寄生虫の関係で、ちょっと食べるのにためらいあるけど、心臓はちょっと食べてみたい。焼肉行ったときハツがあればほぼほぼ頼むし。
あ、タンもちょっと食べてみたい。このレベルで大きいと食べられる量が取れる気もする。
普通のウサギだと圧倒的に大きさが足りないので無理だしね。
さて、そのためにも、食べられるように処理をしないと。
血抜きが先?それとも川で身を冷やすほうがいいのかな。
たしか首ちょんぱか首筋を切って、足から吊るして血抜きをするのが中世ファンタジーな物語でよく見るやつ。
この辺りは獲物の大きさや水辺の近さにもよるのかな?
実際に川辺に沈める血抜き方法は、大きすぎると吊るせないし、首筋、手首足首の血管を切って水につけておくとそこから自然に血抜きが出来るってヤツらしい。
あと、水で身を冷やすのは寄生虫なんかがいるから体を冷やさなきゃいけないとか?
身が熱を持ってるので、腐るのがダメだからだとかいう話も?
毛皮にいるノミだとかダニだとかの虫が、死んだことによって身の方に入るのを防ぐためだとかいう話も?
どれが正解かはわからないけど、目の前に海があるので、できるだけ水の動きが強い場所。魚の罠籠を仕掛けている岩場の、少し離れた場所に。
波の強めな場所に沈めておいてみよう。
足と胴周りにツタで作ったロープを岩場に括り付けて、ドボン。
明日辺りには解体できるかな?
………と言うか、解体ってどうやればいいんだ?
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