第31話 魅了しました。

 で、何で結界に毒をつけたかというと。


 ……アンナさん、浮気じゃないからね! あと情けないこと言うけど絶対に守ってね!


【はい、絶対にお守りします】


 大丈夫、結界は★2つになったし、今は魔力も充分にある。何よりボクにはアンナさんがいる!


 大丈夫、と自分に言い聞かせつつ、葉っぱの上の方まで上る。世界は相変わらず大きくて、背の低い草がまるで木のように並んでいて、木はボクの視界には入りきらない。ボクは成長したけど、まだ若齢幼虫だと思い知る。


 ああ、ちっぽけなボク──、なんて自然の雄大さに無力感と感動を覚えている暇はない。上の方の葉っぱなんて目立つ場所に来たんだから、さっさと用事を済ませなきゃ!


 丁度良いところにハチが飛んでいた。1匹だけかな、ということは偵察係なんだろう。毒は効かない可能性の方が高いかも知れないけど折角取ったし、効けば儲けものだと思うことにして、結界と付与の魔法はそのまま続行。


 深呼吸して、いざ──!


 《 魅 了 》


 アンナさん以外に初めて魅了魔法を使うけど、効果はドン引きだった。ハチはボクに気づいた途端、突進か!? と疑う勢いで突っ込んできて結界にブチ当たり、そのまま結界を食い破ろうと噛り付いている。とってもコッワぃ!!


【鑑定中──、結果を表示します。魅了の対象にしたハチには天羽様は極上の食餌に見えているようです】


 だろうねぇ、働き蜂に繁殖能力はないし、今のボクは幼虫だし。……、え、幼虫なのに性的に見られる可能性が消えてない、ってこと!? 何それある意味で目の前のハチよりも恐い!!!! ネジレバネ!? ネジレバネ的なやつなの!? い、いやぁああああああああ!!!! 痛いのも死ぬのもいやぁああああああああああああ!!


【ネジレバネに類する生物は発見次第に即時で殺すとして、私が、恐い、でしょうか】


 あ、違うよ、アンナさんは別、っていうか、光源氏計画みたいなもの、っていう理解だし、大人になるまで清い関係でいられる、って信じてるし。そもそも原因がボクだし。


【天羽様……!】


 まぁ、敗色濃厚っていう別の恐怖は消えてくれないんだけどね、何か良い手立てはないかなぁ。


【諦めていただくのが最も手っ取り早い方法になります】


 最後まで諦めずに足掻くのは大事だと思います!


 さて置き、目の前っていうか結界に齧りついているハチです。目を向けると昆虫のどアップが見える、目を背けてもめっちゃ羽音がする、という巨大昆虫の恐怖から逃げる術がありません。というわけでアンナさん、早速ですがお願いします。


【探索中──、結果を表示します。このハチが誘引フェロモンを使ったのか、他に数匹のハチが接近中です】


 アンナさんの対策候補は?


【敢えて範囲内に引き寄せ、水を撒き、凍らせて全滅させます】


 じゃあそれで。結界内のボクに害がない程度にお願いね。


【畏まりました】


 あああ、確かに羽音が大きくなってる、ってことは確かに他にも同じハチがいるぅ……、こわいぃ……。


【天羽様を怖がらせるなど万死に値します】


 ぱしゃん、と軽い水の音の後に、嘘みたいにあれだけ至近距離且つ大音量で聞こえていた羽音が消えた。


【ハチ6体の生命反応が消えました。生命核を抽出して保存します】


 今更だけど、魔物じゃなくてただのハチだったんだね。しくじったなぁ、魔物の方が生命核の質が高いのに。


【死体は如何しますか?】


 毒腺あればそれだけ回収お願いしまーす。

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転生してイモムシ(♀)にされたボクが案内係さん□嫁に□るまで ヒコサカ マヒト @domingo-d1212

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