第16話 戻って来た体

Side アレン(アレン)

「はぁ……はぁ……何とか間に合った。けっこう距離あったから焦った……」

 カイの意識が消えるまでずっと頭を打ち続けた結果、彼は気絶することになり、結果その瞬間僕の肉体には誰も入っていない『空っぽの肉体』の状態になった。

 そして必然的に僕の意識ははっきりと残っていたので、結果的には自分の肉体に帰ってこれたことに少なからず喜びを感じる喜びを噛みしめながら、僕はそのまま目的の教室に急いだ。


「えーでは……次は~」

「す、すみません! 遅れました!」

 教室のドアを勢いよく開けながら僕は先生に叫ぶように伝えた。

「びっくりした……遅刻だぞ。アレン。にしても珍しいなお前が遅刻するなんて」

「えっと……はい。すみません」

 本当は自分の肉体に戻るのに時間が掛かったのと、カイが僕の事を思って頭を打ち続けてくれたその傷を癒すのに時間が掛かったのが本当の理由だけど、それは言えたことじゃないからひとまず適当にはぐらかすことにしてミナとアレンの元へ歩み寄る。


 先生が授業の内容を説明しているのを横目に僕は二人に事情を説明することにした。

「遅かったな。カイ。どこかで道草食ってたのか?」

「……ライン、ミナ。僕だよ。アレン・ベルドットだよ……」

「え……マジでお前なのか?」

「良かった……帰ってきてくれて……アレン」

 ラインは目を大きく見開くように驚き、ミナは嬉しさがこみ上げてきたのか、涙ぐんでそう言った。

「ラインもミナも…心配かけちゃったね。ごめん……」

「ううん。そんなことない。私、きっとが帰って来るって信じたから!」

 そう言いうと彼女の瞼から数的に雫が零れ落ちた。

「ミナ、ライン。彼と入れ替わってから数日間カイを支えてくれてありがとう……」

「へへ。良いってことよ。」

「けど、それとは別に今まで全く入れ替われなったって、あいつは言ってたけどどうやっての?」

「実は……」


「意識が消えるまで頭を打ち続けた!? それで傷とかは……?」

「それは平気だよ。ここに来る前に癒しておいたから」

「そっか……なら安心ね」

「ってことはだ。カイの意識っていうか意識は、もう……二度と」

「それは分からなけど……多分、もう……」

(勝手に殺してんじゃねーよ!)

「って、カイ? 無事だったんだ……」

(いや、今は体が無いはずなのに頭が痛い……で今どういう状況だ?)

「えっと……ちょっとだけ遅刻したけど授業は受けられてるよ」

(そうか……それは良かった。なら俺はこれから今後、お前には話しかけねえよ)

「え……どうして急に……」

(どうしても何も最初からこの肉体にはお前しかいないだろ? だったら俺はいない方が自然だろ?)

「そうだけど……」

 その言葉を最後に彼の声は途絶えた。


「アレン。さっきの独り言って……」

「うん。実はカイ。しっかり無事だったよ……それで俺はいない方が良いって言ってすぐに黙り込んじゃった……」

「そうか……」

「けどカイの言ってたことも最もだわ。何も起こらなかった状態に戻っただけのことよ」

「そうだけど……」

 ミナは僕やラインと違って状況を現実的に捉える。そのおかげでいつだって僕たちは冷静でいられた。だけど出来ることならもう少しいろんなお話したかったな……

「次、アレン・ベルドット。前へ!」

「は、はい!」

 しかしそんな感傷に浸っている余裕もなく、先生は僕を呼び出し、魔法を使うよう指示する。

 ひとまず今だけはこの授業に集中……!

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