ペルソナの九尾 * 恋と勇気と友情で! わたしはペルソナの九尾になって、みんなを守って願いを叶える!!
左近ピロタカ
しっぽ1本目『お狐様』に願いを!
わたし
パパ、ママ。本当にごめんね、引っ込み思案なわたしで……。
ムリこわい。知らない学校へ転校するなんて。
「
ゴールデンウイーク最後の朝。
十歳で小学五年生で情けないけど、新しい学校で知らない人と話せない。
今のクラスのみんなとでさえ、話すのムリこわいのに。
なんにも気にせず話せるのって、パパとママとおばあちゃんだけ。
「……ごめんねパパ、ママ。一緒についていけなくて」
「いいんだよ。
「そうよ。それにこの家の、
「うん……。ママ……」
「パパとママの方こそごめん。転勤の準備で、ゴールでウイークはどこにも連れて行ってやれなくて」
「いいの。家にいるのが安心だから……。知らないところって、ムリこわい」
「そうか……。それじゃあ、行ってくるよ母さん」
「お
「ええ。向こうに着いたら、すぐ
──行っちゃった。二人の乗った車がもう、あんなに小さくなって。
今日から、
「赴任先は遠いわね。でもびっくりしたわ。
自分でも驚いてる。そんな勇気がどこにあったんだろうって。
きっと……好きな人に告白しないまま、この町を離れるなんて絶対ムリ、イヤだから!
やらなきゃ。今夜こそおまじないを、お願いを。
昔から
だって、わたしだもの。引っ込み思案なわたしは、ペルソナに頼るしかない。
『クラスメイトの
「さて、お買い物に行ってくるわ。今夜はご馳走よ。お留守番、お願いね」
「うん…ありがとう、おばあちゃん」
おばあちゃんが出かけた。ご馳走の材料を買うなら遅くなるはず。今のうちに!
わたしは急いでリビングに行って、テレビボードの中を探した。
あった。クッキーの青い缶。そっと取り出してフタを開けて。それは、シルクに大事に包まれている。傷をつけないようにゆっくりとはいだ。
何度か見たことがあるそれは、下あごが無いだけの、狐の顔そのままだ。銀色みたいな白、耳の中と先っぽが赤くて。赤いアイラインがある目はつむっている。不思議。
まつ毛が長くて女の子みたいな顔、のペルソナと一緒に姿見の前に立ってみた。
……鏡の中にいるのは、いつものわたし。
肩までのストレートの黒髪。両耳を出すために趣味で作った髪飾りを挿している。
眉尻は少しだけ下がってて自信のない目をして、いつも何かに困ってるような顔。
思わずわたしは、ペルソナを被って顔を隠した。
ペルソナの目が開いてないから、何も見えない。
「お願いしたら、告白する勇気がでるかな。ほんのちょっぴりだけでも……」
おばあちゃんに、「恋を叶えるために使いたい」。って言ったら、叱られるんだろうな。
そんな軽いお願いはダメって。叱られるの、ムリこわい。
でも、仕方ないよね。わたしの人生がかかってるんだもの。こっそりとお願いして、すぐにまたここに戻せばいい。勝手に持ち出すのもダメだけど。
でも、なんでクッキーの缶に入れてあるのかな? 本当は
◇ ◇ ◇ ◇
夕ごはんの後、ペルソナを隠したリュックを持って神社の入り口まで走って来た。家のすぐ近くにあるから歩いても五分とかからない。
石段が真っ暗。両側は星空が見えないほど木が茂ってて黒いトンネルみたい。
ライトで照らしても怖いな。でも、恋を叶えるためよ。
そうだ。
この春に同じクラスになった時からずっと。だから好きになった。
明るくて背が高くてちょっとクセ毛で。ニコニコしてて。大きい黄色のお守りを持ってる。それから、それから……ってもう
暗くて誰もいなくてシンとしてて。風の音と木のゆれる音だけが聞こえる。
注意して狛犬の間を抜けて、お
大きな鈴を鳴らして。たしか二回お
ジャラン ジャラン ぺこり ぺこり パンッ パンッ
「
念入りにお願いして、最後にもう一度お
早くペルソナを戻さなきゃおばあちゃんにバレちゃう。──って?
「あれ? ペルソナって、こんなに明るい白だったかな」
違う。光ってる! 光がだんだん強くなって。あ、あああ……。
「ワタクシを呼んだのは、あなた…?」
ペルソナが喋った! ペルソナから、
怖い、ムリこわい! わたしは逃げた。ペルソナをそのままにして。
「なんで狐のペルソナから、狐が生えてくるのよ! ムリこわい!!」
「あああっ! おおおっ! お待ちに! なってくださいましぃいい!!」
わたしが狛犬の間を走り抜けようとした時。変な日本語が
思わず狛犬の陰に隠れてしまって。ムリこわいけど、そーっとのぞいて見ると。
ペルソナを被った白い狐が、お
その姿を見たら、逃げようとは思えなかった。ムリこわいけど。
なんか、隠れているようで。ひどく怯えているようで……。
ペルソナごとプルプル震えているから。
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