第10話 ありがとう

「防犯カメラの映像よ」


凛桜がテレビで流したのは防犯カメラの映像だった。


どうやって入手したのかは分からない、でも多分恭介さんの伝であることは間違いだろう。


「再生するね」


「ああ、分かった」


動画が始まると、直ぐにに茶髪の女の子が歩いてきた。


顔的に凛桜だろう。


そしてその奥か中学の時の俺が走ってきて、凛桜の背中を押した。


その直後、さっきまで凛桜がいた所に棒状の物が落下してきて俺の肩に刺さり、棒と俺が一緒に倒れた。


そして血がじわじわ地面に広がっていく。


動画はここで終わった。


「あ、ああぁ」


俺はこの1分足らずの動画を見てあの時、あの瞬間の出来事を全て思い出した。


ーーーー


あの時の俺は暇つぶし程度に散歩に出ていた。


そしてあの茶髪の子、凛桜を見たのだ。


しばらく歩いていると、工事しているビルの真下に来ていた。


相変わらず茶髪の子は俺の前を歩いている。


俺は遥か上でショベルカーが動いているのをぼーっと見て


(どうやってあそこに重機持ってってるんだろうな〜)


などと考えていた刹那だった。


上から鉄パイプが何本か、滑り落ちてきた。


そして、その内1本が、その茶髪の女の子の真上に落ちてきている。


「危ない!!」


そう叫んだが、俺の声は茶髪の女の子には届かなかかった様で俺の方を見ぶきもしない。


そこからは、反射的な行動だった。


目の前の女の子を鉄パイプの落下地点から押し出そうと走った。


そして俺は、鉄パイプ落下直前で女の子を押し出す事に成功した。


その女の子は戸惑った表情で俺の方を振り返り、俺を不思議そうな表情でみた。


(やった…)


そう思った直後、肩を凄まじい衝撃が襲い俺は意識を失った。


ーーーー


「思い出した?」


「ああ、全部、だ」


俺があの時助けたのは凛桜だったのか。


こんな奇跡あるもんなんだな。


助けた女の子が、同じクラスで隣の席の女子だったなんて。


「あの時お礼できなかったから今、言うね、豹舞君、助けてくれてありがとう」


そして泣きながら凛桜が言った。


「好きです、これから偽物じゃなくて本当の彼氏になってください」


「ああ、これから本物の彼氏としてよろしく」


そして俺は凛桜の頭を抱きしめた。


ーーーー


「やっと思いを伝えられたんですね、凛桜様」


「ええ、やっと伝えられたわよ、立花」


豹舞の去った更衣室で、凛桜と立花が話をしていた。


「いつになったら思いを伝えるのかとヒヤヒヤしていましたよ」


「なんでヒヤヒヤする必要があるのよ!」


「この計画の為にかけた手間と費用をご存知ないですか?」


「うっ、それは……」


ハッカーを雇って、豹舞、啓太のスマホのIPアドレス、本体情報と個人情報を抜き取り、2人にしか表示できないアルバイトをサイト内に作る。


防犯カメラのデータを抜き取る。


そして本体情報、個人情報、防犯カメラのデータを抜き取った際の証拠隠滅。


2人にしか表示出来ないアルバイトを作成していた際、サイトの一時的な規制の時に出た損失。


「確かにとんでもない金額を使っているのは分かっているわ」


「とにかく、思いを伝えられて、恋まで成就したんですから、本当に良かったですよ。


ただ、早まらないで下さいね。


猫壱家の人間が高校生ながらに妊娠したなんて事態になったらそれこそ笑えませんから」


「余計なお世話よ!」


立花の揶揄いに少しムッとしつつ、それでも花の様な笑顔で凛桜は脱衣所を出て行った。



後書き


正直、付き合った後の豹舞と凛桜のイチャイチャを書きたかったのですが、文字数が許してくれないのでこれを最終話にしたいと思います。


ここまで読んでくれた読者様、ありがとうございました!


それでは!また縁があれば!

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お世話してっ!!〜私生活のお世話として偽装彼氏を命じられた件について〜 キロネックス @kironekkusu2007

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