第3話 お試しで

「月嬢がすまなかったのう」




蘭丸は眉を下げながらオリオンの頭に手を乗せる。




「俺も悪かったけどよ、お前のいた場所でも間違われたんじゃねぇの?」




月嬢はソファに座りオリオンを見上げる。


オリオンは小さく笑って頭を横に振った。




「私の故郷には誰も居ませんでした。


ただ、漢方を受け取りに来た方はどう思っていたか…


どうでしょうね」




「お前、ずっと1人だったのか?」




月嬢は目を見開きオリオンを見つめる。


それに対し笑顔のままオリオンは頷いた。




「なので…とても嬉しい気持ちで沢山ですよ。


蜜、月嬢、蘭丸に出逢えて…、一緒に暮らせるだなんて」






オリオンは自分の手を合わせて嬉しそうに笑った。




蜜の方を見ると、彼は本を読んでいた。オリオンの視線に気付くと少し顔を上げた。




「…何だ」




「いえ、その本…懐かしいなと思いまして。


薬剤の本ですよね」




「…。…そうか、お前は漢方を作っていると言っていたな」




「はい。」




「…なら、俺の診療所で働くか」






月嬢と蘭丸は珍しそうに顔を見合わせる。


人にあまり興味の無い蜜がこんな提案をするとは思わなかったからだ。




「本当ですか、蜜。


是非よろしくお願いします」




オリオンは蜜の傍に行くと、その大きな手を両手で握った。




ーーやっぱり、大きな手…だけど優しい手…






オリオンは蜜の手を見つめて頬を緩ませていた。




蜜は、そんなオリオンの行動を否める事もなく、ただ見ていた。




「おい、オリオン。


…蜜はやめておけよ」




月嬢は本人が居るにも関わらずオリオンへ忠告する。




オリオンはキョトンとし、小首を傾げた。




「…?


何故ですか、月嬢」




「冷たいからだ」




「…ふふ、冷たかったら私をここまで案内したり一緒に働こうと言いませんよ」






オリオンは楽しそうに言う。




「そうか、では試してみてはどうじゃ?」




蘭丸が言うと、月嬢は驚いたようで蘭丸を見る。




蜜はまじまじと見てくるオリオンに、フ…と笑い、その手で髪を撫でる。




「…試してみるか?」




「それは…お付き合いを…と言うことですよね…?」






ーー蜜と私が…?男同士で?


けど…蜜から……離れたくない…。






オリオンは蜜の袖を少し握り、頬を染めながら俯いた。




「よろしく、お願いします…、蜜」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オリオンくんのルームメイト 小桜ひな @shirono_himari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ