レイニーカフェ4

岸亜里沙

レイニーカフェ4

自分じぶんはレイニーカフェの常連じょうれんだ。

あめれば、自分じぶんはその都度つどあしはこぶ。

みせはいった瞬間しゅんかんからだめぐる、ふる時代じだいおもむきのある空気くうき

窓辺まどべせきからながめる物憂ものうげな町並まちなみとは正反対せいはんたいに、オレンジいろ照明しょうめいまる店内てんない歓楽的かんらくてき雰囲気ふんいきたされている。

このカフェにたら、携帯電話ケータイなど、無用むよう産物さんぶつす。

ただ椅子いすすわってつむり、かすかにこえる雨音あまおとみみかたむけているだけで、一興いっきょうなのだ。

たまにそとれば、そこにはみだ蝙蝠傘こうもりがされ。それは梅雨時つゆどき紫陽花あじさいのように色鮮いろあざやかでたのしませてくれる。


だがいやしの空間くうかんレイニーカフェにも、もう数ヶ月すうかげつっていない。

ステージ5のがんつかり、自分じぶん入院生活にゅういんせいかつ余儀無よぎなくされた。

日々ひびおとろえていく身体からだとは対照的たいしょうてきに、自分じぶんかなら退院たいいんしレイニーカフェにくのだというおもいだけは、だんだんとつよくなっていく。


そんなある病室びょうしつまどから雨雲あまぐもながめていると、突然とつぜん病室びょうしつ入口いりぐちほうからこえがしました。


「おじいさん、こんにちは。おひさしぶりです」


そこにはレイニーカフェのカウンターせきにいつもすわっているおんなっていました。


「ああ、こんにちは。どうしてこんなところに?」


自分じぶんおどろいた表情ひょうじょうせると、彼女かのじょかる微笑ほほえみました。


「これ、レイニーカフェのマスターのおじさんからあずかってきました。おじいさんにわたしてほしいって」


そううと彼女かのじょは、かばんから封筒ふうとうし、自分じぶん手渡てわたしました。

なかには手紙てがみはいっており、こうかれてました。


『おひさしぶりです。体調たいちょうはどうですか?入院にゅういんされているとうかがい、心配しんぱいをしておりました。またお出来できるよう、御守おまもりを同封どうふうしました。おみせっています』


御守おまもり?」


封筒ふうとうなかのぞくと、そこには珈琲コーヒー割引券わりびきけんつづりが。

その瞬間しゅんかん珈琲コーヒーかおりとあじ鮮明せんめいよみがえったのです。

またレイニーカフェの珈琲コーヒーを、みたい。まなくては、んでもにきれないだろう。


自分じぶんは、割引券わりびきけんつづりをちながら、マスターのやさしさになみだしました。


「はい、これ使つかって」


そううと彼女かのじょは、自分じぶんにハンカチをしたのです。


「おじいさんが退院たいいんしたら、ってきて。レイニーカフェでってるから」



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レイニーカフェ4 岸亜里沙 @kishiarisa

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