しっぽ5本目 オレ様と王子様。わたしを探さないで!!
「行ってきます。おばあちゃん」
ゴールデンウイーク明けの火曜日。今日からまた、学校が始まる。
おばあちゃんから、玄関でイヤーカフを受け取った。
「行ってらっしゃい。
「お任せください、ですわ」
これは
わたしなりの感謝の気持ち。これで、変な
でも結局、イヤーカフはわたしの左耳に着けることになった。
「ステキね。よく似合ってるわよ、
「不満。わたしより銀子さんのほうが似合ってステキよ、きっと」
「今日からよろしくお願いいたしますわ。
◇ ◇ ◇ ◇
(いよいよですわね)
(はい。もうすぐ、わたしが通う
わたしたちは頭の中で会話をしている。姿が見えない
(楽しみですわ
わたしの方がドキドキ。今日、告白するんだから。がんばれェわたし。
(ところで。告白計画はどのようになさいますの?)
告白計画って。なんて壮大な…そうよね。わたしにとっては一大プロジェクト。
(おばあちゃん情報によると、
(ああ。ワタクシが〝約束〟した場所)
おばあちゃんも毎日のように石碑へ行ってる。同じベンチに座っているのをよく見かけたと言っていた。彼の写真を見せてて良かった。
──もう校門の前……。
((スーーー。ハーーー))
「だ、ダメ。落ち着かない(……ですわ)」
生徒用の玄関から入って二階のわたしのクラス、五年一組の前まで来た。
(たくさんのお子が目の前にニニに! ワタクシ、死ねる。ですわ)
「なんでやねん。
あ。声を出しちゃった。
「よう、
「「ヒエぇぇぇ、いきなり」ですわ!」
聞かれた。いちばん会いたくない人に。
「なんだ? 変な声出しやがって」
(ゆ、
キリッとした二重の目。髪はバランス良くハネさせてる。
(
(お顔面の無駄使い。なオレ様ですわ……)
的を射る表現。うまいこと言っちゃって。って
(イヤすぎますの。ワタクシは貝になりますわ。引っ込み思案ですから引っ込みますわ)
えええ、そんなあ。独りなんてムリこわい。
「なんだ、その耳に着けてるやつ。変だな! オレがもっと良いもん買ってやるよ。今日の放課後、デパートへ一緒に行こうぜ!」
ムリこわい。
今日は
「い、いえ。い…イイです……」
「おう! 良いんだな! じゃ、迎えに来てやるからな! 絶対だぞ!」
なんでそうなるのおおぉっ。
謎の勘違いいい! からの上から目線!
「
「なんだ、
(この方が
〈イラっ〉
今、イラっときた。なんかイラって。褒めてないでしょソレ。貝になってたくせに。
イケメンじゃないかもしれないけど、わたしの王子様よ。
「
「ナンだとぉぉぉお!?」
「出て行きなさいよ。イヤーカフ、ステキじゃん。あんたのセンスが最低なだけよ!」
「ぼくも似合ってると思う。
「「「そうだそうだ!」」」
みんなもわたしをかばって……。
これってペルソナのご利益?
「ほんっと、サイテー」「
「グヌヌ。そんなことないよな? な!
みんなが助けてくれてる。わたしが、わたしがハッキリしないと!
「イヤです……わたしは、イヤです!!」
言えた!
「ナンだおまえら、いつもと違うぞ。フォおおおおおお! 覚えてろ!」
やっと行ってくれた。はっきり言うことができたのはやっぱり、ペルソナのおかげ?
(
イヤ! それだけは絶対に、イヤ! ムリこわい!!
彼がいなくなったとたんに貝を開くなんて、
「みんなが助けてくれて良かったね
良いこと、かもしれない。ペルソナにお願いできたし、銀子さんも応援してくれてる。
でも、あああ。どうしよう、なんて返せば。何も言わないなんて失礼になる。
(
そ、そうよね。今こそ勇気よね。だ、大丈夫かな。上手にお礼、言えるかな。
「あ、あの、…その、あ…り……」
「アリ? アリがどうかした?」
思うように口が開かない。なんとしても言わなきゃ。がんばれェわたし。
「
な、なんとか言えた。
(え? なんですって? アリが十匹ですの?)
「アリが、
ザワザワザワザワヒソヒソヒソ
「
あああ、恥ずかしくて顔が熱い。
「わたしを……探さないでくださぁぁぁああい!!」
「え?
ザワザワザワ
「走って出て行った」「
「「「なーぜーー?」」」
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