最終話 10回以上はイっちゃった
あれから、結構な騒ぎが起こった。
何といっても、急に地中からオチ◯チンの形をした塔が生えてきたのである。それはみんな、大わらわになるしかなかった。ネットなどでも取り上げられて、安全の調査のために街自体が調査の対象になったりもした。お陰で、夏休みが伸びたりもしたけど……。
「エロ犬、ネットでうちの街の名前が、陰茎勃起タウンになりそうなんだけど、どうにかならない?」
「陰茎勃起タウン、大変名誉な名前パコね? これ以上、格好いい名前にはできないから諦めるパコ」
「死んで?」
凄まじい風評被害を、僕たちの街に残してしまっていた。ネットの一部の過激な人なんかは、”この街に住んでる男性の性欲が強すぎたからこんなモノが生えてきたんだ。なので、この街の男性は全員が男性器を切断して今すぐTSしろ!”なんて意見も出ているらしい。強かったのは異世界人の性欲なんです、信じてください……。
「大丈夫、大体はコラ画像扱いされてるから」
「それはそうなんだけどね」
鈴が言う通り、大体の人はあのオチ◯チンタワーのことを、昨今流行りのディープフェイク、ディープフェイクオチ◯チンだって思ってくれている。オチ◯チンを真に受けているのは、ほんの少しの陰謀論者だけだったのがせめてもの救いだった。そのまま、永遠に気が付かないで居て欲しい。
「それで、エロ犬」
「何パコか、こころ」
「……そろそろ、帰るんだよね」
「そうパコね」
あれから一週間、エロ犬や異世界おじさん達は路頭に迷っていた。なんでも、あの塔に大規模な異世界転移するための魔力が溜め込んであったらしい。それがなくなった今、おじさんたちは性欲が溜まりきるまで帰れないホームレスおじさんと化していた。夜には、野良猫とご飯の奪い合いをしていたとかなんとか。最悪だよ。
でも、それももう終わる。おじさんたちはゴミの日に捨ててあったエロ本を鹵獲し、オカズの獲得に成功したらしいから。これでもう、夜中に露出徘徊するおじさんと出くわす確率が大幅に低下する。それだけで、もう何かに許された気分になれた。
……あと、それと一緒にエロ犬も帰るんだって。
「二度と戻ってこなくていいから」
「こっちの世界で、何か間違いが起こらない限りはそうパコね」
「起こさないで……」
「人間、我慢を重ねるごとに勃起はしやすくなるものパコよ」
最後の最後まで、カスみたいな返事をしてくれるこいつは、やっぱり畜生だって認識できた。……畜生だったけど、一応僕達のために頑張ってくれてたよね。本当に色々と最悪だったけど。
「それよりもこころ……やっぱり、レズセは見せてもらえないパコか?」
「見せるわけないし、早く消え失せて」
……そう、最後の最後までこいつは最悪すぎた。あれから一週間経つのに、僕はまだ女の子のまま。その理由は、鈴と何となくそんな雰囲気になった時にだけ、こいつがビデオカメラを構えながら何処からともなく現れるからだ。
曰く、こころは娘同様だから成長の記録を取らなきゃパコ、だそうだ。バカかな? 僕は元々男だし、なんで初めてのエッチをハメ撮りされなきゃいけないのか。許されざる撮影過ぎるので、結局はこいつがいる間はそういうことができなかった。
「残念パコよ……折角、色々と指導出来たパコに」
「うるさい、さっさと帰れ!」
「仕方ないパコね。鈴とちゃんとまぐわうパコよ?」
「言い方!」
「セッ◯スの方が良かったパコか?」
「品性っ!!」
おせっせが良かったパコかね? なんて言ってるこいつは、やっぱり言葉の通じる生き物じゃなかったのかもしれない。そして、そんなこいつにお別れを言いに来たのは、僕だけじゃなく鈴もで。
「パコリイヌ、今までありがとう」
「鈴、こころはワガママお姫様パコから、苦労はすると思うパコが頑張るパコ」
「うん」
違うけど? 鈴、何で僕が女の子なこと前提の話を受け入れてるのかな? エロ犬に騙されないで、心を強く持って! あと、ワガママでもないよ。
「イきたくないって言ってても、必ずイかせるパコよ?」
「うん」
頷かないで、鈴。……いや、ふざけたことに必要なことなんだけどさ。
「鈴はしっかり者でちゃんとエッチだから、こころのことを任せられるパコ」
「安心して、お義父さん」
「お義父さんな訳ないだろ、こんなのが!!」
鈴も、ちょっと錯乱してるのが治りきらなかった。異世界と関わりすぎた後遺症だと思う、本当に酷い話だ。でも、鈴は一生懸命に僕を支え続けてくれたから、そうなっちゃった。多分、いつかは治るけど、それまではダメだよって注意し続けることが必要なのかもしれない。
「おねーさーん!」
そんなおバカな会話をし続けてたら、声を掛けられた。──幼い男の子の声だ。
「光くん!」
「お待たせしました、お姉さん!」
振り返れば、パーカーを身に纏った、男の子に戻れた光くんの姿がそこにはあった。その姿を見る度に、ホッとできる。ちゃんと、戻してあげられたんだって。
尤も、戻し方は、普通じゃなかったんだけど。
『光くんは、どうすれば良いかな?』
『こころ、あの子とエッチしちゃダメ』
『鈴がいるのに、そんなこと出来るわけないでしょ。でも、何とかして男の子に戻してあげないと……』
『それなら試してみたいこと、ある』
『試したいこと?』
『──こころの純愛ラブラブASMRの収録、それであの子を男の子に戻す』
まさか、悪ふざけみたいな鈴の作戦が当たって、大成功するなんて思わなかった。ふざけた収録を終えて、そのデータを渡した翌日に光くんは元に戻ってたから。光くんに、それでされちゃったってことだよね……。
その事実には、ちょっと反応に困った。でも、それより戻れてよかったって安堵の方が大きかったから。永遠にそのままでいてね、光くん。
「光くん、ちゃんとお話、できた?」
「はい!」
嬉しそうに頷いた光くんに、ちょっと安堵する。何にも異常がないし、されてないってことを確認できたから。何のことかっていうと、それは……あのおじさんのことだった。
「ククッ、待たせたな」
微妙に悪党じみた笑い声で現れたのは、例のダークネスおじさん、マスターベーション。……いつ聞いても、最悪すぎる名前だ。
「ベーション、心残りはないパコか?」
「貴様を誅せなかったことくらいだな」
「パコにチューしようとしてたパコね、ナイスジョークパコ!」
エロ犬のカスみたいな受け答えに、おじさんは無の表情を浮かべていた。今すぐこいつを処せたら、きっと人生鮮やかになるんだろうなって目をしてる。……気持ちは分かるよ、おじさん。
「おじさん、向こうで元気にしててください。……もう悪さ、しちゃダメですよ?」
「ククッ、聞き飽きたわ、その説教も」
でも、光くんと話している時は、何だか嬉しそうにしている。それも、異世界人にしては珍しく、エッチな目を光くんに向けていない。どっちかというと、父性があるように見える。
……やったことは許せないけど、この人にも良いことがあればって思えた。だって、人間性はエロ犬よりかは幾分かマシな気がしたから。
「ベーション、名残惜しいパコがそろそろ時間パコ」
「分かっておるわ」
エロ犬の呼び掛けに応じて、こいつの周りにたくさんのおじさんが勃起したまま群がり始める。その光景は最低の一語で言い表せる、カスみたいな景色だった。その中でエロ犬は一言、僕たちに向けて発した。
「また一週間後くらいに様子を見にくるから、仲睦まじく睦み合うパコよ?」
「二度とっ、戻って来るなっ!!」
そうして、多数のおじさんwithエロ犬は光に包まれて。……気が付けば、その場からいなくなっていた。まるで、全部夢だったかのように。
「……帰っちゃいましたね」
「帰ることができたんだよ」
少し寂しそうに呟く光くんに、僕はちょっと明るい声を心掛けて出してみた。色々と問題しかなかったけど、それでも惜しんであげてる光くんに、あいつらは最悪おじさんだよと伝えるのは気が引けたから。
「そっか、お家に帰れないと……心配させちゃいますからね」
「うん」
光くんも、女の子になってる間は家に帰ってなかったらしい。お陰で、帰った時はすごく怒られて、それでも抱きしめられて、良かったって言ってもらえたようで。そんな経験が、光くんを納得させてくれたみたいだ。
「じゃあ、僕たちも帰るね。光くん」
「……次会えた時は、おにーさんって呼ばないとダメですか?」
「少なくとも、おねーさんじゃなくなってるかな」
「そっか……」
事実だけを口にすると、光くんはさっきまでよりも寂しげな顔をして。
「さようなら、お姉さん。──大好きでした」
切なさの籠った、胸が痛くなる言葉を残して。そのまま踵を翻した光くんは、この場から駆けて行ってしまった。
……さようなら、光くん。
もしまた会えた時、仲良くしてくれるなら嬉しいよ。
「……こころ、帰ろ」
「うん。……あのさ、鈴」
「なに?」
そっと差し出された手を握り、僕たちは帰路に着く。色々あった中で、まだちょっと片付いていない問題に取り組むために。
「僕たちさ……その、しちゃうん、だよね?」
「うん」
その中で、鈴は気負いもなく、僕の問いかけに頷いた。だからか、余計に意識をしちゃって、緊張で汗が出て、顔が熱くてソワソワし始めてしまった。これから、そういうことしちゃうんだって思って、ひどく落ち着かない気分になる。
「子供が産まれたら、名前は漱石にする?」
「産まれないし、そもそも中に入れないし出せないから!!」
僕はそんななのに、鈴は平気な顔をしてる。いや、よく見たら少し頬っぺたが赤くなってるけど、それでも平気って取り繕う余裕があった。……なんか、ズルい。
「鈴、僕ドキドキしてるよ」
「うん」
「なのに……鈴はいつも通り、だね」
会話が上手く続けられなくて、思ったことをそのまま口にしてしまった。口に出してから、イジワルなことを言ってるって自覚が生まれて、ごめんねって気持ちが湧いてくる。
そんな僕の質問に、鈴は静かに首を振って。
「……違うの?」
「うん、違う」
いつも通りの無表情で、鈴は僕の私見を否定した。けど、それ以上は何を言うでもなく無言のまま、気が付けば鈴の家まで辿り着いてしまっていた。
「えと、先にお風呂、入ろっか?」
取り敢えずそう提案したけど、鈴は何も聞こえなかったかのように、そのまま僕の手を引いていく。あれ、と思ったのも束の間。鈴の部屋まで連れてこられて、部屋に鍵を掛けられた辺りで、何かおかしいぞって気が付いた。
……要するに、手遅れになってから。
「鈴?」
「ごめん、こころ」
「な、何が、って、わぁ!?」
いきなり、鈴にベッドへと押し倒されて。動揺隠せないままに、色々とドギマギしながら鈴へと問い掛けようとして──鈴の顔が、エッチな女の子のものになってるってようやく気がつけた。
「い、きなり、すぎないかな!」
「……ずっと、我慢させられてた」
「え?」
「私、あの子とこころがお風呂に入ってから、こころを分からせたかった。分からせエッチしようって、ずっと思ってたの」
「なんで!?」
落ち着こうと、必死に時間稼ぎの質問を重ねても、出てくるのは余計にこっちの頭が混乱しそうな言葉ばっかり。完全に、僕の方も収集が付かなくなっていた。
「こころは私の大切な人で、私だけにしかエッチな姿を見せちゃダメだから」
「でも、だってあれは──」
「関係ない。……はっきり、言う。ずっとこころでムラムラしてた」
──頭が、白くなった。理解が追いつくよりも先に、鈴が僕に襲い掛かるのが先だったから。
「なのに、ずっとお預けされ続けた。私、こころとならハメ撮りエッチも出来そうだったのに!」
「そ、んなのっ、ダメに、きまってるでしょ!」
「ダメなのは、ずっと私を誘惑して、我慢させて、エッチしたいって気持ちをずっとずっと強くしたこころ」
「ちがっ、うよ!」
「こころ、もうダメ。受け入れて──ちゅっ」
「んーーーーっ!?」
問答無用で、鈴にキスをされちゃってた。……それも、口の中に、舌を入れる深いやつを。
頭、バカになる。
唇を塞がれて、エッチなキスされて、変な気持ちにさせられまくって。……僕、バカになっちゃうよ。
「こころ、覚悟して」
「ふぇ?」
「──こころが寝ちゃっても、エッチなことを続けるから」
「……すずのえっち」
「うん」
うんじゃないよって言葉も、鈴の唇にまた塞がれて。
──僕は、鈴にすごいことをされちゃった。
お昼から夜に掛けて、夜から朝に跨いで。グチャグチャって、グチュグチュって。今夜は寝かさないよどころの話じゃない、意識が飛んじゃっても、鈴はエッチなことを辞めなかった。
──そうして、僕は。
「おはよう……なのかな、鈴」
「うん、おはよう──おかえり、こころ」
お昼頃に僕たちは目を覚まして、鈴はそう言って祝福してくれた。
これが、今回の事件の顛末。
こんなバカそのものの、それなのに忘れ難い思い出。僕はこれからも、ずっとずっと忘れないまま過ごしてく。
「こころ」
──鈴の隣で、ずっと。
ところで時々、無くなったはずの子宮が疼く身体になっちゃったんだけど、どうすれば良いかな?
抜きゲーみたいな帝国から来たマスコットにTS魔法少女にされた僕はどうすりゃいいですか? ペンギンさん @penguin3
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