しっぽ2本目 『狐を被った狐』と書いて『妖狐』と読む。
わたしと狐はお互いに黙ったまま。襲っては来ないけど、どうしよう。
「あ、あの…その、わわ、ワタクシをお呼びになられらっっ! ハウッ!」
あ、今舌かんだ。痛そう。オドオドしながら無理して喋ったからかな。
なんだか、かわいそうになってきたな。
「ひひ、ヒツレイいたひまひた。
わたしの名前。ああ、お願いする時に言ったっけ。ちょっと身を乗り出したら。
狐が顔をそらした。わたしみたい。ビクビクしている様子も同じ。
わたしも、人と目を合わせたくないから。勇気を出して聞いてみよう。
「あの、あなたは……誰ですか?」
「ワ…ワタクシは、
狐を被った狐がヨウコ……
「
「…………」
答えてくれない。ペルソナで見えないのかな。でも、さっきはこっちを向いていたし。
「あの。わたしのこと、見えてます?」
「し…しっかり見えておりますの。心の目で。見るんじゃない、感じるんだ! ですわ」
いきなり古いギャグ。がんばって笑わそうとしているのかな。
「それ、なんてコント?」
「なんでやねん。ですわ」
つっこまれた。こんなことするなんて、本当に引っ込み思案?
「では
急に黙っちゃった。
「ももも申し訳ありません。わ、ワタクシ、緊張しておりまして。人様が苦手でして」
ドン引き。
あれ? わたし、ムリこわくなくなってる。不思議。
「だ、大丈夫だから。横向いたままでも、気にしませんから。あの、
わたしが先に出てみせた。
お
「あ…ありがとうございます。では、横を向いたままで。えー、
はい?〝約束〟? お願いと同じ価値のもの? 与える?
ポッカーンとしていたら、こっちを向いた。
「あ、あの。あのう……
「多分…忘れています……わたしが(汗)」
ちゃんと聞いておけばよかった。
「ふぅー。よろしゅうございます。教えて差し上げましょう」
痛い。
それに、強気になってる。謎の上から目線だ。
「お願いして「あとはよろしくね」。ではいけません。同じ価値とはつまり、
「お
「ヨヨヨ。
またコントっぽくなってきた。困る……急には思い浮かばない。
「あら、お困りのようですわね。では、ペルソナにお伺いしましょう」
ペルソナに伺う? 答えてくれるの? お面なのに。
「ペルソナの魂がワタクシに教えてくださいますの」
ペルソナの魂……。心を込めて
その魂が教えてくれるって。喋るのかな?
「あの、
「いいえ。魂からの言葉が頭に浮かぶのでございます。ワタクシからはお声をかけることはできません。少々お待ちください。──あら? あらら、らぁー?」
「あの、その、ワタクシの……は、初恋の人、〝
初恋の人……。あら、肉球で顔を隠しちゃってカワイイ。恥ずかしかったのね。
って! はいい!?
「よ、四百年前の狐を探すなんて、生きていません。ムリこわい」
なに言ってんの、この
だいたい、
「あの、
最初からそう言ってほしい。って! 狐が人間を好きになる!?
「
「
「それが、なんとも……。お子様が一人いらしたことは知っておりましたけれども……」
子孫の人、今もペルソナを
探すのはちょっと難しいかな。だけど、わたしの恋のためよ。
「分かりました。必ず、探し出して見せます」
「ほんとにホント? ですわ」
念を押してる?
「本当にホント。です」
「……これで、〝約束〟は成立しましたわ。
「「え?」」
わたしと
「「ヒエっ、なんか顔!」ですわぁ!!」
モヤモヤの中に歪んだ目と鼻と口とととー!
これはおばあちゃんがいつも言ってた、
[ペルソナヲォクレェェーー]
ペルソナをくれ? 気持ち悪い声。ムリこわい。
「ぺぺ、ペルソナの霊力を奪いに来たのですね? だだダメですわ! ああ
「
ぶつかる直前で思わず目をつむって、──ゆっくり目を開けたら。
「あら、いない?
(
え? わたしの頭の中から声が。響いてる。え?
(あのお、申し訳ございません。恐ろしくて……
「なん…だと。いやイヤいや、なに言ってんのぉ!?」
(スススすみませんスミマセン! ワタクシ、どーしても恐ろしくて!)
そんなぁ。分かるけど、怖いのは分かるけどわたしの中に逃げるなんて。
[[[クレェェぇえ! ペルソナァァぁあ!]]]
と思ったとたんわたしは、空にいた。確か、怖くてしゃがんだはず。
なんで? 下を見ると。うわぁ、
「「やだキモい。ムリこわい!」」
(
わたしたちは、あちこち
ようやく逃げ切ったと思った、ら。
「
おばあちゃん! バレたんだ。わたしを探しにここへ。って、わたしが
それにぶっ飛ばすって、それって切るやつ刺すヤツ。包丁!!
ムリこわくて顔を両手でおおったら。あれ、ペルソナ? と、とにかく!
「おばあちゃん! わたしはここよ! 目の前にいるじゃない!」
「お…お久しぶりですわ、
えええ。わたしの口から
「
ああああ。は、早く説明しないと。
「あのね、おばあちゃん。神社でお願いしたら
「落ち着いて。ペルソナと〝約束〟してしまったのね。で、
わたしは思いっきり首を縦に振った。早く包丁をしまってほしい。
「ペルソナの気配が無くなって、
光ってる、尖ってる。よく切れそう、って包丁で?
「ああ。包丁を〝結界〟にしたのよ。
結界? 包丁で? 何ソレ
「それで顔だけが
狐、
「みみ、わたしの耳! 頭の上にある! ペルソナ被ってる!」
「何ということでしょう。け、『ケモ
腕と足をみたら。肘までと、太ももの途中まで毛が! それに!!
「赤い! 白い! 毛深い! 肉球! しめ縄みたいなしっぽ! 先っぽ赤い!」
「ふ、フサフサでプニプニで、も、モフモフですわ」
「
「ぞ、ゾゾゾ存じ上げません、ですわワワワ!」
「そもそも、わたしがケモ
「だから落ち着きなさいって。それにしても、ハキハキとしゃべるようになったわねえ。とにかくこれを髪に着けなさい。結界で人には見えないわ」
わたしが趣味で作ったヘアクリップ? 言われるままに自分の髪に着けた。大丈夫かな。
「ところで
うっ。今、聞いてくる?
ケモ
わたしは、下を向いて恐る恐る。
「こ、恋が……叶うお願い。です。相手は、クラスメイトの
おばあちゃんの顔をチラッと見ると。こめかみを押さえて、眉間にしわ。ムリこわい。
「
覚悟? 〝約束〟に? おばあちゃん、どういうこと?
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