しっぽ15本目 走れ、唯子!
いい匂いで目が覚めた。おばあちゃんの朝ご飯だ。
「おはよう
いない。先に起きたのかな。キッチンに行ってみよう。あっと、着替えなきゃ。
「おばあちゃん、おはよう。
「ここには来ていないわよ。ペルソナの気配はするから、お座敷にいるんじゃない?」
「あのー。お、おはようございます。ぼくは、どうしたんでしょうか……」
彼が起きてきた。
「おはよう、
「あ、そうか。あれから疲れてしまって」
「おはようございます。
一瞬、誰それ? みたいな顔をして。
「
会っていない。やだ、不安。
「ごめんなさい。説明は
──返事がない。この家には、いない?
「おばあちゃん! ペルソナの気配って、今どこ?」
「どこって。あら? ここ?」
そのペルソナは。
「もしかして、これですか?」
「
それじゃあ
そうだ。確か「許さない」とか聞こえた。あれは夢じゃなかった。まさか、
イヤーカフ! あれを着けて行ったとしたら。
急いで部屋へ戻った。二つのうちの一つが、無い。やっぱり外へ出たんだ。もう一つを右耳に着けて集中した。繋がっているから、これで声が届くはず!
(
返事がない。でも、
これは、相手は
「やはりここにいたのか。マアミ、あれだけの傷を負っていたから」
「力を戻すにはうってつけ。傷も治ったし、大したパワースポットねこの公園」
「
わたしは走って外に出た。二人が止めるのも聞かずに。
「あんた達、狐の獣人になったんじゃなかったの? あの時、呪いがどうとか言ってたわね。それであんな化け物になったのね。どうやって呪いを解いたか知らないけど、一人ずつなら簡単ね。まずはあんたから先に」
「マアミ! きさまは!」
「
叫んだと同時に、目の前が真っ白になった。光の柱。空から落ちてきた。
ドンッ!
「きゃあ!」
音で体が、地面がゆれた。思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
雷と違う。あれは、
「
おばあちゃんが車で追いかけて来た。後ろの席には
「おばあさんから
「二人ともごめんなさい。家を飛び出して。
「これでイヤーカフの結界を追いかけて来たのよ。置いて行ったでしょ?」
おばあちゃんが手渡してきたのはブローチ。
「それにしてもすごい光と音。あれは
結界を?
ドンッ!
車がゆれた。黒い色をした、稲妻のようなものが空へ上がったのが見えた。
これは
「まずいわね。この稲妻と音で人が集まってくる。ペルソナがバレるわ」
公園へ向かう間に、白と黒の稲妻が何度も光って響いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「着いたわよ。二人はここで待っていなさい。先に私が様子を、あ!」
「
「こら! 待ちなさい二人とも!」
──公園の広場は焦げたような匂いと、地面に白と黒の色がところどころに。ゆがんだ大きな花のよう。これも獣人になった時、見覚えがある。
「ひどい。ここが公園だとは思えない」
これが二人の戦い方。白い花と黒い花が重なったその中に
お互いにらみ合ったまま動かない。今、声をかけるのが怖い。
「
ふいに、公園の雰囲気が変わった。これは、結界。
「間に合ったわね。これで外からは私たちは見えないし、入れないわ」
わたしたちに追いついたおばあちゃんが言った。
「おばあちゃんが結界を?」
「ええ。二人とも
「二人そろって来るなんて。あら? 結界を張ったのはそのおばあちゃん? だれ?」
「
(やめてマアミ!)
ドンッ!
ドンッ!
光の柱が、
「
飛び出して叫ぶと、
「お…ばあさん。
「ああ、ええと。
後ろで二人の声が聞こえた。
(
(いえ! 今ここでマアミを倒すべきです。
わたしのために
でも。わたしは二人を、失いたくない。
「あら、獣人になると思ったけどその姿、カワイイじゃない。準備してて良かった」
「?」彼女の言ってる準備って。
「あれ?
「「
わたしと
彼はジャージを着ていて裸足で、髪もボサボサ。まるでさっき起きたばかりみたい。
「ワタシが妖力で
そう言った
彼女はにっこりと冷たく笑って。
(マアミ! やめて!)
メリッ ズブッ
イヤな音と、
彼は自分の胸にめり込んだ手を見て、それから彼女の顔を見て。
声もなくくずれ落ちた。
「あれは……」
つぶやいたおばあちゃんの顔が青い。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます