第3話追放パーティー

「ブレイクって無能だよな? 早くいなくなってほしいぜ。あいつがいるせいで俺らの取り分が減るってもんだ」


「ああ、まったくだ。荷物持ちさえ満足にできない無能だ。追放するべき人間だ」


 またブレイク追放派か。銀髪ツンツン頭の方はギャレット。

 原作では先陣を切る勇敢な剣士として描けれていたけど、実際は無鉄砲な男である。


 彼もブレイクの魔法で攻撃力や敏捷性が強化されていた。本来のギャレットは只の剣士だけど、ブレイクの魔法で優秀な剣士であると本人やパーティーメンバーが勘違いしている。


 ブレイクが国外追放された後も自分の力を見誤った彼は、無鉄砲に突進する癖が治らず、魔物の手痛い攻撃を食らい続けた。


 もう一人の重鎧を身に纏った屈強な男はハーシェル。

 原作ではそのすさまじい耐久力でパーティーメンバーを守る頼もしい人間として描かれておたけれど、実際は普通の人より少し体格がいい程度だ。


 ブレイクの魔法で彼自身の耐久力が上がっている他に、鎧の耐久力が上がっているため、物理攻撃のほかに魔法攻撃まで耐え凌ぐ。

 そのため彼も自分の能力を過大に評価している。


 原作でブレイクが国外追放になった後、魔族に攻め込まれた際、彼の肉体も鎧も無情にも耐えきれなかった。


 原作の追放パーティーは、勇者であるローランド、上級魔術師のイザベラ、剣士のギャレット、重戦士のハーシェル、回復術士のロザリア、荷物持ちのブレイクで構成されているのだ。


 原作のロザリアはローランドと一緒になってブレイクを無能と罵り、追放しようとするのだ。

 でも、今は私がロザリアだ。そんなことは許さない。


「ギャレット、ハーシェル! ブレイクを悪く言うのは許さないですわよ! 彼にも良いところはあるの。追放するなんて言わないで下さる!?」


「おやおや、ロザリア姫どうしたんだ? あんたはブレイク追放賛成派どころか奴を一番追放したがっていたはずだが? あんな無能早く追放した方がいいぜ」


「ギャレットの言う通りだ。あんな無能がパーティーにいるだけでメンバーの士気が下がる。俺たちは選ばれた人間だ。あいつ一人があるだけでパーティーの平均レベルが下がる。早く追放した方がいい」


 続・悪役転生の洗礼。ロザリアがブレイクを追放したがっていたのは事実。

 その意見を変えるのは不審を招いてしまう。

 それでも、ブレイクの追放には反対するけれど。


 ブレイクのおかげで仮初めの強さを手に入れた分際で何を言ってるんだ、この二人は。

 勘違いも甚だしい。


 ざまぁしてやりたいけど、それでは原作通りの結末になってしまう。納得できないけど、国民の命を救う方が先決。今はそれどころではない。


「まあ、そう言うな、ギャレット、ハーシェル。可愛いロザリアが待ってくれと言うんだ。僕は少し様子を見ることにする。いつか追放するのは決定事項だが、ロザリアの顔に免じて少し待ってくれないか?」


 ローランドが言い放つ。キモいシスコン王子だけど助かった。


「けっ……お姫様に甘いこって。ブレイクみたいな無能を見ているとむしゃくしゃするぜ。早く追放してほしいもんだぜ、ローランドさんよ」


「ローランド、甘すぎるぞ。パーティーにとってお荷物は早く追放するべきだ。後で後悔することになるぞ」


 ギャレットとハーシェルは平民だ。でも、パーティーを組むときにパーティーメンバーは一応同格ということに決まった。なので、口調は砕けた感じになっている。


 二人とも随分好き勝手言ってくれるわね。後悔することになるのは貴方たちよ。

 ブレイクがいなかったら実は凡庸な存在だというのに。


 それにブレイクがいなくなると彼らの化けの皮が剝がれるでけでなく、魔物が攻めてくる。原作ではギャレットは魔物に食われ、ハーシェルは強大な魔物に踏みつぶされた。


 二人の発言はそんな絶望的な未来に近づくものだ。決して肯定できない。


 パーティーメンバーは大体揃ったが、肝心のブレイクがいない。気になったので、ローランドにブレイクの居所を聞いてみることにした。


「お兄様、ブレイクはどちらにいるのでしょうか? 姿が見えませんが」


「忘れたのか、ロザリア? ブレイクは城内に入らせないようにしている。あんな無能、城に入って良いわけがない。今は街で買い物をしている。僕が命じたんだ。旅に必要なものを買いに行かせたんだ。荷物持ちが彼の役割だ。そのくらい出来てくれないと困る」


 荷物持ちを馬鹿にしすぎよ。大事な役割なのに。馬鹿にしているわりには買い物なんてしたことなさそうね。お坊ちゃまだから。


 追放パーティーは城内に集まっている。ローランドがブレイクに城内に入らないように命じていたのね。なんて酷い差別。


 ブレイクも城内で一緒にいられるようにすればいいのに。


「探してまいります」


「あ……放っておけよ、ロザリア。あんな奴どうでもいいだろ。僕たちと一緒に優雅にティータイムといこうじゃないか」


 私はローランドの制止を振り切って城を飛び出した。今は追放パーティーより、ブレイクとの関係を構築する方が大事。そのため、彼の居場所を探すことにした。


 彼の今後の行動次第で国が滅びるか決まる。放ってはおけないわ。

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