病院の夜間当直者の視点から描かれた不思議な短編集。日常と非日常の境界線上で起こる奇妙な出来事を繊細に描き出す「怖くない、でも少し怖いホラー」というべき作品です。
主人公の冷静な観察眼と、それでも感じずにはいられない不安や疑問が、独特の緊張感を生み出しています。夜の病院という特殊な空間を舞台に、日常的な業務の中で遭遇する不可思議な現象が、読者の想像力を刺激します。
この物語の魅力は、現実と非現実の絶妙なバランス。実話をベースにしていることでリアリティを与えつつ、超常的な要素が巧みに織り込まれています。主人公の繊細な心理描写も読者の共感を誘います。
奥底には生と死、記憶と現実といった深いテーマが織り込まれているのも特筆すべき点です。読み手は気軽に楽しみつつ、読了後に深い余韻を感じます。
夏の夜に読むのにふさわしい涼しさを感じさせる内容となっており、日本の伝統的な怪談の楽しみ方にも通じる季節感のある演出も魅力の一つ。怖くない、でも少し怖い不思議な世界に、あなたも足を踏み入れてみませんか?