点になっていく記憶

クライングフリーマン

点になっていく記憶

 今日、ふと、そう思った。

 隣のおばあさん。恐らく、もう私のことを覚えていない。

 あれほど、私の顔を見るたび、うるさく構って貰いに来てたのに。

 挨拶さえ、気づかなくなって、なんだか寂しい。

 今、寝たきりの母も、「たまに思い出す」のかどうか分からない。

 たまに目を開けた時、「知らない人」が話しかけて来る、と思っているのかも知れない。

 昔のテレビは、(今の人は知らないだろうが)、消すと、すぐには消えず、真ん中辺に収束していって、点になり、やがて消える。

 人の記憶も、そんなものかも知れない。

 あらゆる記憶は、だんだん、脳の萎縮で、狭まって行き、やがて場所がなくなるのかも。

 何テラバイトもあった情報量も、水たまり程度でよくなっていき、やがて、蒸発するのかも。

 私は、「外部記憶装置」として、Web小説サイトに、書いては投稿書いては投稿している。

 私には、「入る墓」がない。亡くなったら、焼き場で焼かれて、昇天して、お盆にも帰って来れない。

 それでも、私は生きている。まだ。

 私も『点』になって消えるのかな?

 そして、関わった人達の記憶の中でも、点になって行って消えるのかな?

 ―完―

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点になっていく記憶 クライングフリーマン @dansan01

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