ヨルク家の血

 ノルムの後について行った先は、男子たちの部屋だ。


「こんにちは、男子の皆さん」

「ノルムか。何の用だ?」


 出てきたのはユベル先輩だ。


「一緒にトランプでもやろうかなって思って」


 いつの間にか、ノルムの手にはトランプの箱が。


「ちょうど暇してたところだ。俺は構わないぞ。お前たちはどうする?」

「マジっすか。女の子たちからのお誘いを断る理由はないっす」


 シモーネは大喜びではしゃぐ。


「いいんじゃねーの。仲良くなるならトランプが一番だぜ」


 ナッシュも同意する。

 こうして男子3人とノルム、フィーネ、そしてオレの6人でトランプをすることになった。


「何にするんだ?」

「ババ抜きでいいですか?」

「大富豪は?」

「ぼくくんのわかるゲームじゃないと。ババ抜きならわかるよね?」


 当たり前のように尋ねてくるノルム。だが……


「ババ抜きって何?」

「え?」

「は?」


 フィーネ以外の4人がオレのほうを見てくる。


「え? ババ抜き知らないの?」

「知らない」

「じゃあさ、ルールがわかるトランプのゲームある?」

「ポーカーとブラックジャックなら」


 訳あってこの2つのゲームはやらされたことがある。


「うーん。こういう場でやるゲームじゃないな」


「親がギャンブラーとかじゃねーの?」


「うーん、じゃあババ抜き教えてあげる」


 ノルムからルールを教わる。


「わかった?」

「たぶん」


 今の説明で隣のフィーネも今の説明で理解しただろう。

 とにかく、同じ数字のカード2枚が揃ったらカードを捨てていけばいい。

 そういうゲームだ。

 ノルムがシャッフルして、手札を配る。

 オレの最初の手札には、ジョーカーはなかった。


「これでいい?」


 最初の手札にあったハートとクローバーの10を捨て、確認を取る。


「うん、それで合ってる」


 どうやら大丈夫のようだ。

 とにかくゲームスタート。

 ノルムの手札から1枚引く。

 ハートの4だ。

 だが、オレの手札に4はない。

 次にユベル先輩にカードを引かせる。

 クローバーのJを持っていかれた。


「おっ! 揃った」


 ユベル先輩がJのペアを捨てる。

 そのような感じでゲームは進んでいく。

 一番最初にあがったのはノルム。そしてユベル先輩、オレの順であがる。

 結局ジョーカーは回って来なかったので、楽しみがよくわからなかった。

 残る3人は不思議なくらい手札が揃わない。


「そうだ、先輩」

「なんだ、ノルム」

「今日は大変でしたね」

「まあな」


 オレを挟んで、会話が始まった。


「先輩だけが襲われた理由、もしかして先輩の家系と関係があるんじゃないかって思ったんですけど」

「どうだろうな?」

「ヨルク家の固有魔術ってどんなものなんですか?」


 割と単刀直入に聞くノルム。

 果たして、答えてくれるのか?


「お前らはヨルク家についてどんなイメージを持ってる?」


 名家として有名ではあるが、それだけだ。特に印象がない。

 この間、先輩から直接聞いた、女系の家系だということくらいだろうか。


「うーん、私としてはあまりイメージがないですね」


 ノルムも同じ意見のようだ。

 バートリー家みたいにに政治に思いっきり絡んでくるような感じではないので、情報がほとんどない。


「ですが、都市伝説的に一部で噂されているのを聞いたことがあります。ヨルク家の人間は、魔女の末裔だとか、魔族の血が入っているとか」


 そんなにぶっちゃけて大丈夫か。

 機嫌を悪くしたりしないだろうか。


「ハハッ、まあ、そんなことを思っている奴らもいるな」


「あながち嘘じゃないかもしれないぜ」

「そうなんですか?」

「ヨルク家人間はな、体内の魔力の性質が普通の人とは違うんだ」


 そう言ってユベル先輩は人差し指にマナを灯した。


「えっ!」


 ノルムは思わず声を出す。

 オレも目がいつもより開いているのが自分でもわかるくらい驚く。

 ピンク色のマナが蝋燭に灯る火のように揺れていた。


「それがヨルク家の魔術!?」

「魔術ってか、マナの性質だな」


 マナは通常青い色をしている。

 ピンク色のマナなど見たことがない。


「このマナは、通常のマナより密度が濃いんだ。だからそこらの一般人よりも強力な魔術が使えるって訳」

「先輩、何だかんだヨルク家の力を受け継いでいるんですね」

「これでも弱いほうなんだ。力を濃く受け継いだ奴のマナはもっと赤い」

「へぇ、そうなんですね」


 赤、オレの左目の色と同じだ。

 そういえば、ダンジョンにも……

 

「それだけすごいマナなら、魔術の点数もすごいんじゃないの?」


 オレはさりげなく先輩に聞いてみる。


「いや、そんなことはない。むしろ逆だ。何故かは知らないが、入学時のテストでは魔力0点だった」


 オレと同じだ。

 フィーネが言っていた。オレの魔力にはマイナスの性質があると。

 先輩も同じなのではないだろうか。

 あの触手はマイナスの性質の魔力を吸い取っているのか?


「でも、ヨルク家のマナとあの触手が関係があるかどうかはまだ疑問だな」

「どうしてですか?」

 とノルムが聞く。

「ローランドの件が説明できない」


 オレの魔力の性質を知らないユベル先輩なら、そういう考えでも当然だ。

 むしろ安易に結びつけないほうが賢い。


「ローランドがヨルク家の血を継いでいるとか……は考えられませんか?」


 流石にそれはない。

 先輩もそう思うのではないか。


「考えられなくはない」


 え?

 先輩のその発言に内心驚く。


「何せ、うちは大量の弱い血を追放してきたからな。ローランドのひいひいひいばあさんがヨルク家から追放された人とかならあり得る」


 何とも言えない。

 その可能性を肯定する材料も否定する材料もない。


「はい、あがり」


 フィーネがジョーカーをシモーネに引かせる。

 と同時にこちらに目線で合図してくる。

 今の話はちゃんと聞いていた、と。


 しかし思った以上の収穫だ

 情報を整理する必要がありそうだ。


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