0の発見

ヤマシタ アキヒロ

第1話

  0の発見



世界人口を80億だとすると

自分の存在はその80億分の1


80億分の1というと つまり ええと……

ほとんど0に近い


いっそ0でもいいのではないか

ある日私はそう考えた


人生も半ばを過ぎた

ある秋の夕暮れである


自分という存在は0である―――


そう考えた途端

私は急に肩の荷が降りた気がした


自分はちっぽけな存在

いや そもそも「存在」ですらない


0に何を掛けても

プラスにならない代わりに


0に何を掛けても

マイナスにはならない


失うものがない分

それ以上不幸にはならない


何も期待しない分

すべてが丸もうけである


ご飯を食べて

美味しいと思うことも

漫画を読んで

笑い転げることも

旅行をしたり

絵を描いたりすることも


人生のすべてが

おまけみたいなもの


自分が0だと考えることは

ちょっとさみしい気もするけれど


それと引き替えに

私はとても自由になった


聞くところによると

これは仏教の考えにも似ているという


もしそうならば 100人力だね

100人力は 0人力でもあるのだけれど


                    (了)

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0の発見 ヤマシタ アキヒロ @09063499480

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