第二十一話 退部!?

「……さつきさん、なぜここに? ここは僕専用の特別な支度したく室のはずだけど」


「マサミ先生からのご依頼で特別に鍵をもらいました。取り急ぎ西尾さんに伝えたいことがあって」


 び、と視線を刺されてびくりと縮む。ひ。い、石になりそう。だけどそれは『なりそう』ではなくて本当にわたしをパキン、と石化させる内容だった。


「この京都合宿後、西尾さんには茶道部を退部していただきます。マサミ先生と相談した結果、あなたの存在は部にとって著しく悪影響を及ぼしていることがわかりました」


「さつきさん、なにを言ってる」

「決定事項を述べているだけ」


 龍崎先輩を睨んでさつき先輩はピシャリと返した。


「抗議は一切受け付けません、とのことです。希望するなら保護者の方に今すぐ迎えに来てもらってもよいとのことです」


 返事はなにも出来なかった。だって、石化していたから。瞬きも、息すらもできないほど。


「千菊くん。馬鹿なことを考えるのはよして。わからない? あなたが好意を寄せること自体が西尾さんにとっては『迷惑』なの。この間あなたの『役目』について、あなた自身が言っていたことをお忘れ? 私たちが普通の恋愛などできるはずがないでしょう。これ以上マサミ先生を幻滅させないで。今一度ご自分のすべきこと、しっかりお考えなさい」


 言い切るとさつき先輩は小さくため息をついて部屋から出ていった。


「ごめんスズちゃん、ここで待っていて」


 龍崎先輩は慌てた様子でさつき先輩を追う。言い訳をするつもりなのかな、それとも……。


 だけどそのまま先輩が部屋に戻ってくることはなかった。


 もしかしたらマサミ先生に説得されてしまったのかもしれない。


 西尾 スズのことはもう忘れなさい、と。



 夕方、呼んでもないのにお母さんが車で旅館まで迎えに来て、わたしは強制的に帰宅させられた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る