第1話
2068年、地球外から飛来した謎の物体より排出された生命体が当時開発中であった某国製自立思考型戦闘用インターフェース搭載の鳥型戦闘兵器に寄生し、増殖、人間に攻撃を仕掛けた。人類はこれをカイライと呼称し、戦闘を開始。これにより一時的に国際連合加盟国の全てが国際不可侵共闘協定に参加。人類とカイライとの戦争は2088年現在まで戦果を広げ続けている。
「渚はどこ志望にするだ?やっぱ海自かー?」
「いや。俺は空自に行く。」
友人からの呼び掛けに渚白兎がこたえた。
「ほへぇー俺は対気圧テストの成績が微妙だったからそれは無理だなぁ」
彼に話しかけているのは西山康太。2人とも自衛特別学校に通う3年生だった。
日本は増え続ける激戦区の1つであり、人手不足を補うため過去の過ちをもう一度繰り返そうとしていた。それがこの特別学校制度である。
15から17歳の子供が入学を義務付けられ卒業と同時に性産業への就職か自衛隊への入隊が定められているものである。
150年前の学徒出陣と何も変わらない
「渚は模擬戦の成績もダントツでトップだもんなぁー。このままだったらエースパイロットにもなれんじゃね。」
「どうだか。鋼戦機は乗り手の才能が8割って聞くからなぁ。」
鋼戦機 -鋼型戦闘用対傀儡兵装機-
国連共同開発のもと、日本が指揮を取り完成した人型の大型兵器である。
「週末には適合テストだろ。もしこれで受かったらいきなり三尉だぜ?なりてぇよなぁ。」
「まぁなぁ。康太は海自だろ?」
「おうよ、海型鋼戦機が一番装甲が厚いらしいし。」
「自分の命しか考えてねーのかよ。」
他愛のない話をしながら二人は帰路に着いた。
「ただいま。」
「おかえり。白兎どうだった?学校」
「別に。いつも通りだよ、それより姉ちゃんのほうはどうなの。」
「いつも通りよ。最近は弾薬やシールドの注文が増えてるみたいだけど。」
白兎の姉、渚晶子は三菱重工の兵器開発部の生産ラインで働いている技術者であった。
「こういえば、ニュース見た?高知が落ちたらしい。四国戦線もどんどん押し上げられてるって。」
「あぁ見たよ。兵庫も難民の受け入れ地域から外されたって。」
日本は北海道、本州太平洋沿岸、四国、長崎、鹿児島南部の5つの戦線を抱え、じりじりと首都にカイライの驚異が迫りつつあった。
「白兎。結局空自にするの?」
「うん、多分南部のどこかに配属になると思う。」
「そう…」
姉の悲しそうな声を聞き、白兎は胸が締め付けられる思いだった。2081年の舞鶴事件によって両親を亡くして以来2人だけで暮らしてきた彼らにとって互いは何よりもかけがえのない存在だった。今では京都、兵庫の北部は復興を果たしているが、防衛ラインが厚く学校や職場が多いという理由で神奈川まで引っ越してきたのだ。
「もし適合テストがダメだったらどうするの?」
「その時はF-2のパイロットにてもなると思う。」
「そう…でも私…」
「大丈夫だよ姉ちゃん」
白兎が言葉を遮るように口を開く。
「俺は死なない」
白兎は姉の表情に心をえぐられながら言葉を紡いだ。
紅彗戦記 汐織博 @remember1954s
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。紅彗戦記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます