第30話 決意しました。

 魔物を狩る決意も新たに、と言いたいところなんだけど、これに関しては堂々巡りだった今日この頃です。


 でも決意も改めたんだから、昨日までのボクとは違う。


 アンナさん、毒を付与する、みたいな魔法か能力ってある?


【検索中──、結果を表示します。ありますが、現在所持中の生命核を全て消費します。取得しますか】


 毒吸収を取ってからカマキリとクモしか倒してないから、そうなるよね。アリ沢山とどっちが大変だろう?


 でも出し惜しみしてアンナさんとの未来に支障を出すのは嫌だから、取得します!


【権限干渉中、付与 を取得します】


 毎回の如く何かがボクの頭に注ぎ込まれて、身体に流れて、馴染む。この過程も考えなきゃなぁ、終齢幼虫になってもこの平穏があるかどうかは分からない。


【付与 魔法の取得が完了しました。尚、この付与魔法は毒性の付与に限定されます】

【検索中──、結果を表示します】



付与:★☆☆☆☆

 (毒)

 指定した対象に毒を付与する。対象の自他を問わず、物質でなくても有効。

 尚、使用者が有毒生物だった場合には毒の強度に応じた上昇補正がかかる。



 もしかして、毒に限定して生命核の消費を抑えてくれた?


【はい。勝手かとは思いましたが、生命核が必要な量に足りず……】


 ありがとう、アンナさん、大好き!


【ああ、可愛い──……!】


 アンナさんがまた別世界へ旅立ってしまった……。本当にイモムシに対して可愛い、は仮にボクが人間に戻れた時が心配になるんだけど、取り敢えずそれはその時に考えよう。今は試すべきことがある。


 既に構築中の結界に意識を向けて、更に付与(毒)を使う。薄らと結界に禍々しい雰囲気が滲んだ。明らかに薄ら程度なんだけど、★1つじゃ多分、ボクがマズい、っていうのと大差ないよなぁ。毒が効くのに時間がかかりそう。


【鑑定中──、結果を表示します。この毒の強度はアリがこの結界に接触し続けて20秒程で行動に支障が出る程度です。上昇補正を加算しても15秒は切らないかと思われます】


 アンナさん、お帰り。


 アリでそんなにかかるなら、それより大きなカマキリや既に毒を持っているクモにはもっとかかるだろう。ボクの攻撃適正は皆無だし、最悪の場合には効かないということも視野に入れておかなきゃならない。


【検索中──、結果を表示します。直接的な攻撃にではなく結界に対して毒を付与している状態ですので、防御の扱いになります。この状態でなら付与(毒)自体は結界に接触した対象全てに効果を発揮します】


 つまり今は全くその予定はないけど、刃物に付与したら?


【攻撃の威力増強という扱いになり、不殺傷の呪いの効果範囲になります】


 今のボクって本当に武器に縁がないんだね、武器と魔法のファンタジー世界に来たのに。


【最初の時点で、天羽様から武器に関する要望はなかったので】


 そういえばそうだった、魔法に目が眩んでた。ま、まぁ、武道の心得もないし、武器を持ったところで、ね?


【戦えてもそうでなくても、私が絶対にお守りします】


 うん、お嫁さんが頼りになり過ぎるので、武器があってもなくても些末なことに思えてきた。


【妻を守るのは夫の役目ですので】


 そして一番大事な戦いが終わる気配がない……。

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