第14話 危機再び

「とりあえず魔法は出せるようになったようだな。安心したよ」

「あぁ……そうだな」

 とは言ってもまだ安心は出来ない。

 それどころか新たな問題が発生したことに対してもう少し焦った方が良いんだろうか……

「どうした? カイ」

「いや……魔法が出せるようになったのは良いとして、それでもアレンが使ってた氷魔法を使えないとまず疑われるだろ?」

「あ……それもそうか。カイが魔法を会得したことが嬉しいことに夢中ですっかり忘れれた……」

「うーん……どうしたもなかな……」

 何とかして誤魔化したいものだが、方法といえるほどの手段が俺の頭の中には数えるほどしかない。

 一番良いのがいい加減アレン本人と入れ替われるようになることだけど、未だにそれが出来そうにも思えない。

 となると……次に考えうるのは自分の番が回ってきそうなタイミングで体調が悪いと言ってその時の実技をサボ……回避することだ。

 しかし、この方法はする分には可能に見えて一点だけ不安点がある。

 それは……再テストの様な形で俺だけがやる事になるかもしれないという事だ。

 というか普通に考えればその可能性だって普通にありうることだ。

 実際、あっちの世界日本にいた時だって小4の頃に漢字のテストがめんどくさいと感じるあまりサボっていたら翌日の放課後、普通に一人で残されてしっかりテストを受けさせられたことがあった。

「とりあえず歩きながら話すか……移動するんだし」

「それもそうだな……」

 なんだかんだで次の授業まではそこまで時間はないので、手元の弁当箱を片手に一度自分たちの教室に戻ることにした。



「というかさ」

「ん? あれからアレンとはどうなんだ? 仲良くやれてるのか?」

「ん? まぁぼちぼちといった感じだな……そもそもお互いこれといって話したりすることもない以上、基本的に話したりはしないよ」

「そうか……正直、アレンにカイのような友達が出来たと思って普通に喜んでいたけど……あんまり素直に喜べる状況とは言えないのか……」

 そう言ってラインは分かりやすく肩を落とす。それぐらい普段からアレンの事を気にかけていたんだな……

「そんなに心配するなんてよっぽどアレンのことが心配なんだな」

「まぁな。あいつとはなんだかんだで結構小さいガキの頃からよく一緒に遊んでたからかな……気がかりなんだよ」

 幼なじみとはいえ、ここまで気に掛けるのは少しだけ気になり、ちょっとした好奇心で俺はある質問をラインに尋ねてみた。

「そんなにラインやミナがアレンのことになると心配になるのは何か深い理由があるのか?」

「それほどの理由ってわけじゃないけどあいつってさ割と気弱で、ビビりで騙されやすいんだよ」

「騙されやすい……? 以前そういう事が起きたとか?」

「ああ。昔そういう目に遭ってさ、それ以来俺とミナの二人でアレンの奴を見守ろと決めたんだ」

「そういう事だったのか……」

 だからこそこの三人は固い絆、友情で結ばれているってことんなんだな……なんっだが自分がこれ以上ないぐらいに部外者感が否めないな……

 まぁそもそも俺はこの三人とは今まで無関係でしかなかったんだし、別に寂しさとかそういうのを感じる必要も無いけどな……

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