恥ずかし小話 『言葉に関するお話』

ヨシオカ フヨウ

恥ずかし小話 『言葉に関するお話』

 唐突に、皆さんに聞きます。


 皆さんは聞き間違い。言い間違いと言うものがありましたか? 


 タイトル的になんともおぞましく聞こえますが、そうではありませんのでご安心してください。そして大変失礼なことをしょっぱなから聞いてしまいまして申し訳ございません。しかしながら私にはかなりあり、そしてこの出来事のせいでかなり恥ずかしい思いをしてしまったのです。


 恥ずかしい思いなんてみんなしていると思いますが、私の場合この恥ずかしい思い出は今でも消えないものであり、そしてこの経験を機に、私は絶対に言い間違いなんてしないと決意をし、聞き間違いがないようにしっかりと聞こうと誓ったのです。


 今回はそんな私の恥ずかしいエピソード――その一をお話しようと思います。


 お気軽に聞いていただけると幸いです。



 〇     〇



 まず初めに、私はこのようにもう決して聞き間違いなどしないと誓った身です。


 しかしそれでも私は未だに間違えて覚えた言葉がたくさんあると思います。なにせ――あの事件の後でも私はたまに聞き間違えたまま覚えてしまった言葉を聞いてしまったり、そのことに関して私の母に指摘されたりしてきました。


 例えば……。




『オーソドックス』




 言葉で聞くと『あぁーあれね』となりますが、実は私、この言葉を間違えた言葉で覚えていました。


 意味を知っているにも関わらず、あろうことかそれを間違えた言葉で覚えてしまう。漢字であればまだ恥ずかしくはない……。あ、いいえ。嘘です。漢字でもかなり傷つきました。それ以来漢字に関してはしっかり覚えようと思った時がありました。


 さて――話を戻しましょう。


 皆様がよく知っている『オーソドックス』ですが、実は私……、この言葉を間違えた言葉で覚えていました。しかも――三年もの間、これが本当の言葉なんだと思いながら過ごしてきましたので、その真実を聞いた瞬間かなりショックを受けました。


 巷でも聞く『オーソドックス』を、私は何と……。



』と、覚えていたのです!



 なんだそりゃ! 


 という言葉が飛び交うでしょう。実際そのことを母に言った時、母は私のことを呆れるような顔をした後で大笑いをして――


「それ、『オーソドックス』でしょっ!」


 と言っていました。


 正直、かなりの衝撃です。


 衝撃と同時に今の私がこのことに関して突っ込むのであれば……、こう言いたいです。


 なんでオードソックスって覚えたんだよっ! そもそもなんでソックスなんだっ!? どんな靴下なんだっ? ちゃんと言葉くらい覚えやがれっ!


 と言うでしょう。もし過去の私がいれば――の話ですが。


 そう。私はこのように間違えた言葉で覚えてしまっていることが多々あり、そのことで何度か恥ずかしい想いをしましたが、今回のメインとなるお話はそんな恥ずかしさの限度を超すような恥ずかしいお話です。


 温かい目で見守っていただけると幸いです。



 〇     〇



 さてさて、ここからが本題です。


 私が生涯で一番の恥ずかしい思いをした時、私はその時友達と話をしていました。


 その時の話の内容は車のお話で、将来どの車の免許を取るのかというお話をしていた時でした。もちろん車種ではなく……、車の操作――オートマチック車かマニュアル車どの車の免許を取るかで話をしていた時でした。


 何人かの友達はオートマチック車で免許を取ると言っており、殆どの人がマニュアル車で免許を取る人がいなかったのですが、私はそうではなかったのです。


 勿論生涯マニュアル車を乗ることはないのですが、その時私は親から『マニュアル車で免許を取ったほうがいい』と言われ、その言葉に従うようにマニュアルの方で免許を取ろうと思っていたのです。


「ヨシオカは車何で取るの?」


 一人の友達――この場合その子のことを私は『エーコ』と呼びます。エーコは聞きました。


 私はその言葉に対し「えっと」と言いながら言葉を濁すと同時に、私はみんなに向けてこう言いました。




「私はマニアック車の免許取ろうと思う。親に言われてなんだけど……」




「「「………………………へ?」」」


 はい! ここで一旦ストーップ!


 もう気付きましたよね? もう気付いてしまいましたよね?


 そうです――私はこの時大きな過ちを犯してしまったのです! しかも自分で気付いていないということが災いし、あろうことかその言葉を大胆にはっきりとした音色で発言してしまうという失態を犯してしまったのです。


 皆さんはもう気付いているかと思いますが、このまま続けます。


「え? ヨシオカ……、今、なんて言ったの?」

「え? だからマニアック車を………」

「………………………ヨシオカ、それ、間違えているよ」

「え?」

「それって……、じゃなくて? ? それ」

「………………………」


『………………………』

 

 その言葉を聞いた瞬間、私の体の中に流れる血の温かさが一気に氷点下まで下がり、それに反比例して全身の汗がどろどろと吹き出してきたのを覚えています。更に言うとその時、自分でも顔の熱が一気に膨張し、どんどんと自分が友達に対して言った言葉を思い出して、そして、理解してしまったのです。


 やらかした。


 私は……、とんでもない間違いを犯してしまった。


 私は、マニュアル車と言いたかったのに、それを……。







 マ  ニ  ア  ッ  ク  と  言  っ  て  し  ま  っ  た  !!







 はい。この後はもう修羅場。


 皆さまご存知の怒りと怒りがぶつかり合う家族戦争ではなく、狂喜の修羅場が、全員大爆笑と言う名の大合唱の修羅場が展開されたのです。


 …………私だけの。


 友達はそれを聞いてげらげら笑い、あろうことかその恥ずかし言葉のお話がクラス中に広まってしまい、別のクラスにも広まってしまうという大惨事 (笑)になってしまったのです。


 このことを母に言うと、母はその時、私のことを見て呆れた笑いを浮かべながら……。


「だからしっかりと言葉を覚えなさいって言ったでしょ?」


 と言ってきました。


 おっしゃる通りです。本当におっしゃる通りでした。


 この時から私は言葉を覚える時はしっかりと辞書で調べるなりして覚えるようにして今に至ります。本当のあの時は恥ずかしくなり、穴があったら入りたいという気持ちに駆られましたね。


 本当に、なんであの時私はあんなことを言ってしまったのでしょう。頭の中ではちゃんとマニュアルと覚えていたにも関わらずのマニアック……。


 本当に、この出来事はまさに爆弾。魚雷の如くの衝撃と、二度と言ってはならないパンドラと化してしまいました。


 最後に――このような馬鹿らしい位お話に付き合っていただいた読者の方々、本当にありがとうございました。


 あ、因みに――その『マニアック』という言葉は友達の間で約三か月ほど続きました。

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