第二十六話 自主退部!?
マヨが心配してわたしの家に来てくれたのは捻挫もほとんど良くなった、合宿から一週間ほど経ってから。部活があったという日の夜のことだった。
「辞めたって今日聞いて。みんなビックリしたんだから」
わたしの部屋でマヨは制服のスカートのままで大胆に胡座をかいて座った。正座とかマジむり、っていつも言ってたもんね。
「『自主退部』だって聞いたけど。いきなりどうしたのさ?」
「自主退部……」
そういうことにされたんだ。
「龍崎先輩、どうしてた?」
訊ねてみると「今日は来なかったよ?」と。
「え、なんで?」
「さあ。『諸用で欠席』って言ってたから。病気とかじゃないとは思うけど」
「そうなんだ……」
すると探偵マヨは横目でわたしを見て「やっぱり龍崎先輩となんかあったんだね?」と探るように訊ねる。
「ね。教えて。『一般庶民スズ助のタマノコシ物語』のつづき」
「やめてってば……」
「ね。ね。進展したんでしょ?」
「……んん」
『お菊ちゃんの姿』については今回も言わなかった。だけど『告白されたこと』は仕方なく白状した。マヨは「ギャッヒイイイン!」というびっくりするような声を出して、座っているのにぴょんぴょん跳ねた。
「えっ、えっ? つまりスズは、龍崎先輩に告られたから、許嫁のさつき先輩に退部にさせられたってこと!? それヤバい! ドロドロ!」
「そ、そういうわけじゃないよ! わたしが班行動を無視して怪我したのがいけなかったんだし」
「そんな理由だけで退部になるわけないでしょ。絶対龍崎先輩が関係してる!」
「マヨぉ……」
「でもさ。それなら『部内恋愛禁止』の規則を破ったのは龍崎先輩のほうじゃん。なのにスズだけが退部っておかしくない? さつき先輩は『部長でも罰はある』って言ってたのに」
「だから告白と今回の退部は関係ないんだってば」
「じゃあなに? スズが本当に自分から『辞めたいです』って言ったの?」
「言ってないよ……」
「ならなんで!」
「……マサミ先生が、決めたんだと思う」
するとマヨはその大きな目を更に大きくして止まった。長いまつ毛。今日のヘアピンはキラキラショッキングピンクのハート。
「だからさつき先輩がわたしに嫌がらせをしたとか、そういうことじゃないんだよ」
すると探偵マヨは腕を組んで「ふむふむ」と推理体勢に入る。
「つまり、マサミ先生は龍崎先輩がスズに告る前に龍崎先輩の気持ちに気づいた。だから先回りしてスズを遠ざけようとした。けど間一髪、間に合わず先輩は告白しちゃって……で今、ってこと?」
「まあ……だいたいはそう、かな」
「ところで告白の返事はしてないの?」
「してないし、できないよ」
「なんでさ」
「だってもう会えないじゃん」
「なんで?」
「だって退部したわけだし」
するとマヨはインコみたいに小首を傾げてまた「なんで?」と問う。
「だから」
「部室に行けばいつでも会えるじゃん。『いつ来てもいい』って、言ってもらったんでしょ?」
「え……」
だけどそれは、茶道部員でないと。
「でも部外者は……」
「ならわたしが協力する」
驚いてその顔を見ると、マヨは、にこっ、と頼もしく笑っていた。
「ここでしょ、『主人公の親友』がいちばん活躍するシーンは」
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