第15話 思い切った行動

 ひとまず魔法については比較的早く会得、学ぶことが出来たので残りの時間をアレンと話し合うためにラインには先に行ってもらった。

「さて……本当にどうしたものかな」

 ラインが付き合ってくれたおかげでアレンだけじゃなく、俺自身も自分の魔法を会得することが出来た。

 生憎と根本的問題であるこの後の魔法実技をどうやって対処していくか、これ自体は今も具体案は出せていない。

「……アレン。自分の体だろ? そろそろ体に戻れたりしないのか?」

(出来るのならとっくにそうしたいんだけど……ごめん。カイにとっては迷惑かけてばっかりだよね……)

「そんなに謝られても調子狂うっていうか……あ、そういえば一つ方法を閃いたんだよ! 聞いてくれ!」

(方法? いったい何?)

「考えることは至って単純さ、そもそも俺がこの世界に来た時の事を思い出しくれ」

(カイがこの世界に来た時の事……ごめん。多分その時僕ちゃんと目覚めてなかったというか、何も覚えてないと思う……)

「あ、そういやそっか」

 実際アレンの言う通り、確かこうしてはっきりと話せる状態になっていたのは医務室で一人きりの時だから、それより前の事は覚えてなくて当然か。


「え~っとまぁそれで話を戻すんだけどな。精神を入れ替えることが出来るのかどうはラインから聞いた友人の話で確証を得たからそこは良いとしよう」

(うんうん)

「それでふと思い出したんだよ。困ったり悩んだら初心に帰れってな」

(初心に帰る? 言ってる意味があんまり分からないよ……)

「あぁ、まぁ気にするな。それで俺がアレンの肉体として起きた時に周りにいたラインやミナからこう言われたんだよ。『気絶したように寝てたって』」

(気絶したように寝てた……あ、まさかとは思うけどさ、カイ。そのまさかじゃないよね?)

「…………」

 こういう時に察しが良いのは助かるようそうじゃないような……そんな良く分からない心情とアレンを横目において俺は目の前にそびえたつ木を見つめる。

「大丈夫。多分これが一番可能性は高いと俺は踏んでる」

(だからって……普通それを思いついて本当に行動に移す? 医務室での行動もそうだし、カイってたまに妙に行動力があるというか……)

「そりゃどうも。けど手っ取り早く問題解決が出来るのなら、これが最善だと思っただけさ」

 日本にいた頃もテスト勉強がめんどくさいあまりにほぼノー勉で臨もうとしが、多少はやっておこうと思い、前日にでも取り組んだら翌日のテストの結果は高得点。

 それ以来省エネ、時短が自分の中でのポリシー、軸となった。

 そして今回の直面しているこの状況における解決法として思いついたのがかつて、医務室で俺が自分の頭を打ち付けるというやつだ。

 前回はアレンがパニくっていたから落ち着かせるためにやったが今回は気絶するまでやってみることにする。


「それじゃあ本当に行くぞ? 多分これで入れ替わるはず……」

 そう言ってから黙々と自分の頭を勢い良く打ち付けていく。そうすることで聞こえてくるのは木に頭を打ち付ける鈍い音とざわめく葉音。

 それを見ているアレンは見て痛々しいと感じてか、ずっと黙り込んでいる。

それからもずっと頭を打ち付け続けてようやく意識が朦朧とし始めたところで後は体を休ませるようにゆっくり目を閉じ、入れ替わってくれる可能性に賭けて身を委ねた。



Sideアレン(アレン⇔カイ)

「ん……あれ? う、動ける……動かせる! 僕の体だ!」

 まさか本当に彼が言ったとおりになるとは……半分は賭けって言ってたけど、まさか本当にそうななんて……

 意外とこういう時ほど思い切った行動が活路を開いたりするのかな……それならそれでこれからも彼には頼っていきたいな……

(んん……)

「あ、カイ……唸ってる? それもそっか、さっきまで僕の体だったとはいえ、自分で頭を打ち付けていたんだから辛かったよね……」

 ひとまずここはカイの事を労うのも含めて、そっとしておくことにして僕は次の授業の教室へと急いで足を運んだ。


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