第7話『夏祭り』

 夏祭りの夜空には、色とりどりの花火が広がっていた。翔斗しょうとは、友達の海輝かいきと一緒に花火を見上げながら、胸にこみ上げる感情に浸っていた。部活の仲間たちと一緒に楽しむことができる特別な夏祭りだ。


「わあ、すごい! こんなに綺麗な花火、久しぶりだなぁ。」海輝が声を上げる。


「ほんとだね。去年の夏もこんな感じだったかな?」翔斗が答えた。


 その時、海輝がふと何かを見つけたように指を差した。「あの屋台のたこ焼き、食べたい!」


「行こうよ!」翔斗が元気よく答えた。二人は楽しそうに屋台へと向かい、たこ焼きを買って食べながら笑い合った。普段はあまり見られない、リラックスした一面がとても新鮮だった。


「これ、美味しいね!」翔斗がたこ焼きを頬張りながら言うと、海輝が頷きながら言った。「うん、特にこのソースが絶妙だね。」


 その時、遠くから声が聞こえてきた。「おーい、みんな!」振り返ると、南城なんじょう白羽しらはが笑顔で手を振って近づいてくるのが見えた。


「やっと合流できたね!」白羽が嬉しそうに言う。


「今年は部活のみんなと一緒に楽しめて、本当に良かったよ。」南條も同じ気持ちを皆と共有した。


 みんなは再び祭りの屋台を見て回ることにした。金魚すくいや射的、ヨーヨー釣りなど、子供の頃に楽しんだゲームを再び楽しむことができた。翔斗と白羽が金魚すくいに挑戦し、競い合うように楽しむ姿を見て、翔斗と海輝は笑い声をあげた。


「見て、こんなにたくさんすくえたよ!」翔斗が誇らしげに金魚の入った袋を見せる。


「さすが翔斗、器用だなぁ。でも、負けないぞ!」白羽も負けじと金魚を見せた。


 その後、みんなで綿菓子やかき氷を買って食べながら、夏の夜のひんやりとした風を感じていた。翔斗は、友達と過ごすこのひとときを心から楽しんでいた。忙しい日常から離れて、こうしてリラックスできる時間が本当に貴重だと思った。


 やがて、夜も更け、花火大会も終わりに近づいてきた。最後の一発が夜空に打ち上がると、全員がその美しさに見とれた。花火が消え、空には満天の星が広がり、涼しい風が吹き抜けた。


「今日一日、本当に楽しかったね。」翔斗が静かに呟くと、仲間たちも頷きながらそれぞれの思いを胸に抱いた。


「これからも、こうやってみんなと楽しい時間を過ごしたいな。」翔斗が最後に言った言葉が、夏の夜の余韻に溶け込んでいった。


 その後、みんなは帰り道に向かいながら、楽しかった夏祭りの思い出を語り合った。誠が「次はどこで遊ぼうか」と提案すると、みんなの笑顔が一層輝いた。


「海に行こうよ! 夏休みはやっぱり海でしょ!」海輝が提案すると、みんなが賛同の声を上げた。


「それいいね。砂浜でバーベキューとか、楽しそうだな。」翔斗が興奮気味に言った。


 みんなはそのまま夏の計画を立てながら、帰り道を進んでいった。夜風が心地よく、静かな街の中を歩きながら、友情の絆が一層深まっていくのを感じた。


ー「翔斗の家にて」ー


 翔斗と海輝は、しばしの静けさを楽しむように、言葉少なに並んで歩いた。翔斗の家に着くと、玄関先で海輝が「お邪魔しまーす」と声をかけた。


「ようこそ、いらっしゃい。祭りは楽しかったかい?」じいが玄関先で迎えてくれた。


「うん、とっても楽しかったです!」海輝が元気よく答える。


「それは良かった。さあ、疲れただろうから、少し休んでいきなさい。」


 二人はリビングに入り、座り心地の良いソファに腰を下ろした。テーブルの上には、じいが用意してくれた冷たい麦茶が置かれていた。翔斗は一口飲んでから、深いため息をついた。


「やっぱり、家が一番落ち着くな。」翔斗が微笑みながら言うと、海輝も頷いた。


「本当にそうだね。おじいさんのおかげで、いつもここでリラックスできるんだ。」


 じいは二人の話を聞きながら、にこやかに笑っていた。「お前たちが楽しそうで何よりだ。これからも、いつでも遊びにおいで。」


「ねえ、海輝。」翔斗が静かに言った。


「ん? どうしたの?」海輝が首をかしげる。


「今日の祭り、みんなと一緒に過ごせて本当に良かったなって思う。普段は部活や勉強で忙しいけど、こういう時間も大切にしたいよね。」


 海輝は深く頷きながら、「そうだね。特に今年は、みんなと一緒に笑い合える時間が多くて、本当に幸せだと思うよ。」と答えた。


 二人はしばらく無言で、互いの存在を感じながら過ごしていた。じいが持ってきてくれたお菓子をつまみながら、リビングの静けさに包まれていた。


「そうだ、来年の夏も、またみんなで祭りに行こうよ。」海輝が突然言い出した。

「うん、もちろんだよ。来年も、そしてその先も、ずっとこうやって一緒に過ごせたらいいな。」翔斗が笑顔で答えた。


 その後、二人は翔斗の部屋に移動し、祭りでの写真を見ながらお互いの思い出を語り合った。笑い声が絶えず、夜の静けさの中に温かさが広がっていった。


「そろそろ帰るね。今日は本当に楽しかったよ、翔斗。」海輝が立ち上がり、翔斗に手を差し出した。


「こちらこそ、ありがとう。気をつけて帰ってね。」翔斗も立ち上がり、海輝の手を握り返した。


 海輝が帰った後、翔斗はもう一度リビングに戻り、じいと少し話をした。祖父は優しく微笑みながら、翔斗に「翔斗様がこうして楽しい時間を過ごせるのが、じいにとっての一番の幸せです。」と言った。


 翔斗はふと窓の外を見ながら、祭りでの出来事を思い返していた。花火の美しさ、友達と過ごした楽しい時間、そして新たに生まれた思い出。すべてが心の中で輝いていた。

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青年の翼 一ノ瀬 @ichi_0623

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