epilog




 翌年の9月21日、天根陽和は死んだ。

 享年21歳。

 死因は『月瞑病』による衰弱死。

 彼女の遺体は死してもなお美しく、まさにかぐや姫のようだった。

 葬式で、初対面の親類縁者、その他知人が多く集まる中、喪主を務めた陽和の両親から直々に友人代表として挨拶を頼まれた。

 僕は、僕だけが知っている天根陽和の生涯や思い出、そして彼女に抱いていた好意も包み隠すこと無く全て語った。

 辺りから啜り泣く声が聞こえて、改めて天根陽和がどれだけ愛されていたのかがわかる。

 数年経った今でも、僕は彼女の誕生日にお供え物を持って会いに行っている。

 悲しいけれど、僕は涙を流さなかった。墓の下で眠る彼女に声が届かなくても、隣にいる気がするから。彼女の前では、笑顔を忘れないようにしている。


「今日も、いい日和だな」


 不思議とその日の天気は毎年、晴々とした曇り無き快晴であることが多い。



 青空に、我が物顔で燦々と。今日も輝る日は、これよきひより。

 いつかそっちに行けたなら、彼は彼女を呼び続ける。あの晴々とした声が、応えてくれるまで。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひより~新月のかぐや姫~ 南無珠 真意 @kakeluyamato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ