第十一話 恋のライバル!?
「いやぁ、たまげた」
夕日がまぶしい帰り道、ボヤくように言うのはマヨだ。
「……許嫁のこと?」
「スズは知ってたの?」
「さつき先輩だとは知らなかったよ」
「いやぁ、やっぱ『お抹茶王子』は別格なんだねぇ」
そうだねぇ。と苦笑いで返す。
「でもあの二人、将来本当に結婚したりするのかな?」
「うーん……」
お付き合いだってしたことないのに。『結婚』だなんて未知すぎてピヨピヨなわたしにわかることはなにもないよ。
「あんまり仲良さそうじゃないよね?」
「そんなもんなんじゃないのかな。結婚相手っていうのは」
ぼんやり思い浮かべるのは自分のお母さんとお父さんだった。仲は悪くないけど、とびきり良くもないと思う。
マヨは「ふーん」とだけ言って「前途多難ですな、『一般庶民スズ助のタマノコシ物語』は」などと言う。
「……なにそれ」
「スズが主人公の物語。ノンフィクションの」
この前『主人公の親友役』だとか言ってたやつか。
「今の話題、わたし関係なかったよね?」
「はあー? 関係ありありじゃん。許嫁なんて、強烈な恋のライバルの登場でしょう? 超盛り上がるとこじゃんっ!」
ううーん? よくわかんないな。
「なんで恋のライバル?」
訊ねるとマヨは憐れむような顔をしてわたしを見てきた。「……なに」
「龍崎先輩にさ、もし告白されたら、スズどうする?」
「え。されるわけないよね。だって龍崎先輩にはさつき先輩がいるじゃん」
「……本気で言ってる?」
「言ってる」
こくこく、と頷いて見せると、マヨはなぜか「か」と仰け反って白目を剥いた。なに、こわ。
そんなこんな、わたしたちは茶道部として中学生活を過ごし始めた。だけどわたしは龍崎先輩とは必要以上に話したり関わったりしないように気をつけていた。
さつき先輩が許嫁だとわかった以上、変に刺激したくない。というのが一番の理由。本人たちはともかく、妹のやよいちゃんが常に目を光らせてるし。それがまじでこわいから。
人気者の『お抹茶王子』を部長に掲げながらも茶道部に部員が多くない理由って、そこ、つまり『龍崎先輩の許嫁であるさつき先輩の存在』なのかな、と疎いわたしにもわかってきた。
うっかり近づけば猛毒に当てられて即死。
ひい、こわ。こわすぎる。
これは大人しく過ごすに限るな、と胸に誓った。
……というのに。
「あなた、お名前は? スジがいいわ」
どうして放っておいてくれないんですかああああっ!
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