画策する王家

 マルクベニア大陸北部にあるライラン王国の王都ルベリア。その王宮の一室でガシャンという音が鳴り響いた。


「バカモノ!あれほどアリシアから目を離すなと言っただろ!」


 国王のルヴァンドラは息子のアーノルドに激昂していた。アーノルドは「申し訳ありません」と言う。


「ですがあの日、アリシアは友人と遊ぶ予定をすでに入れており、私ができることなど近衛騎士に動向を探らせることだけでした」

「それで隙を突かれて連れ去られたと?そんな馬鹿げた話が許されると思っとるのか!」


 ルヴァンドラとしては光魔法が使えるアリシアを自分たちの手元にしっかりと置いておこうと思っていた。しかし今回の誘拐騒動が起こってしまい内心焦っているのである。


「いいか?何がなんでもアリシアから目を離すな!」

「ですが父上。彼女も一端いっぱしの女性。最近は衛兵の少女と友誼を交わしており、私の入り込む隙などございません。あまりアリシアに近づき過ぎれば、私の婚約者であるターナとの関係に亀裂が入ります」


 アーノルドとしては正直アリシアから手を引きたいと思っていた。自分には婚約者のターナ・シェパードがいる。彼女を放っておいて別の女性のそばにいるのど、抵抗があった。しかしルヴァンドラはそんなことなど瑣末さまつな問題とでも思っているようだった。


「ターナは将来王妃になる女だ。この程度のことで亀裂が入るなどそれは自ら王妃に相応しくないと認めているようなものだろう。放っておいて構わん。だが光の使い手は別だ。こちらが丁寧に相手をしなければ国外に逃げられるのだぞ!何がなんでも保護せねばならんのだ!アリシアが最近衛兵との関係を優先すると言うのならおまえがその衛兵とも交友すれば済む話だ!いいか?何がなんでも目を離すでないぞ?」


 国王はそう言ってアーノルドを部屋から追い出した。追い出されたアーノルドは小さく嘆息する。


「簡単に言ってくれる…」


 アーノルドは心労を抱えながらエルゼコビナ魔法学園へと帰還した。

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学園の衛兵よ!賃金を抱け! 岳々 @lonwen

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