今日もオルファンドは平和です。

 遺跡の外へ出ると、そこには誰もいなかった。どうやらゴブリンたちは撤退したらしい。ひとまず安心とルドルフは息を吐いた。


 とりあえずまずはオルファンドに帰ろうと2人は歩き出した。


 その途中、守備師団の隊員たちと合流する。どうやら遺跡の周りが不自然に燃えているのを見て不審に思い、調査に来たらしかった。


「2人とも大丈夫か?」


 ヨゼフ小隊の隊長であるヨゼフは遺跡から歩いてきたのがマリナとルドルフであることを認めると、そう尋ねた。マリナの腕にアリシアが寝息を立てて眠っているのを見ると「その子は?」と尋ねる。


「件の行方不明になっていたアリシアだ」


 ヨゼフの問いにルドルフが答えた。


「見つかったのか?」

「ああ。遺跡の中にいたよ。連れ去ったゴブリンどもはマリナがフルボッコにしたんだが、逃げちまったみたいだな」

「そうか…。まあ、みんな無事ならそれでいい。帰るぞ」


 ヨゼフに率いられて、マリナとルドルフは彼の後を追った。


 その後、オルファンドな戻ってからマリナとルドルフは早速事情聴取を受けた。


 なぜアリシアが遺跡にいたと分かったのか?


 どうやって誰にも気づかれずにオルファンドを抜け出せたのか?


 ゴブリンたちの目的は何か?


 などなど…。


 しかしマリナの返答は「私、天才ですから!」だけであり、ルドルフは「何が何やら理解が追いつかないんだ」とのボヤキだったので、これ以上聞いても埒があかないと思われ、事情聴取は早々に切り上げられたのだった。


 その後、目が覚めたアリシアも事情聴取を受けたが、彼女も途中から意識を失ってしまったため、何が何やら理解が追いついてないらしい。


 アリシアは事情聴取の途中、自分を助けたのがマリナだと聞いて、彼女が無事であったこと、彼女がわざわざ助けに来てくれたことに心底喜んでいた。


 念の為に医務室でリュシィから診察を受けるアリシア。そこへマリナがやってきた。


「アリシアさん、大丈夫?」

「マリナさん!はい、すこぶる元気です」


 アリシアは力こぶを見せて元気をアピールした。その様子を見てマリナはホッと息を吐いた。


「ごめんね。咄嗟のことで対処できなかったんです」

「仕方ありませんよ。まさか街中でゴブリンが現れるとは思いませんし、マリナさんはあくまで一緒に買い物しただけですから」


 怖い目にあっただろうに気を遣ってくれたようで、マリナは「いい子だなあ」と涙ぐんだ。


「これでお給金は吹っ飛ばない」

「コラ」


 マリナから漏れた本音にリュシィがツッコむ。いったいなんの話なのか分からない純粋なアリシアはキョトンと首を傾げるだけだった。


 その後、色々と調査は進められるも、結局ゴブリンが何のためにアリシアを連れ去ったのか、どうして遺跡にいたのかなどは分からなかった。


 ゴブリンたちの行方を近衛騎士たちが追いかけるも、いったいどこへ行ったのか皆目見当がつかず、途中で調査は打ち切りになった。


 守備師団の師団長はゴブリンの侵入を許してしまったことで降格。辺境の地へと左遷させられたらしい。マリナについては非番だったこともあってお咎めは無しだった。


「1.7倍は守られた!」


 マリナは心底喜んだようだ。


 今日もオルファンドは平和です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る