第二話 これが運命!?

 放課後。部活紹介があった今日はさっそく部活見学ができる。仮入部も受付開始なんだって。


 じつはわたしはなんだかんだ言って、吹奏楽部にしようかな、と思ってたんだよね。だって演奏、カッコよかったし。去年マヨに連れられて仕方なく行った演奏会だったけど、行ってみたら結構楽しかったし。


 だから今度は、わたしも演奏する側に────

「スズぅ〜」


「……へ」

「一緒にいこ? 茶道部!」


「いや、わたしは!」


「へ」と見つめ合った。

「……やだやだやだ! スズお願い。同じ部活にしようよぅ」


「え…………と」


 たしかに部活って大事かも。これが違うと当然一緒にいられる時間は減るし、部活だけの友達関係だってできちゃう。そうしたらわたしとマヨも……?


 でもでも!

 わたしだって自分で決めないと!


「マヨ、わたし吹」「その前にトイレだ」


「へ」


 もしかしてマヨという自由奔放な友達を持った時点で、わたしの運命は決まってたんじゃないか、って、あとからちょっとだけ思った。


 だって向かったトイレがちょうど茶道部の部室の近くで。(教室と同じ階だったんだよね)


 知らぬ間に茶道部見学の人だかりに呑まれてたんだもん〜! うぎゃあー、押さないでぇー!


「お静かに! ここは静寂の中で茶の湯をたのしむ『茶道部』です。興味本位の人は今すぐお帰りください」


 しゅぴんっ!

 まっすぐに空気を裂いて飛ぶ矢のような声だった。


 ひ。なになに? ザワついていた廊下が一気に静まり返った。中心にいる声の主は……ええ!? 宇治原さん!? ……あ、じゃないや。よく似てるけど。


「入部する気のない人はおどきになって。真剣に茶道と向き合うつもりのある方だけ残ってください」


 ごくり……。

 なにあの人、こわー、などとヒソヒソ話しながら大勢の生徒たちが廊下を去ってゆく。


 宇治原さんに似たその人は「ふん」と鼻を鳴らすと残ったわたしたちに目を向けた。


「あなたたちは?」


「あ、えと、わたしは」

「ハイ! 入部希望者です!」


 こんなタイミングでトイレから出てきたマヨがかわいいハンカチで手を拭きながら元気に答えた。


 ひい、待ってよ、もううう!


 こうして廊下にいたわたしたち、プラス本物の宇治原さんともうひとり、ころん、と丸い雰囲気の三つ編みの一年女子のあわせて4名が『入部希望者』として部室に通された。


 いや、だからわたしは違うのにぃっ!



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