オマケ 狼
とある夜。
いつもの日課をこなすが如く、メリィがロイの胸を揉んでいる。
『ロイの雄っぱいエッチ。ふへへへ……』
読書中のロイに背中から抱き着き、胸をモチモチモチモチ! 揉みまわすメリィは澄ました表情をしているが、代わりにブンブンと揺れる耳と尻尾から感情が強くにじみ出ていた。
『メリィ、俺、そろそろ移動するんだけど』
『ヤダ。もうちょっと。雄っぱい』
モヂィ……と鷲掴むと、反撃といわんばかりにロイがギュムッとメリィの腕を抓る。
か弱い女性の腕にとんだ暴挙を! と憤る人もいるかもしれないが、メリィの場合は肉体が魔族よりであり、シッカリ研がれた刃物くらい用意しなければかすり傷すら与えられないような屈強な肌をしているため、大して問題は無かった。
むしろ、ロイの小さな抵抗にふふっと笑ってしまう余裕すらある。
『ロイ、かわいい。仕方がないから、放してあげる』
『なんだよ、その言い草。だいたい、毎回毎回、俺の雄っぱいばっか揉みやがって。俺も揉みた……』
不貞腐れた主張をし終える前に恥ずかしくなったロイが、ほんのりと頬を赤らめてパキリと固まる。
すると、ロイの様子を見ていたメリィが無言で彼の手を掴み、持ち上げた。
そして、ロイ大きな手のひらを彼自身の立派な胸筋に添わせる。
『メリィ?』
セルフで胸を揉ませてくるメリィに困惑した表情を向けると、彼女は、
『ごめん、ロイ。ロイも雄っぱい揉みたかったの、知らなかった。モチモチ、スベスベを独占してごめん』
と、申し訳がなさそうに頭を下げた。
『いや、どこに自分の胸を揉み回してぇ男がいるんだよ。そんなの相手の胸に決まってるだろ!』
『相手の……私のか!』
『そうだよ! このバカ!』
ハッとした表情で掴みあげていたロイの手を放すメリィに彼が真っ赤な顔で吠える。
照れ隠しもあってか、ロイはイライラとした風の態度をとっている。
『別に、揉んだらいいのに』
キョトンとした様子でムチムチと自分自身の胸を揉むメリィが挑発しているように見える。
ロイは目元を赤くしたままジトッとメリィを睨んだ。
『メリィがいっつもどっかしら俺のこと触り倒してるから隙が無いんだよ。揉んでもいいって言うなら差し出すくらいしてみろ』
ちょっとした軽口のつもり文句を溢す。
すると、メリィは『なるほど』と呟いてから、アッサリとした様子で自分自身のバインと張り出た巨乳を持ち上げ、
『ロイ、ほら』
と、彼に豊さの象徴を差し出した。
魅力的な柔い肉塊がタユンタユンと揺れている。
耳も尻尾も大して動いていないキョトンとした無防備な姿が、かえってスケベだ。
『え? あ? え!? 本当に差し出してるのか、コイツ! いや、狼狽えるなって。もっとスケベな事して来ただろ。アレとか、ソレとか、コレとか! まあ、されてる方が多いけど。でも、何か悪い事してる気が。いや、でも、もっと悪い事ばっかしてるのはメリィの方だし』
適当に煽ったつもりのロイが激しく困惑をする。
熱くかき混ぜられる脳は軽いパニックに陥りかけた。
『ロイ?』
触らなくていいの? とメリィが不備を傾げる。
引っ込みの付かなくなったロイは、
『ああ、もう、知らねぇ!』
と、ギュッと目を瞑って勢い良くメリィの胸を鷲掴んだ。
『色気の欠片もね~。せっかくつかめたのにな~』
ムニッと指からはみ出る大きな肉を服越しに揉みこむのだが、意外と興奮を感じない。
ロイは苦笑いを浮かべた。
『なんつーか、まあ、夜とは言えガッツリ明かりがついたリビングにロマンを求める方が間違ってるわな。でも、いい感じになるとメリィは滅茶苦茶がっついてくるからな。いっつもタイミング逃すんだよな……俺だってたまには襲いてぇよ。泣かせてぇよ。別にM男じゃねーもん、俺。多分、割と……』
感覚的には胸を揉むというより触り心地の良いスクイーズでも弄んでいるような感覚だったが、珍しく一方的に掴めている胸を手放すのも勿体なくて、ロイはモチモチと揉み続けた。
『あの、ロイ……』
突然、メリィが困惑したような小さな言葉を出す。
『なんだ?』
ロイが不思議そうに顔を上げると、そこには、耳と尻尾を元気なくへたらせてモジモジとしているメリィの姿があった。
『ロイ、恥ずかしい』
震えた言葉を出すメリィは珍しく顔を真っ赤にした上に汗ばんでいて、組んだ両手をモゾモゾと弄っている。
狼耳の内側の血管も目立つようになっていて、温かな湯気を出さんばかりになっていた。
目が合うと、メリィは恥ずかしそうに視線を逸らす。
ロイにスイッチが入った。
『ロイ、待って、ロイ』
「何の」とは言わないが動きを素早く、激しくしたロイにメリィが立ち尽くしたまま制止の言葉を投げかける。
もちろんロイは無視をした。
『スケベ、エッチ、変態』
ジワッと涙を流して文句を溢し始めても、抵抗せずにモジモジしているだけのメリィが可愛らしい。
うなぎ上りにテンションの上がっていくロイが、桃色に茹った肌を見ようと衣服のボタンに手をかければ、メリィが、
『ロイ、駄目! 嫌!』
と、大慌てで彼の手を振り払い、逃げ出した。
それから十数分程度たって、ロイが元メリィの部屋である二人の寝室で寝転がっていると、彼女がコッソリ帰ってきた。
『おかえり、メリィ』
上機嫌なロイが、真っ暗な部屋にひっそりと入り込んでキョロキョロと辺りを見回すメリィに声をかける。
メリィは初めビックリして尻尾の毛を逆立たせていたが、やがて事態を察すると観念して室内に入り、ロイの隣に寝ころんだ。
『ただいま、ロイ』
ポツリと呟くメリィは俯き気味だ。
触れ合っていればすぐに熱くなるのだろうが、少し前まで冷気にさらされていたせいかメリィの肌は非常に冷たくなっている。
『随分と冷えてるが、どこに行ってたんだ?』
揶揄うように声をかけてメリィの体に足を絡ませる。
いつもなら温かいと引っ付き返すメリィがビクッと肩を跳ね上げて固まった。
『洗面所。ロイの部屋着を嗅いで心を落ち着かせてた』
『落ち着くか? それ』
『落ち着く』
頷くメリィの腹に後ろから手を回してギュッと抱きしめる。
すると、今度のメリィは、『うぅ……』と小さく唸りながらロイの手の甲に自分の手のひらを重ねた。
払いのけるか、あるいは受け入れるか、迷っているようだ。
『なんだよ。嫌なのか? さっきも逃げちまってさ。入ってくるときも随分と慎重だったな』
頬をプニプニとつついて悪戯をすれば、メリィが抵抗するように、あむっと唇で指先を食む。
『嫌は嘘。でも、恥ずかしいは本当。寝てるロイにギューッて抱き着いて、ホクホクで寝ようと思ってた。でも、ロイ、起きてた。落ち着いてたのに、落ち着かなくなった』
指を食んだ勢いでロイの手の甲や手のひらも、あむあむと唇で甘噛みをする。
『待っててやったんだから感謝しろよ』
クスクスと笑うロイがふてぶてしく言葉を出すと、メリィは、
『いつもは寝ちゃってるくせに』
と、恨みがましい言葉を出した。
『良いじゃねぇかよ。だって照れてるメリィ珍しいし。ほら、こっち向けよ』
促せばメリィは渋々といった様子で頷いて、モゾモゾ動き、ロイの胸元に入り込む。
しかし、スンスンと控えめにロイの匂いを嗅ぐメリィは彼の胸を揉んだりお尻を触ったりすることもなく、非常に大人しい様子だ。
『静かだな。元気ねーの?』
『まだ、恥ずかしい』
『恥ずかしいと静かになるのか』
コクンと頷くメリィが、そっとロイの背中に腕を回す。
羞恥が故か、あるいは段々に眠くなってきたのか、子ども体温を発揮するメリィは非常に温かい。
メリィがこのまま眠ろうとしていることは勘づいていたが、ロイは彼女の発する無言のお願いを無視して好きな事をした。
『ロイ、意地悪だ。酷い。狼だ』
数十分後、珍しく襲われたメリィが毛布の中で「キュゥン」と弱々しく尻尾を抱えて丸くなり、真っ赤になって震えていた。
無口魔族ちゃんの初恋 宙色紅葉(そらいろもみじ) 毎日投稿中 @SorairoMomiji
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