第5章 - 宇宙海賊の女王
時間防衛軍での戦いを終えたジョセフィーヌは、再び宇宙海賊団の下へと戻ってきた。
「お帰りなさい、ジョセフィーヌ。時空を救ったそうじゃないか」
カプテン・ブラックが彼女を出迎える。
「まあね~。でも、私はやっぱり海賊よ。正義の味方然としてたら、かっこ悪いでしょ」
「そうだな。お前らしくない」
「それに、あの未来の世界、なんか窮屈だったわ。私は自由気ままに生きたいの」
「自由気ままって、お前の場合、やりたい放題だろ」
「何よ、文句ある? 私は悪党だもの。多少のことは目をつぶってよね」
そこへ、海賊団のメンバーが慌てて駆け寄ってきた。
「大変です! 我々の宇宙船団が、ブラッドベアード海賊団に襲撃されました!」
「なんだって?!」
カプテンが叫ぶ。
「被害状況は?」
「5隻が撃沈、残りも大破寸前です。このままでは全滅は時間の問題……」
「くそっ、あのブラッドベアード海賊団め……。手強い相手だ」
「ブラッドベアード?」
ジョセフィーヌが聞き返す。
「ああ、奴は宇宙一の凶悪海賊と恐れられている男だ。コールドブラッドと異名を取る」
「ほぅ、なかなかいい異名ね。まあ私にはおよばないけどね」
「お前、あまり舐めてかかるなよ。奴はお前なんかとは比べ物にならない」
「ふん、男のくせに偉そうね。私が本気を出せば、あっという間に倒せるわよ」
ジョセフィーヌはすぐさま、ブラッドベアードの下へと乗り込んでいった。
「おい、ブラッドベアード! 私が来たわよ!」
「なんだ、お前は?」
巨漢の男が、ジョセフィーヌを見下ろす。
「私はジョセフィーヌ、伝説の女海賊よ。あんたに立ち向かうために来たの」
「伝説?笑わせるな。お前のような小娘が、俺に挑もうというのか?」
「あんた、人を見た目で判断しちゃダメよ。私、時空を超える力を持ってるんだから」
「時空だと?冗談はよしてくれ。そんなSFみたいな力、信じられるか」
「信じなくていいわ。私の実力を、その身で味わえばわかるはずよ」
ジョセフィーヌは、懐からレーザーソードを取り出した。
「受けて立つわよ、ブラッドベアード!」
「面白い。やってみろ、小娘!」
ブラッドベアードも、巨大なレーザー斧を構える。
激しい斬り合いが始まった。火花が散る中、二人の攻防が続く。
「なかなかやるじゃないか、ガキンチョ」
「あんたこそ、動きが鈍いわね。年には勝てないか」
「こしゃくなやつだ! くらえ、俺の必殺技!ブラッディ・ギロチン!」
ブラッドベアードの斧が、凄まじい速さで振り下ろされる。
「危ない!」
ジョセフィーヌは咄嗟に時間を止めた。斧の刃が、彼女の目の前で静止する。
「は、はじめて間近で見たわ、ギロチン。なんて野蛮な技なの」
時間が動き出し、ジョセフィーヌはあわや、というところで身をかわした。
「な、なんだ今のは!」ブラッドベアードが目を剥く。
「私の時間停止よ。これでもSFだと思う?」
「ば、バカな! そんなことが……」
「私の前では、あんたの力なんて児戯に等しいわ。観念しなさい」
ジョセフィーヌは時間加速を使い、一瞬で背後に回り込む。
「チェックメイトよ、ブラッドベアード」
レーザーソードの切っ先が、ブラッドベアードの喉元に突きつけられた。
「く、くそう……。わかったよ、参ったよ……」
ブラッドベアードが両手を上げて降伏する。
「ふん、大した男じゃないわね。言うほどコールドブラッド(冷血)でもなかったか」
「ジョセフィーヌ、お前という奴は……。俺の財宝は全て差し出すから、命だけは助けてくれ!」
「あんたの命なんて欲しくないわよ。私に降伏したことを周りに言いふらしなさい。これからこの宇宙は、ジョセフィーヌの海になるって」
こうして、ジョセフィーヌはあっけなくブラッドベアード海賊団を倒した。
「ジョゼ、やりすぎだぞ。あの男の首に懸賞金がかかっていたんだ」
カプテン・ブラックが文句を言う。
「カネなんていらないわよ。私は名声が欲しいの。宇宙一の海賊って」
「お前、本当に懲りないな」
「当然よ。私はこれからも、自分の信念を貫くわ。たとえ、それが時空を越えることになっても」
「……わかった。お前についていくよ、女王様」
こうして、ジョセフィーヌは宇宙海賊団の女王となった。
「さあ、みんな!これから私たちは、自由と冒険を求めて宇宙を駆けめぐるわよ!」
「おう!」
海賊団員たちが、歓声を上げる。
「ジョセフィーヌ海賊団、出航!」
ベガバスターを先頭に、宇宙船団が大空へと飛び立っていく。
「ジョセフィーヌ、お前のことは嫌いになれないよ」カプテン・ブラックがぼやく。
「当たり前よ。だって私は、あんたの女王なんだから」
「女王というより、悪ガキだな」
「何よ、失礼しちゃう。私はいい子よ」
「いい子のいい子による、いい子のための海賊団ってか?」
「そうよ、ばっちり!」
銀河に、ジョセフィーヌの高笑いが響き渡る。彼女の伝説は、まだまだ終わらない。
「次はどんな冒険が待ってるかしら。ワクワクするわね!」
「お前と一緒なら、退屈はしないな」
「それはどうかしら。だって、トラブルメーカーは私なんだから」
宇宙の大海原を、ジョセフィーヌ海賊団の船が進んでいく。
その先に待つのは、新たな冒険と、数々の出会い。
そして、彼女が背負うことになる、更なる伝説――。
ジョセフィーヌ・サーガ、ここに完結。
(了)
【SF短編小説】星空の海賊娘ジョセフィーヌはちゃめちゃ冒険譚 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi
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