第4話原作主人公との邂逅

「どこにいるのよ、ブレイク……」


 私は街中を探しているけれど、中々ブレイクは見つからない。仲間外れにされている彼を見過ごすわけにはいかない。

 見つけて色々と話してみなければ。


 ローランドはブレイクに買い出しに行かせたと言っていた。道具屋に行けばいるかもしれないわ。


「ロザリア様」


 見つかった。ブレイクはアイテムの買い出しをしている。


「良かった……ブレイク、いたのね」


「ロザリア様、僕に何かご用でしょうか?」


 ご用も何も色々話したいことがある。彼の今後の身の振り方でこの国の命運が決まる。

 でも、そんなこと言ったら変な奴と思われてしまうわ。

 あくまでも、世間話の体をとらないと。


「重いでしょ? 持つわよ」


 ブレイクはリュックやバッグにパンパンにアイテムを入れていた。見るからに重そう。


「ロザリア様、どうされたのですか? いつもはどんなに軽い荷物でも僕に持たせようとしていましたのに……」


 続続悪役転生の洗礼。

 ブレイクと良好な関係を築きたいのに、そうは問屋が卸さないようだ。


 追放パーティーたちよ、何がブレイクは荷物持ちも出来ない無能よ! あんたたちより断然ブレイクの方が仕事しているじゃない。

 王城でくつろいでいるだけのくせに。


 これだけ大量のアイテムを買っているということはローランドはブレイクにお金を持たせているのかと思った。


 でも、実際は銅貨数枚しか渡していなかった。

 ブレイクは自分の貯金をはたいてアイテムを購入していたのだ。


「あんのクソ兄貴……」


 ローランドを許せない気持ちはあるけれど、今はもっとブレイクに話を聞かないといけない。

 ブレイクの見た目はやせ細っていた。あまりご飯を食べていなさそう。

 顔色も良くない。


「来なさい、ブレイク!」


「ああ、どこへですか? ロザリア様……ロザリア様に荷物を持たせるわけにはいきませんのに」


「いいから付いてくるのよ!」


 私はブレイクから荷物を取り上げ、彼の腕を引っ張って連れて行くことにした。





「ロザリア様、困ります。そのような者を城内に入れては。ローランド様からブレイクを城内に入れてならないと仰せつかっていますので」


 メイドが寝ぼけたことを言ってくる。そんなこと私の知ったことではない。シスコン馬鹿兄貴め、使用人たちにまでくだらないことを。どうしようもない人ね。


「黙りなさい! 彼は私の客人です。無礼は許しません」


「は……はい……申し訳ございません」


「ロザリア様……ありがとうございます……」


 ブレイクは深々と頭を下げている。


「これ、ブレイクに料理を作って差し上げて」


 私は料理人たちにブレイクに料理を振舞うよう命じた。


「は? 何故そのような者に料理を? ロザリア様」


 どいつもこいつも。ブレイクのおかげで平和な日々を送れていることも知らずに。


「いいから、早くしなさい!」


「は……はい」


 料理人たちは大急ぎで料理を作った。


「どうぞ、召し上がれ」


「よろしいのですか?」


「ええ、遠慮なんてしないで。沢山あるから。ささ、早く座って」


 私はブレイクを席に着かせる。


「美味しいです、美味しいです」


 改めて見るとブレイクはやせ細りすぎている。ここまでの仕打ちを受けていたなんて。彼を見ていると可哀想になってきた。


 美味しそうに料理を食べているのは嬉しいけれど。


「え? ロザリア様? 泣いているのですか? どうされたのですか?」


「え?」


 私は自分の頬を手で拭う。確かに水滴が頬を濡らしていた。気付かないうちに涙を流していたようね。


「ああ、なんでもないわ。心配しないで」


「わかりました」


 変な女と思われたかもしれない。でも、いい。何と思われようとも。私は私のやるべきことをやるだけ。


 それにしてもブレイクは私の知っているブレイクと別人のようだった。彼の様子が描かれるのは主に追放後からだ。

 天上天下唯我独尊、俺様キャラで女は俺について来い。ハーレム展開が俺を待っているというようなキャラだった。


 元々のブレイクは礼儀正しくて気弱な性格だったのだ。追放されて性格が変わってしまったのかもしれない。

 まあ、それも当然よね。国を守っていたのに突然パーティーを追放されるなんて。


 自分のことを多くは語らなかったとはいえ、無能な荷物持ちと蔑まれてきた。

 こちらまでいたたまれない気持ちになってくる。


「困ったことがあったら何でも言ってね」


「ええ、ありがとうございます、ロザリア様」


 私の言葉は本心だ。最初は破滅を阻止するためにブレイクを取り込めたらいいと考えていた。

 でも、今は彼を守りたいと思ってきた。


 国民の命と私の命を守りたいと思っていた。でも、今はブレイクを守りたいという気持ちが強い。


 頑張っているのに虐げられているなんて悲しすぎるのよ。そんな現実変えたい。

 そのためには追放パーティーに彼の実力を認めさせないといけない。


 中々険しい道のりではある。いつの世も天才は認められないもの。

 本人も力を誇示しようとはしていない。


 それでも破滅を阻止するためにはやるしかないのよ。

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シスコン王子の妹に転生した~彼のせいで国が滅びそうなので全力で阻止します~ 新条優里 @yuri1112

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