最愛
あの騒動から一年が経った。
あの後、玲奈達は、龍神の伝説を捻じ曲げた事、私に無実の罪を被せ、巫女の名と異能を奪った事と先代の巫女であるお母様を殺したという真実が知れ渡り村民の怒りを買いお父様とお継母様は追放、玲奈は牢に入れられたそうだ。
宮司の仕事も神社の権利も、玲奈達に楯突いたことで追放されていた和正のお父様のお兄様に譲渡されたそう。もう和正が宮司になることはないらしい。
ゆっくりとだが村も元の姿を取り戻し始めている。
今まで癒しの異能の施しを受けれなかった人達にも行き渡るようになった。
玲奈にかかった呪いは、蛇の痣だけでなく、痛みと悪夢を見せているようだ。牢の中にある玲奈はいつも泣いているらしい。
ちなみに私はまだ呪いを解くつもりはない。心の底から反省し、分け隔てなく人やあやかしを助けるような人になったら解いてやろうと考えている。
(あの性格じゃ無理ね)
きっと、私の見えない場所で生きている筈。私に対して恨み言を呟きながら。
「私は悪くない!!全部お姉様のせいなのに!!私が龍神の巫女として相応しいのに!!どうして!!どうしてなのよぉーー!!!!」
此処にいない筈の玲奈の声が聞こえた気がした。多分、何処かで叫んだのだろう。呪いの痛みに苛まれながら。
けれど、もう私には関係ない。全て彼女達が蒔いた種だ。自業自得と言えよう。
それに私の今の家族はこの素敵な屋敷にいる。
龍神の信様やつららちゃんや紅葉くん、そして、この屋敷で働く妖の子等。
玲奈達には何度も殺されかけたけれど、彼に巡り合わせてくれた。そのことだけは感謝しよう。
「陽子」
屋敷の自室で思いにふけていると愛おしい声が背後から聞こえてきた。
信様が後ろからそっと抱きしめてきた。私は少し驚いたけど、すぐに嬉しさに変わる。愛おしい想いで彼の腕に触れる。
「どうしたんだい?」
「フフ。信様の事を想っておりました」
「どんな事?」
「あの白鷺が貴方でよかったって。後、ずっと私を愛してくれた事を」
「……でも、僕はすぐに君を助けてあげることができなかった。そのせいで君はアイツらに傷つけられ続けた」
悲しげな表情を浮かべる信様の方に身体を向け、ぎゅっと彼を抱きしめた。
「でも、貴方は私を見つけ助けてくれた。ほら、私はちゃんと貴方の胸の中にいる。巫女として、貴方の妻として…」
「陽子…」
信様は私の頰に手を添えて、自分の唇と私の唇をそっと重ねる。私はその口付けを受け入れる様にゆっくりを目を瞑った。
信様との幸せな時間はとても静かで素敵な満月の夜だった。
ずっと続いて欲しい。いつまでもずっと。全てを奪われ、傷ついた私がようやく掴んだしあわせな時間。
私はそう願いながら信様に身を任せた。
そして、寒い冬が過ぎ遂に春が来た。一年前からずっと待ち侘びていた事だ。
沢山桜が咲き誇るあの場所で信様と婚姻の儀を挙げている。
つららちゃんや紅葉くん、屋敷で働いてるあやかしに囲まれながら幸せな時を噛み締めていた。
赤い花柄の色打掛を着た私は桜色の花びらの雨を愛する龍神の夫と共に眺める。
初めてここに来た時に見た桜よりも美しく映っていた。
幸せすぎて少し怖くなってしまう。
「信様。私、こんなに幸せでいいのかしら」
「いいに決まってる。もう苦しみなんかない。これからの陽子の人生は幸せだけだよ」
「それは信様も同じですわ」
怖気付く私を信様は優しく寄り添ってくれた。
玲奈に全てを奪われた時の私には想像できなかった未来。
愛する人に裏切られた離縁された私は、龍神という高貴な人に助けられ全てが変わった。
白鷺へと姿を変え、ずっと私のそばにいてくれた私の愛する人。
「愛しています。信様。ずっとそばにいさせてください」
「僕も愛してるよ。陽子。絶対に離したりしないから。僕の愛しくて可愛い花嫁」
誓いを交わし私達は口付けをする。
私の髪にささっている紅珊瑚の簪が私達を祝福する様に桜と共に美しく輝いていた。
白鷺と銀の龍神の最愛 テトラ @onkenno
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