青に染まる放課後

セガワ

噂の真相

放課後の静けさが漂う校舎。薄暮の光が差し込む新聞部の小さな部室で、俺ーー日向レオンは、ため息まじりにノートを眺めていた。


「はぁ...ネタが足りないなぁ」


机に顔を伏せながら、俺は呟いた。新聞部に入ったものの、まともな記事が書けないのは情けない。そう思いながら、ふと窓の外に目をやると、夕焼けに染まる空が目に飛び込んできた。


その時、不意に部室のドアが開く音がした。


「おや、レオン君。今日も張り切ってるわね」


聞き慣れた声に顔を上げると、そこには紫色の髪を靡かせた水鳥川紫苑が立っていた。彼女は生徒会長にして、俺たち新聞部の幽霊部員。その姿は、まるで夕暮れの中から現れた妖精のようだった。


「水鳥川さん...相変わらず、忍び足がうまいですね」


「フフフ、秘密を探るのが得意なの。そう言えば、レオン君。最近、面白い噂を耳にしたんだけど...」


紫苑の目が妖しく輝いた。俺は思わず身を乗り出す。


「どんな噂ですか?」


「ねぇ、『青い教室事件』って覚えてる?」


その言葉に、俺の背筋がピリッと震えた。数ヶ月前に起きた、あの奇妙な出来事。学校中を騒がせた事件を、忘れるわけがない。


「ええ、もちろん。でも、あれはもう...」


「違うの」紫苑が俺の言葉を遮る。「あの事件の主役、銀城ルナがね。今でも学校に潜んでいるって噂なの」


「えっ!?」


思わず声が上ずる。退学したはずのルナが、まだ学校にいる?俺の中で、ジャーナリスト魂が燃え上がった。


「詳しく教えてください!」


紫苑は満足げに微笑むと、ゆっくりと話し始めた。


「銀城ルナ。美術部の天才画家で、いつも無口で内気な子だったわ。でも、あの日...彼女は突然、教室中を水色の絵の具で塗りつぶしちゃったの」


「理由は?」


「『空が眩しかったから』...それだけ。誰も本当の理由は分からないまま、彼女は退学処分になったの」


俺は眉をひそめた。「でも、なぜ今になって...?」


「噂によると、彼女は今も校則破りの代行をしているんですって。まるで、誰かに何かを訴えかけるみたいに...」


紫苑の言葉に、俺の頭の中で何かが繋がった気がした。孤独な天才画家。伝えたいことがあるのに、うまく表現できない。そんな彼女の姿が、鮮明に浮かび上がる。


「...取材させてください」


俺の決意に、紫苑は驚いたような、期待したような表情を見せた。


「面白そうね。私も協力するわ」


その日から、俺たちの調査が始まった。

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青に染まる放課後 セガワ @chobby75

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