第24話 客人


「ただいまー」

「あ、お兄ちゃん!おっかえりぃ♪どうだった?学校は」


リビングでポテチを食べながらテレビを見ている妹。だらしなく寝転がりだらけの権現と化していた。


「どうって、なにが?」

「いやいやいや、なにがってほら、女装してったんじゃん!うまく擬態できたのかなぁってさ」

「あ、それか。おお、普通に擬態できてたぞ」

「マジで!?」

「マジ、マジ」


妹(え、誰にも突っ込まれなかったの?先生にも?大丈夫かお兄ちゃんの学校......)


「ってかお前、またうすしおに青海苔いれて食べてんのか。最初からのり塩買えば良いのに」

「ふふん、お兄ちゃんはわかってないねえ!この方が美味しいんだよぅ」

「そうなのか......まあ、別にいいけどその床にこぼしている青海苔は姉が帰って来る前に掃除しとけよ」

「え?のわーっ!?めっちゃこぼれとるぅー!!」

「気づいてなかったのかよ」


ぴょんとソファーから飛び上がり側においてあるコロコロを手に取り散らかる青海苔を掃除する妹。


「ところでさぁーあ、朝お母さんがいってた話どう思う?」

「ん?なんか言ってたっけ」

「あー、お兄ちゃん女装の事で心此処にあらずって感じだったもんね。今日からお母さんの友達の子供が家に泊まるって話だよ」

「ふーん、そんな話してたんだ」

「なんかその子のご両親が仕事の関係で長期で家をあけるからウチで預かるって流れみたい。預かるのはいいけどさぁ、私らに相談もなしでいきなり今日からとかってありえないよねぇ」


確かに。まあ相談されてもNOを叩きつけるが。だって他人とひとつ屋根の下でくらすとか嫌過ぎるだろ。って......


「母さんの友達の子供が泊まるぅう!!?絶対に嫌なんだが!!?」

「いや反応遅っ!?」


普通に聞き流してたけどマジで嫌なんだが!母さんの友達の子供って誰だよそれ!僕らからしたらただの他人じゃねえか!!一緒に暮らすとか嫌過ぎる!!


「ってか、まてよ妹。お前、こんなとんでもない事態になってるってーのにポテチ食って余裕だな、おい?」

「まあ私も今日から友達の家に泊まりにいく予定だからねえ、関係ないし」

「はあ!?じゃ誰がそいつの面倒をみるんだよ!!」

「そらお兄ちゃんでしょう」

「ふっっっざけんじゃねえええーー!!!」

「あはは、ウケる♪」


このガキマジでぶっっ◯してやりてえ!!


「いや待てよ、父さんは出張中だが普通に考えてここは母さんが面倒をみるべきだよな......勝手に人呼んでおきながら僕らに面倒をみさせるなんて横暴許されるはずも無い!!」


家の両親はこれまでも何度かこんな感じで家に人呼んで泊める事があった。そしてその度になぜか僕らが客人の面倒をみるという謎の流れがあり、押し続けられ、いつしかそれが我ら三兄妹の仕事と化していた......刷り込みって恐ろしいよな。


だが、今日という今日は拒否させてもらう!いつまでも都合よく使われている僕ではない!


「でもさぁ、お母さん大変そうだよねぇ最近......朝も青い顔してさぁ。仕事忙しいんだろーね。昨日だって日付変わる頃に帰って来てたし」


ぐっ。


「やっぱり子供三人もいたらお金かかるもんね。今はお姉ちゃんも働いてるけど、夫婦であれだけ頑張らないと家計支えられないんだよね......」


ぬぅ。


「お客様の相手くらいしないとだよね。私たちまだ学生で養われてる立場だし」

「いやお前泊まりにいくんだよね?どの口で言ってるんだよ」

「あ、そーでした!テヘッ☆」


イラッ。


「ま、まあ、けど確かに......それはそうかもな。仕方ねえ、母さんに頼るのはやめとくか」

「おー!」

「姉に押し付けよう」

「おー?」

「いやだって僕知らない人マジで無理だし」

「あー、そういえば基本的にいつもお姉ちゃんがお客様の相手してたねえ。私らはその手伝いって感じで」

「そうそう、直で相手すんの無理だから」


「でもお姉ちゃんも今日は出張でいないみたいだけど」


......は?


「あ、そろそろ行かなきゃ!そんじゃ頑張ってね、お兄ちゃん」


ぽふっ、と僕にポテチの残りと青海苔を手渡す妹。


ソファーの横に置いてあるバッグを肩にかけ玄関へと向かう。


僕はそのポテチと青海苔をテーブルへ置き素早く妹の前に回り込み、流れるように土下座をした。


「いかないでください――ぐぁっ」


ぎゅむ、っと後頭部に柔らかい感触。妹に踏みつけられた。


「あっ、ごめん、急に前にくるから踏んじゃったぁ!危ないなぁ!」


いやわざとだろ。今僕の頭の位置を確認した間があったろ。


「妹様、どうか兄の願いを聞いてはくださりませんでしょうか」

「でも昨日トイレ出てっていう妹の願いを聞き入れてはくれませんでしたよね、お兄様」


――なんて、鋭いカウンター......ッ!!


サァーッと血の気が引いていく。


その時。


――ピンポーン。


来客を知らせるインターホンが鳴った。



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♂男の娘のコの男の娘のこのコのこのこの擬態の娘っ☆ カミトイチ@SSSランク〜書籍&漫画 @kamito1

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