しっぽ14本目 小さな、お狐様。
「
「おばあちゃま。
「彼が呪いを? なぜ!?」
そういえば、話しを聞かせてほしいって言ってた。怖がらずに、わたしだと分かってくれた。会いに来てくれたのもうれしい……でも、理由なんて言えないし、この姿。
「イヤだ。会いたくない。会えない」
「帰ってもらうわ。
おばあちゃんは彼が待つ玄関へ行った。──長い。二人で何か話しているようだけど。
「帰ってちょうだい!
「いいえ! 帰りません!
おばあちゃんと言い争ってる。なかなか帰ってくれないみたい。会いたい、彼の顔を見たい……。わたしはどうすればいいの。
「
「
わたしは手で自分の口をふさいだ。彼の名を呼びそうになって。
返事をしたい、「
『
「!!」わたしを。
「君はいったい何を? あ、こら! 勝手に」
「
ドアの向こうから優しい声が聞こえる。……
「ありがとう……聞かせて」
「ありがとう……
「それは、わたしも秘密を言えなかったから。でも、先に信じてくれたのは
「……こんな形で確信するなんて。でもね、ぼくは思ったんだ。
わたしは、そんなに強くない。勘違いしただけ。いつも通りの弱いわたしだった。
「ちがうの。
「
「それは、何を言っているの?」
「ぼくは、怖くてできなかった」
石碑の前で言っていた「怖くてできない」……。
「ぼくは、ペルソナに魂を込めることができなかった。それは願うことと、〝約束〟を果たすこと……怖かったんだ。呪いが」
分からない。願いと〝約束〟って、呪いって。思わず立ちあがった。
(なんのことやら。でも
「ありがとう、もっと早く君に伝えていれば。本当にごめん。でもこれがあれば、君を人に戻すことができる。必ず」
彼は深く頭を下げて、黄色いお守りを見せてくれた。
その中からは。わたしがいつも目にしている、今、被っている……。
【狐のペルソナ】
それは、とても小さいけど
「く…詳しく聞かせてちょうだい」
おばあちゃんはすごく驚いて。
「ぼくの家にはなぜか
「もう完成に近い。次は」
「魂を、込めるだけ?」
「そうだよ
信じていいのかな。彼の霊力は弱いはず。この小さなペルソナで、できるのかな。
(
また背中を押してくれた。そうだ、忘れていた。
大好きな人を、信じること。
彼は、わたしが人に戻れることを信じている。だから来てくれたんだ。
わたしも、
わたしは、彼の目を見てゆっくりうなづいた。
小さなペルソナを両手で優しく包んだ彼は、目をつむった。大きく息を吸って。
「
おばあちゃんは見守っている。わたしと
「〝約束〟します!
わたしを、幸せに。
小さなペルソナがポッと光った。わたしがお願いした時よりもっと、もっと強く輝いた。まぶしくて目をつむってしまって。──開いたら、
自分の手と足を見ると、人間の、わたしの手と足だ。顔を触ったら、わたし。それに体。人間に、戻れた。わたしに戻れたんだ!
「「
おばあちゃんと
「
「うわわわわ! 急にそんな!」
「ええと。ぼくはどうしたのかな? ペルソナを被った狐が見える。喋ったし……。ああ
そう言って倒れそうになって、わたしが支える格好になった。
「大丈夫!? ごめんなさい。
「ぼくこそごめん。重いよね。ペルソナを完成させるのがこんなに疲れるなんて」
かなり顔色が悪い。
「いけない。すぐお布団を敷くから
結局、彼を
心配したお母さんから彼のスマホに連絡があって、おばあちゃんが差し障りがないように事情を話した。今、彼は眠っている。寝顔がかわいかった。
「あら、もう十一時。これからのことは明日にしましょう。
「うん。ありがとうおばあちゃん。
──今日一日はいろんなことがあったな。最後は
「あれは告白みたいでしたわ。いえ、プロポーズですわね」
枕元で丸くなっている
あ。
「ねえ
「あ。ええと、ワタクシがここにまだここにいる、となると願いは叶っていませんわ。〝約束〟も有効ですわね。全てが終われば、ペルソナに戻りますから」
あれは告白じゃ、ない。そうか、そうよね。
なにより「好き」ってわたしの方から伝えなきゃいけないのかも。
ちょっとガッカリしたと同時に、ホッとした。わたしの〝約束〟は終わっていない。果たすことができる。これは絶対に守らなきゃ。あとは……。
「わたし、
「あいつの目は憎しみだらけでしたわ。おそらくまたペルソナを、いえ、
やっぱり怖い。それでも
「また失敗するかも」
「……ご安心ください。ワタクシは、何が何でもあなたを守ってみせますわ」
「ありがとう。でも無理しないで」
「
「
「
──ええと夢? マアミ、とか聞こえたような……「許さない」って……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます