しっぽ11本目 第二ラウンド、ファイ!
「ももも
彼が指さした先を見たら。──えっ!?
「「ヒェっ!
二人とも真剣な顔。時々、
「
慌てて両手で口を押さえた。ビックリしすぎて思いっきり
「こ、声が裏返っちゃった。あっ」
向こうもわたしたちに気づいたみたい。ガン見してる。うわっ、
「オマエら! なんで二人でいるんだよ!
ホール中に彼の声が響いた。そこにいる人全員が注目して恥ずかしい。
こっちのセリフよ。勝手に怒ってるし、
「き、君たち、付き合い始めたの?」
「そんなこと、あるルルルがあぁぁぁあ!!」
うえぇ、
すっごいイヤな顔で首をブンブン横に振ってる。ですよねー。
「
〈イラっ〉
なんてこと言いだすの?
「そ、そんなの…
「な!? なんだとこのヤロー!!」
(ヒェっ!
いきなりイヤーカフを取られた!
「返して…返してください。お願いだから」
「イヤだね! こんなもん、捨ててやんよ!」
〈ムカっ〉
「返して」
「はっ!取ってみやがれ」
勝ち誇った顔、バカにした目。いつもいつもわたしの心を引っかき回して、イヤな思いをさせられて……。もう、もうガマンできない。
こんなのに、こんなヤツに!
「返してよ!!!」
「う、ウオっ?」
「みっともないわね。やめなさいよ、嫉妬なんて恥ずかしい!」
彼女が怒ってる。
「ええ、だってよう……」
「
「なんだとぉ!? コラ
「ちょっと!
ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
「君たち、静かにしなさい! ケンカはダメだ!」
職員の男の人が気づいて駆けつけてくれた。良かった、防犯ブザーがあって。
「チッ! このままですむと思うなよ、
走って行っちゃった。逃げたのよねアイツ。みんなに迷惑かけたまま。
「みなさん、お騒がせしてすみません。ごめんね
「あ、ありがとう…平気」
イヤーカフを渡してくれて、
(
(やあね、情けない声。そうやっていつも呼び捨てにしてくれていいのに)
「
わたしが強くなった。そうかな、変われたのかな。うれしい。
「
「な、何?
わたしもびっくり。
「君が何を狙っているかは知らないけど、もう
「あんた、ワタシが
「ワタシ帰る。これで借りは返したわよ
借り? 保健室へ連れて行こうとした時のことか。
わたしにニコってして、チョーカーを撫でながら出口へ向かって歩いて行った。
笑っていたけど口を固く結んで……転校して来た日の目と唇じゃ、ない。
(ねえ
(どことなく、辛そうな。ですの)
「ありがとう
「ダメだったけど。僕は、彼女が心配になってきたよ。何か無理をしているようで」
無理をしている。そうも言えるかも。
「イタっ! 痛い!」
扉を開けようとした
「え?
(助けてあげて!)
またあの声! 今度は、はっきり喋ってる!
「今、ぼくにも聞こえた。聞こえたよ!」
(えええ? ワタクシにはちっとも)
◇ ◇ ◇ ◇
結局、図書館では
「他の方法を探さなきゃ、だね」
家までの帰り道、送ってくれている
「ねえ
彼も同じことを考えてた。息ぴったり、じゃなくて。真剣にならないと。
「
「やっぱりそう思うよね。じゃあ『誰に』言ってるんだろう、と考えたら?」
「大人の女の人の声。それも必死な声。うーん、『誰に』は、ちょっと」
「
『わたしに』『
あれ?
「誰かの声は、『
彼の小さな目が大きく開いた。びっくりした顔もステキ。じゃなくて。
「ぼくに!? なんでどうして? さっき、初めて聞こえたんだよ!」
慌てた姿がカワイイ、じゃなくて。確かに、どうして?
(あの、
(唯子は一途な優しい乙女、だから。それに
はい? おおお乙女? 一途で優しい?
(
(いいえ。あいつを心配して信じていたのは
ああ!
(ワタクシに聞こえないのはあいつを許していないから。マアミ自身に聞こえないのは、ペルソナを奪おうとする悪の心がある。それも必死で余裕がないから。では?)
わたしは
「もし、そうだとしたら。その声はきっと、
わたしたちは月曜日に
本当は、すぐにでも会いに行きたかったけど彼女がどこにいるかさえ知らなかった。
──
「恋とか、
「いいえ
ありがとう、
「ところで
「え? ああ、ええと。なんでもないわ」
手をつなぎたいとか、にぎってくれないかなーとか、にぎってほしいなー。
と思ってたことは、言えない。
◇ ◇ ◇ ◇
今日あったことを話しながらの夕食。メニューはチキンの南蛮揚げにタルタルソースがかかっててボリュームたっぷり。
わたしの話しを聞いてたおばあちゃんは箸を置いた。
「
わたしも
「利用するといっても、ペルソナを奪うためだけよ。彼に取られないようにすれば」
彼も気にしなきゃなんて、ムリめんどくさいし。
「油断してはダメ。それと切羽詰まったら、彼女は何をするか分からないわ」
「おばあちゃまは正しいですの。一番気をつけるのは月曜、マアミに声のことを知らせる時。ワタクシも気をつけますわ」
「それにしても、声はどこから出ているのかしら。
「ええ。ワタクシには聞こえませんもの」
「
変わったことは見当たらなかったけど、ええと。
「
でもそれは、いつものことだし。声が聞こえる前にも。ん?
「そういえば最初にペルソナを狙ってる時、撫でてたっけ。そして胸の痛みと声が」
今日も確か。
「図書館で
もう少し。もうちょっとで何かに気づけそう。
「大いに関係ありそうね。大切なチョーカー、胸の痛み、そして声」
チョーカーを撫でて、胸が、声。……それが二度もあった。
「まさかチョーカー。声を出したのは!
「あ、ありえますわ。チョーカーに
魂。チョーカーに宿る……。彼女はそれに気づいていない。声も聞こえていない。
「
「そうだ、そうよね。それで彼女の動きが止まってしまって」
動きが…止まったんじゃなくて。だとしたら。
「もしかして、止められた? チョーカーに。それに宿る魂が、
「なるほど! それなら辻褄が合うわね」
「そうでしたか! 声が届かないから、力づくでマアミを
二人も分かってくれた。って、こうしちゃいられない。
「このことを早く伝えなきゃ。わたし、すぐお風呂に入って寝る。ごちそうさま」
「ああ
「寝る前に食べ過ぎたら、わたしが太るからダメ」
「ああああ。タルタル、タルタルソースをもう一回ペロリいいいい!」
「上よりも前後左右が大きくなるのはイヤ」
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