第2話 ルームメイト

蜜とオリオン、二人は都会の街を歩いていた。




オリオンは蜜の後ろ姿を見つめる。


柔らかな桃色の髪。


自分よりも背の高い彼。


視線を下にすれば男らしい手が目に入る。




大きな手…


オリオンは憧れのようなものを感じ頬を染めた。




自分の手を見ると女性の様に細く小さい。


あの手に触れてみたいな…そう思ってしまった。






コツコツと靴音を鳴らして前を歩く蜜。


何か会話の話題を探さなくてはとオリオンが思っていると…






「着いたぞ」




蜜のクールな声が上から降ってきた。


顔を上げると白く大きな家が目の前にあった。






「…綺麗なお家ですね」




微笑んでいるオリオンを一瞥する蜜。






「他の者も紹介しよう」




「はいっ、よろしくお願いします」




満面の笑みでオリオンは答えた。






家の中も綺麗だった。雑貨も家具も。




「来たのか」




蘭丸がキッチンから現れる。


その後ろから月嬢もやって来た。






「オリオンです。


これからルームメイトとして、よろしくお願いします」




頬を染めて緊張したように言うオリオンに、蘭丸は頭に手を置いた。




「そう緊張しなくて良いぞ。


儂は蘭丸。この家で料理を作る担当をしておる。


仕事は作家じゃ」




蘭丸はオリオンの頭を撫でながら笑った。






月嬢は黙ったままオリオンを見ていた。




「彼は月嬢。家具等は彼に相談すると良い。


デザイナーだからのう」






「お二人共凄いですね」




オリオンは感心しながら言い、ソファに腰掛けている蜜へと視線をやる。






「あぁ、彼は蜜。


医者をしておる、オリオンは…?」




「私は故郷でずっと漢方を作っていました。


都内なら珍しい薬草があると聞き、ルームシェアを提案されて…という経緯です。」




「なるほどなるほど、話はわかった。」






黙っていた月嬢が口を開いた。




「…て、ちょっと待て」




その場に居た者が皆、月嬢を見る。






「お前!女じゃねぇかっっ!!」




オリオンは衝撃を受け少し震えた声で




「おん…?!


私は男です…」




そう言うしか無かったようだ。






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