第65話 幼女、惜しげもなく装備を破壊する
すぐに大天狗が、息を吹き返す。
「まさか、【半永久器官】!」
ウチにも搭載されている、第二の心臓のことをいう。魔力のリアクターとしても機能するが、半永久器官は予備心臓にもなるのか。
「そりゃあ、搭載されているわなあ」
そうとしか、感想がなかった。
「そんなことは、想定済みなんじゃ! おらああ!」
ウチは、バイオジャケットを相手に放り投げる。
どうしてウチが、【半永久器官】を縮小し、バイオジャケットという装備を作ったか。
決して、民間レベルにまでダウンサイズして、冒険者に活用してもらうためだけではない。
「こうするためじゃあ!」
ウチは、妖刀をグイッと引っ張った。
バイオジャケットと大天狗が、妖刀を介して密着する。
「死ね、アホンダラが! くらえ、【自爆】ッ!」
リアクターを暴走させたバイオジャケットが爆散して、大天狗を飲み込んだ。
「おおおおおおお!」
大天狗の半永久気管に誘爆し、全身を破壊する。
「ぬううう! 見事なり。だがこれで勝ったと思わぬことだ! ここを制覇できても、ドラゴンの住まう【竜の巣】エリアは誰も――」
「邪神ショット!」
ウチは大天狗の眉間にショットを撃ち込んで、とどめを刺す。
これで、残りの邪神ショットは一発だけとなった。バイオジャケットも、半永久気管も、最悪作り直しになる。
それでも、勝てたからいいか。
大天狗が倒されたことにより、すべてのイーストエルフも破壊された。
もっとも、まともに動いているイーストエルフは、数えるほどしかいなかったが。
[テネブライ:【高山エリア】をすべて制覇しました。高山エリアはこれより、アトキン・ネドログに譲渡されます]
はあ。長かった。
「やっと終わったかぁ」
フラフラになって、ウチは倒れ込む。
「アトキン。あなたは、とんでもない人ですね」
大天狗の死亡を確認して、クゥハが剣を収める。
「装備を捨ててまで、勝つなんて」
「あそこまでせんと、倒されへん相手やったし。バイオジャケットは、そもそも使い捨てが前提の装備やったからな」
強い相手だった。
もしクゥハたちがザコを引き受けてくれなかったら、かなり危なかったかも。
「でも、装備は作り直しなんよなあ……」
「そうでもないみたいですよ。アトキン。ほら」
なんと、なくなったはずの【半永久器官】が、三つも手に入った。しかも、最初に手に入れたときより大きく、高出力である。
これなら、バイオジャケットも強化できそうだ。
「それに、自律兵器も手に入りましたよ」
小型のイーストエルフが、ウチの側で飛び回っている。意思はないようだが、ウチについてきてくれるらしい。
【ファミリア】か。ということは、召喚獣扱いになるのだろう。
「カニエが動かすか、これを」
今のところ、カニエに戦闘を任せることは考えていなかった。ここでちょっとくらい戦えるように作り直したら、自衛くらいは可能になるかと。
『先生のお好きに、なさってください。私としては、研究に専念するだけでもありがたいので』
「さよか。ほな、いっぺんテストしよか」
この自律兵器に、カニエのフェアリーを組み合わせてみるとしよう。
「せやけど、重火器型よりかは、魔法の杖っぽくしたほうが、軽くて扱いやすいかもなあ」
邪神ショットに関しては、まだまだ改良の余地がある。
それにしても、【竜の巣】エリアとは?
(第七章 おしまい)
新大陸を開拓するため、幼女型モンスターに魂を転送した魔女は、後に邪神と崇められる(自力で幼女になりたかっただけやのに! 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
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