さよなら、そして希望のある世界へ。
@Otonenon
第1話 旅立ち。そして、さようなら。
星が綺麗に輝いている。そんな夜に僕は家をこっそりと出る。息を殺し階段を一段一段降りる。一階の両親はもうとっくに寝ている。最期この家の空気を、目一杯吸う様にゆっくりと玄関の段差に腰掛け靴紐を結ぶ。隣の父の黒い革靴が擦りガラスから入る月明かりを反射する。それを、僕は美しく思った。
少しばかり、重い足取りで靴底を少しすり減らすように歩き決して音が鳴らように鍵を開けた。扉をゆっくりとスライドさせて、自分が出られるスペースを確保したと思ったら、素早く体を横にして家を出た。そして、静かに閉める。
二、三歩進んで後ろを振り向き、家を見上げる。見上げた先には、星が輝いていた。こんなにも、美しい物だったのかと、僕は思った。何気なく過ごしていた日々が甦ってくるからだろうか、どこかこの景色は、かけがえのない大切な物に思える。
外は、まだ少し肌寒い。最近は、暑かったのだが今日は特別。そんなことは、どうでもいいのだけれど、最期だから。
家と夜空の景色を心にしまう。僕は、歩みを進め始めた。
どこに向かっているのか。目的は、一つ。星の岬だ。星の岬には、いろんな噂がある。
「そこに身を投げれば星になれる」
「罪が許される」
「逃げてきた人はそこに行き着く」
だとか。とても、くだらないだろ。みんな、そう言う。でも僕はそれを目指す。
星の岬は、世界の最果てにあると言われている。場所は、分からない。でも、望めばきっといつか現れるそんな場所なんだそう。そして、そこから星は生まれ宇宙に旅立つ。いわば、星の出発地点だ。そこから、出発した星達は、永遠と宇宙を旅し続ける。でも、永遠と言っても寿命があるそうだ。それは、僕も分からない。でも、きっといつか分かる。そう確信している。
だから、僕は海を目指そうと思うんだ。
さよなら、そして希望のある世界へ。 @Otonenon
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