馴染みのお店は薬局
くさぶえ 舞子
馴染みのお店は薬局
私は、持病があって、四十分かけて大学病院に毎月わざわざ通っている。
特殊な薬も出るのでそこから近くの薬局を選んでかれこれ約八年のつきあいになる。その薬局がこの夏で店じまいすることになった。
八年……私の人生はその間に目まぐるしく変わった。転職、母の死、婚活、結婚、妊娠、出産、子育て……全てが重要な時期だったので、結構、病院にも薬局にもお世話になった。
馴染みの店になっているので、薬剤師さんたちとも顔馴染みだった。
少しプライベートなことも話すこともあった。
私が出産したのは新型ウイルスの真っ只中で、世の中の色々な人達がそれぞれが先の見えない中、大事な決断をしていた時期だと思う。
Aさん(薬剤師さん)もその一人だった。その時、私は難産だったので、約一ヶ月間大学病院で入院していた。その間にご結婚されたらしいことを後から聞いた。
Aさんは、バリバリのキャリアウーマンでありながらも繊細な心の機微にも気がつく物腰柔らかな人だった。年齢がわからないし、容易に聞いてはいけない雰囲気がまた、ミステリアスで、彼女の魅力を引き上げていた。気丈な所では、
「やっぱり、家族にならないと、いざっていうとき何にも出来ないことが今回嫌と言うほどわかったからね。長年同棲していたけど、結婚しました!」
と、突然の報告には驚いたこともあった。
一年後、私はご結婚された月にミッキーとミニーがラブラブしているカードを送ったりした。
懐かしい思い出になった。業務の方でも私が先生に聞き損ねていたことなどを薬の内容から名探偵ぶりを発揮して逆に聞かれたりすることも驚いた。
この夏が終わる頃にはその薬局も店じまい。
古い建物独特の天井が低くて薄暗い、冬はヒヤリとする便座が、トイレが失くなってしまう。
次の薬局デビューも上手くいくかな?ここまで親身になってくれるかな?
ちょっとした時の流れを感じる今日、この頃です。
馴染みのお店は薬局 くさぶえ 舞子 @naru3hakuji
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