第19話【甘い】

「お兄ちゃん、まだー?」

「んー、もう少し」

うう、髪型が定まらない…。

普段、セットなんてしないから当然か…。

「…こんなもんかな…。準備できたぞ!」

今日、俺と千歌ちかはライラさんのお母さんの退院祝いパーティーにお呼ばれしていた。

家族水入らずの場に、本当にお邪魔していいのかなとは思ったが、折角のご厚意こうい無下むげにするわけにはいかない。




「うわ~!すごい!ここがお姉ちゃんのおうちなんだ!」

「うん、庭に来るように言われてて…、えっと…こんにちは~!あ、こんにちは!紗菜いさなさん」

「あら、こんにちは。…蕾来らいらちゃ~ん、猫成ねこなりくんが来たわよ」

「は~い、…茂道しげみちくん、いらっしゃい、久しぶり!千歌ちかちゃん!」

先週、先生の気まぐれで席替えが行われた。

俺とライラさんは隣同士ではなくなったので、なんだか久々にまじまじと顔を合わせたような気がする…。

「ライラさん、今日は誘ってくれてありがとう…。って、紗菜いさなさんに言うべきかな?」

「姉貴のことは気にしないで、PINEのこと全然、許してないし」

PINEのこと…。

紗菜いさなさんが、ライラさんの水着写真を送ってきた件か……。

……。くっ、忘れるんだ、俺!

「こ、こんにちは~!!」

「ん、来たか」

その声の主は意外な人物だった。

夏梅なつうめさん!?」

「あ、ね、猫成ねこなりくん…。えへへ…なんか、まだ気まずいや…」

「あたしが呼んだんだよ、果耶かや、あんたもお母さんのこと心配してくれてたからね」

「う、うん、ありがとう」

「あのお姉ちゃんが、お姉ちゃんのお姉ちゃんでこのお姉ちゃんがお兄ちゃんの友だち…?」

千歌ちか紗菜いさなさんと夏梅なつうめさんに会うのは今日がはじめてだ。

「そうよ、宍嶋しししま紗菜いさなです。よろしくね…千歌ちかちゃん」

「うん!イサナお姉ちゃん!」

妹の最強ランクコミュ力が大活躍だな、これは。

「…え、かわいい…。かわいいんだけど…。ち、千歌ちかちゃんって言うの?…私の家に来ない…?ぐふふ」

「行かせないよ?!」

果耶かや…あんたさぁ…」

「か、考えとくね…カヤお姉ちゃん」

俺、千歌ちか、ライラさん、紗菜いさなさん、夏梅なつうめさん。

あれ?誰か、忘れてるような…?

「あら!いらっしゃい!茂道しげみちくん、千歌ちかちゃん、それに…果耶かやちゃん!」

そうだった、今回のパーティーの主役は宍嶋しししま家のお母さんだ。

入院してたときよりも血色が良くなっている、よかった!

こうして見ると女優さんみたいだ。

…この人の遺伝で美人姉妹が誕生したんだな…。

「この前はどうも…、退院おめでとうございます!」

「お姉ちゃんのおかーさん?」

「光栄です、お母様…。なんでも命令してください!!」

夏梅なつうめさん、外堀そとぼりから埋めようとしてる?

「……ねぇ、お母さんは猫成ねこなりくんって呼んで」

「なんでよ~」

「いいから!!」

「え~、……あー、そういうことね。うふふふ」

茂道しげみちくん、千歌ちかちゃん。はい!お皿!」

「ありがとう、ライラさん!」

「焼けてきてるから早速食べましょ、まずは北海道の農家の熊吉くまきちさんが友人のよしみで送ってくれた野菜から」

「…紗菜いさなさんの交遊関係すごすぎない?」

「姉貴はズル賢いんだよ」

「あ~蕾来らいらちゃんのぶん、減らしちゃお~」

「…!宍嶋しししまさん、私のぶんも食べていいからね!!あ、あ~ん」

「…っ!はいはいありがと!」

うっわ、尊い光景を目にしたな、今。

果耶かやちゃん、あたしには~?」

「お姉様…!!あ、あ~ん、きゃ~!!」

「あのバカ姉貴…!」

紗菜いさなさん、いたずらっぽい人だなぁ。

千歌ちか、おいしい?」

「うん!!この野菜甘いよ!!」

「…茂道しげみちくん、ちょっと来て」

ん?ライラさんに庭のすみに来るように手招きされている、なんだろう?

「どうしたの?」

「……ほ、ほら、あ~ん」

「ラ、ライラさん?!」

「あ、あたしたち、…好き…同士だし」

「な!?」

「…っ、た、食べてよ、冷めちゃうでしょ」

「そ、そうだね!いただきます!あ、あ~ん…ん!!」

千歌ちかの言ったとおりだった。

この野菜、今まで食べた中で一番甘い。





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君との出会いで色づいた。 とりどり @ru_ruru

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