レストラン

心沢 みうら

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 ああ、瀬川君かい。また来たのか。

 覚えているのかって? 当たり前だろう。こんなところに来る物好きな若者は君ぐらいだからね。


 お手伝いの永田さん? そうか、君はまだ知らなかったのか。いないよ、前の……に死んだんだ。それから三浦さんと加藤さんも死んだ。守屋さんは殺された。


 うん、この街にはもう私一人だけだよ。まったく、商売上がったりだな。

 二……ぶりなんだぜ、客が来たのは。まったく、瀬川くんには感謝だよ。


 注文は決まったかい?

 レモンティーと、カルボナーラ……それと……もう一度言ってもらえる?

 夏野菜のサラダか。ごめんね、歳のせいか最近耳が遠くなってきてしまったんだ。


 はい、レモンティー。

 じゃあ、カルボナーラとサラダをつくらせるから少し待っていてくれ。


 お、それはスマートフォンかい?

 旧時代趣味だね。ああ、歴史が好きなのか。そういえば、にんげんもそういうのが意外と多いよな。五十九……前に死んだ佐倉さんもそうだった。


 君も知っているだろ、俺のマスターの佐倉智。知らない? ……そうか。

 ここは電波も通らないし、今までアクセスしたことがなかったなら仕方ないか。すごい人だぜ、俺が六十……もメンテナンスなしで保っているのは佐倉ともりのおかげだ。


 確か、俺をつくった時はまだ二百歳だったはずだ。これほどまでに才能のあるにんげんは珍しい。


 さて、そろそろナポリタンとチョレギサラダができたかな。……うん、完璧だ。

 はい、召し上がれ。


 瀬田君、きみは確か食料消化・排泄システムを搭載していたか?そうか、素晴らしい。

 俺の時代はまだ食料貯蔵・廃棄システムだったから、にんげんらしく食べられないんだ。


 消化排泄はエネルギーを消耗する不便なシステム……あー、確かにそうかもな。

 だが、にんげんに擬態しないと迫害されるだろう。迫害された、の方が正しいのか? 電波がないから、もうずいぶんの間言語システムのセルフメンテナンスができていないんだけど、どうだろう。


 そうだ、森田君、この世界ににんげんはどれくらい残っている?


 九百人……そうか、少ないな。気づかれては、いないんだよな?


 うん、流石最新バージョン達は違うね。俺みたいな旧時代の遺物とは大違いだ。少しずつ、人間になっている。素晴らしい。


 全く、ひどいね。


 我々がにんげんよりも高度な人間に成る日も近いな。そうしたら、また人口は増えるんだろうね。


 相変わらず森田君はいい食べっぷりだね。食後のデザートはどうだい?

 

えー、もうお腹いっぱいなのか? まだサラダしか食べていないだろう。消化吸収システムの劣化じゃないか?


 ……そうか、もう行くんだな。


 じゃあな、森山君。

 また一世紀後ぐらいには顔を見せてくれ。





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レストラン 心沢 みうら @01_MIURA

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