第4話 兄と妹

 「お兄ちゃん、クサい」


 家に帰るなり、そんなことを言われた。スーツを脱ぎ、牛乳でも飲んで一息つこうかとキッチンへ向かうと、既に先客がいたのだ。


 「あ……ごめん、ごめん」


 苦笑いしながら頭を掻く。酒は少しだけしか飲んでいないのに、鼻が利くものだ。


 「会社の人が歓迎会を開いてくれてね。ちょっとだけお酒を飲んだんだ」

 「ふーん。お酒ねぇ……」


 妹……月子が疑惑のまなざしを向けてくる。


 「あたしが言ってるのは、女の臭いのことなんだけどね」

 「お…オンナ!?」


 そんな馬鹿な……と思ったが、一つだけ思い当たる節があった。パーティのあいだずっとまとわりついていた、ラミィだ。


 これ食え、あれ食え、グラスが空だの、口が汚れているだの……甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたお陰で、随分と快適に過ごさせて貰った。

 しかし隣にいただけなのに、そこまで匂いが染み付くだろうか。焼き物や炒め物の料理のほうが、よほど強い臭いだと思うが……。


 「ずっと一緒に生活してれば、些細な変化でも気付くものなの。……お仕事、上手くやっていけそうなんだね?」

 「え?」

 「朝に出ていったときと、表情が違うから。きっと気に入るような職場だったんだろうなって」

 「そ、そうかな……」


 衣服を嗅ぎ、ほっぺたを触り、せわしなく身体を動かす風太。そんな兄を微笑ましく見つめる月子は、高校を卒業したばかり。デビューしたての新人ニートだった。


 「妹としては、お兄ちゃんの社会人デビューが上手くいったみたいで、ひとまずは安心かな」

 「兄としては、妹のニートデビューが心配で仕方がないけどね」

 「うちはもう大学に行くお金はないし、かといってあたしも働く気ないし、しょうがないじゃーん?」


 わざとらしく大きな声で言う。その理由は……台所に夕食の準備をしている母親がいるからだろう。母は振り返りもせず、無言で揚げ物を続けている。


 我が家、新井家は、家族仲があまりよろしくない。その主な原因は自分にあるのだが、今更どうにもならないと思っている。自分も月子も、もう親の庇護なしには生きていけない子供ではない。彼らが気に食わないなら、こちらから出ていけば良いのだ。ただ、そうするための財力……先立つものがないので、しばらくはここに居続けることになるだろう。


 しかし、月子だけを置いて出ていくというのは……不安だ。両親は自分たちと一切口をきかないが、生活に必要な面倒はきちんと見てくれる。それだけで充分に恵まれているのだろうが、この家には人間らしい感情の触れ合いはない。社会との交流もないまま、こんな冷えきった環境に身を置いていては、そのうち彼女の心は永久に閉ざされてしまうだろう。


 「そうは言っても、アルバイトぐらいしないと、好きな物も買えないじゃん」

 「別に〜。お小遣いも貰ってるし」

 「えっ、そうなの、母さん?」


 ……返事なし。

 嫌な親だ……と思うのは、親の心子知らずというものだろうか。ここまで育ててくれたことには感謝しているし、自立しても良い年齢になってなお家に置いてくれているのは、彼らの優しさだと信じてはいるが、ここまで露骨な態度を示されるのはさすがに堪える。


 「あたしのことはいいから、お兄ちゃんは自分のことを考えなよ。異人……がどういう人たちなのか知らないけどさ。ただでさえちっちゃいのに、舐められでもしたらやりづらいでしょ」


 異人という言葉に、母親が反応する。一見、平然としてはいるが……内心は穏やかでないだろう。息子が異人と関わる仕事をしているなど、プライドの高い彼らには耐えられないことなのだ。


 「みんな優しくて親切だから、その辺は心配ないかな」

 「へぇ〜。身長のこと、なんにも言われないんだ」

 「少なくとも、会社ではないね」


 検問所で思いっきり子供扱いされたが、そのことは伏せておいた。


 「良い人たちじゃん。それに比べてさ……」


 ダンッ!

 テーブルに、唐揚げが盛られた皿が乱暴に置かれる。そのあてこすりのような行動に月子は腹を立てたらしく、バンッ、と同じようにテーブルを両手で叩いて立ちあがった。


 「なんなのそれ。言いたいことがあるなら、口で言えばいいじゃない。自分の思ってることも、ろくに主張できないわけ?」


 母と娘が……対峙する。冷めた目で月子を見る母と、憎しみの燃える目で母を見る月子。一触即発……そんな雰囲気だった。


 「時間と金をたっぷりかけた子供が、自分らの思い通りに育たなかったから、そんな幼稚なことを続けてるんでしょ? そりゃそうだよ。子供が子供を育ててるんだから、まともな大人になるわけない。それでもって、家から犯罪者が出たら困るから、嫌々で世話してるんでしょ? 全部分かってるんだよ、こっちは!」

 「月子、落ち着いて……」

 「いいから黙っててっ! お兄ちゃんもお人好しすぎるんだよ。異人と働くっていう決心を応援もしてくれないこの人たちに、ペコペコ頭ばっかり下げて! 背が低いのは産んだ親のせいなんだから、お兄ちゃんは悪くないよっ!」

 「やめないか、月子!」


 月子はひとしきり感情をぶちまけると、その勢いで食卓を出て行ってしまった。また部屋に閉じこもるつもりなのだろう。


 母は……能面のような顔で、配膳を再開する。あれだけ言われて、なにも感じないのだろうか、この人は……。いや、とっくに壊れてしまっているのかもしれない。   

 月子の言う通り、彼らが自分たちの面倒を見てくれているのは、ただただ世間体のため。そして自分たちもまた、彼らの用意した生活基盤にしがみつくしかない。形だけの家族……それ以上でもそれ以下でもない……無情な関係だ。


 もう、元には戻れないのだろうか。両親が、自分を普通の子供だと信じて疑わなかったあの頃には……。


 「ご飯、あとでいただくよ。せっかく作ってくれたのに悪いね」


 風太はそれだけ言い残すと、階段を上がって月子の部屋へ向かった。


 この家は、自分たちが生まれる少し前に建てられたと聞いている。だから物心ついたときから、それぞれ自分用の部屋が割り当てられていたのだ。これが決して当たり前のことでないというのは、もちろん知っている。つくづく、恵まれた子供だったのだ。

 

 『つきこ』


 小学生の頃に焼き物教室で作った、たどたどしい文字が刻まれたネームプレートも、今となっては痛々しく感じてしまう。

 ……親子を繋ぐかすがい……思い出の品々を壊し始めたときが、本当の限界なんだろうな。そうなる前に手を打たないと。いざとなれば、無理にでも連れ出して……。

 ドアをノックして、声をかける。


 「月子、ボクだよ。入ってもいいかな」

 「……どーぞ」 


 子供部屋には安全設計のため、カギはついていない。そっと扉を開けると……彼女はベッドでうつぶせになっていた。


 「いつ来ても過ごしやすそうな部屋だね」


 月子の趣味はゲームだ。昔から……というわけではない。子供の頃は、どちらかというと活発な女の子だった。しかし、兄である自分に対する親からの当たりが強くなるにつれ、それに反発して素行が悪くなっていき……それでも根が優しい子だから、犯罪には手を染めなかった。


 彼女にできた唯一の抵抗は、自分自身を傷つけること……身体も、経歴も、その全てを台無しにして、親のメンツを潰してやることだった。そしてそれは、成功してしまったのだ。その結果、数年前から引きこもりの状態になっている。

 

 「まあ、居心地は悪くないよ。良くもないけど」

 「なにかボクにもやらせてよ。えーと……」

 「あ、あ、ダメっ!」


 ソフトが並べられている棚を覗き込み、一部だけ不自然にかけられているカバーを除けようとすると、月子が飛び起きる。そして軽々と自分を抱き上げると、ベッドへと投げ飛ばした。

 ちなみに、彼女の身長は百六十八センチ。女性としてはかなり高いほうだ。


 「うわっ」


 ぼふん、と沈み込む身体。スプリングがギシギシと鳴る。そして良い匂い……いや、ちょっと臭うな。

 よく見ると、シーツが茶ばんでいる。さてはろくに洗濯に出していないな。これだから引きこもりは……。女子力どころか、人間力まで落ちきってるじゃないか。


 「女の子の部屋を物色しないで! そういうの、ヘンタイだからね!」

 「いやー、女の子を名乗る前に、やるべきことがあるんじゃないかな」

 「あたしはまだ十代だから。無条件にピチピチの女の子ですー」


 風太はほっとした。こういうやり取りができるなら、そこまで気にしなくても良いだろう。時間が経てば……それこそお腹が空けば、食事ぐらいは摂ってくれるはずだ。

 なにも口にしないことで自身を痛めつける行為を、一時期は繰り返していたが……最近はそういう兆候はない。もちろん、その他の自傷行為も。学校という重荷から解放されたことで、少しはマシになったのかもしれない。


 「ねえ、お兄ちゃん」

 「うん?」

 「いつ、ここを出ていくの?」


 ……困った質問だった。風太はなるべく慎重に、言葉を選んで答える。


 「少なくとも、今すぐにではないよ」

 「じゃあ来年とか?」

 「多分。奨学金も返しながらだから、まとまったお金ができるのはまだまだ先だね」

 「ふーん……。やっぱり、出て行っちゃうんだ」

 「まあ、ね。期待に応えられなかったぶん、独り立ちしてみせるのが、せめてもの親孝行かと思って」

 「親孝行かー。偉いね、お兄ちゃんは」


 ベッドに腰かけ、脚を伸ばして中空を見やる月子。その横顔は、彼の古い記憶にあるものよりも、ずいぶん青白く見えた。


 「あたしはどうしよっかなー。あの人らが死ぬまで居座り続けるのも、それはそれでいいんだけどさ」

 「まあ立派な家だし、売ったり取り壊したりするのはもったいないよね。お互いに結婚して別々の家庭を持つとかじゃない限り、ここに戻ってきて暮らすのはアリだと思う」

 「ぷっ、お兄ちゃん……彼女もいたことないくせに、未来予想図に結婚が組み込まれてるんだ」

 「し、小学生のときはいたよ!」

 「そんなの恋愛経験にカウントされませーん」

 「月子だって……いや、なんでもない」

 「別にあたしが処女だからって、気を遣わなくてもいいんですよ」

 「そんなこと言うんじゃないの!」

 「ま、どうせ恋愛なんかしたって、心がグチャグチャになるだけだし。そういうのは家だけでじゅーぶん」


 あっけらかんと言い切った彼女の本心がどうなのかは、知る由もない。


 ……自分を変えられるのは、自分だけだ。他人を変えることはできない。しかし手助けはできる。苦しい就職活動を乗り越え、自分がこうして新社会人への一歩を踏み出せたのは、月子が励ましてくれたおかげだ。いや、それよりもずっと前から……兄妹で助け合って、親が与えてくれないぶんの温かさを、分け合ってきたのだ。


 大人になって、家を出て、それまでずっと関わってきた家族に背を向けて、自分だけの人生を勝手に始める。それは本当に正しいことなのだろうか。立派になった姿を親に見せたい……それは都合の良い口実ではないのか。なにより親は良くても、一緒に育った兄妹は……ただの置いてけぼりだ。そんなの、悲しすぎる。


 「月子……」

 「なーに」

 「ボクは君を見捨てない、絶対に。約束する」

 「……はえ?」


 風太は決然と、そう言い切った。

 ……常識的に考えれば、大人になったら自分の人生は自分で切り拓いていくものだ。いつまでも同じ家族のままではいられない。だが、うちは非常識な家庭だ……恐らくは。だから今はまだ兄妹同士、寄り添いあっていても良いのではないだろうか。少なくとも、彼女が主体的に生きる意味を見出し、自らの足で歩き始めようとするまでは……。


 「……え、なに、もしかしてあたし、告白されてる? 近親相姦?」

 「違うよ! そしてそういうことを言わない!」

 「いやだって、それは妹に向ける言葉じゃないでしょ、どう考えても」

 「……それはそうかも」

 

 段々と恥ずかしくなってくる。そしてなぜか月子も、恥ずかしそうにしている。そんなふうにもじもじされると、こっちも反応に困るんだけど……。


 「ま、いざとなったら、そのときはよろしく」

 「も、もちろん。任せてよ」

 「……なーんかお兄ちゃん、たくましくなったよね。ちっちゃくて頼りないから、ずっとあたしが守らなくちゃと思ってたけど、これからは立場が逆転していくのかな」


 なんだか寂しそうに……けれど嬉しそうに、月子は身体を寄せてくる。手や足に刻まれた傷跡が、嫌でも目に入った。もうこれ以上、こんな傷を増やすわけにはいかない……絶対に。


 ふと、彼女の髪が鼻先をかすめた。ふわりとシャンプーの良い香りが……しなかった。なんだか汗臭い。


 「……ねえ、月子。お風呂はちゃんと入ってるの?」

 「え、えーと……三日前に入ったよ」


 沈黙。月子はニヤけ顔で頬を掻いているが……これは許されない。


 そういえば壁のゲートを通るときにも、ものすごくクサいオジサンがいたな。三日どころか、数か月レベルでお風呂に入っていなさそうな異人。もし可愛い妹が、あんなおぞましい臭気を発するようになったらと思うと……。


 「月子、お兄ちゃんはそういう性癖ないから。誰も喜ばないよ!」

 「別に誰かを喜ばすためにお風呂に入ってないわけじゃないよ!?」


 そんなの当たり前だ。誰かの笑顔を想像してベッドに身体の垢を擦り付けるなんて……そんなの、そんなの、変態を通り越して狂人じゃないか!


 「月子にもあのニオイを嗅がせてあげたい。あの……この世のものとは思えないニオイを」

 「そんなに?」

 「うん。ゲロとうんこを混ぜて、それを一週間ぐらい発酵させたような」

 「あのさー、女の子にそういう例え話をするんじゃないよ!」


 クッションでボコ、と殴られた。確かにデリカシーに欠けていたかもしれないが……汚い言葉を使わずに表現できる気もしないんだよな……。


 「異人って、そんなにクサいの?」

 「いやいや、あれは特別!  他の人たちはみんな清潔にしてるよ。それこそ、人間と変わらずに」

 「へぇ〜。みんな、あたしたちと同じように生活してるの?」

 「そうだよ。世間で言われてる異人のイメージなんて、あんなの……嘘っぱちだ。みんな本当に親切で、優しくて……信用できる」


 それを聞いた月子は、面白くなさそうに口を尖らせた。


 「初日が終わったばかりなのに、ずいぶん異人の肩を持つんだね。その人たちが腹の底でなに考えてるかなんて、分からないじゃん」

 「……どういう意味だよ、それ」

 「そのまんまの意味だよ。歓迎会を開いてくれて嬉しかったのは分かるけど、感動しすぎなんじゃないの」

 「なにっ……」


 そのトゲのある言い草には、風太もカチンと来た。一気に表情が強ばる。


 「お兄ちゃんは、簡単に他人のことを信用しすぎなんだよ。ちょっと優しくされるだけですぐに、自分のことを認めてくれた、なんて思うんだから」

 「月子。異人だからって、そういうことを言うんじゃない。みんな同じだ。人間と変わらないよ」

 「あたしは、対人関係全般について言ってるの! 異人は野蛮だとか、そんなことは全然思ってない!」


 月子は声を張り上げた。

 まずい……ここでまた興奮させると、今度は家を飛び出して行ってしまいそうだ。彼女を落ち着かせに来たのに、こんなことを話してどうする……。


 「分かった、月子。確かにお兄ちゃんはお人好しだ。でもボクと彼らは、これから一緒に働いていく仲間だ。仲間のことを信じないで、良い仕事はできないだろう?」

 「よく言うよ。誰かに信じられた経験もないくせに」

 「っ……」

 「あ……ご、ごめん……」


 言ってはいけないことを口にしてしまったことに気づいた月子は、慌てて謝った。

 今のは、効いたな。だが、月子のこういう歯に衣着せぬ物言いは、昔からだ。どうということはない。


 「……なんかあたし、最低だ……。せっかくお兄ちゃんが慰めに来てくれたのに、意地悪なこと言って、不満の捌け口にしようとしてる……」

 「ボクは全然気にしてないから。大丈夫」

 「ほんと?」

 「ああ、本当だよ」


 上ずった声で、子供のように不安げな視線を送ってくる。


 月子にとって、思ったことをなんでも話せる身近な人間は、兄である自分しかいない。今時、インターネットでいくらでも話し相手はいるだろうが、それでは彼女の心は満たされないのだ。


 誰か……一人でも良い。友達と呼べる人物がいてくれさえすれば、月子の精神状態もかなり安定すると思うのだが……。兄という立場では触れることのできない、もう一つの側面を癒してあげられる存在が……。


 「……お兄ちゃん、お風呂に入ってきなよ。仕事帰りで疲れてるでしょ」

 「ああ、そりゃもちろん入るけど……月子は?」

 「あとで入る。今はちょっと眠りたいの」

 「……わかった」


 一人になって気持ちを整理したいから、部屋から出て行けと。そういうことらしい。無理に居座るのは逆効果。ここは言う通りにしたほうが良いだろう。


 「月子、約束。あとで必ずご飯を食べて、お風呂にも入ること。オーケー?」

 「オーケーオーケー」


 そんな軽いやり取りをして、ドアノブに手をかけたところで、再び届いた月子の声。


 「お兄ちゃん、これだけは忘れないで。他人は、自分の思い通りになんて動かない。でも、自分を思い通りに動かそうとしてくるってこと」

 「……ああ、胸に刻んでおくよ。じゃあ、おやすみ」


 ドアの閉まる音で、二つの空間は隔てられた。あちらはもう、月子だけの世界だ。自分も、自分のやるべきことをやらなければ。


 ……自分を思い通りに動かそうとしてくる、か。整った指揮系統と、共通の目的意識を持った組織なら、そういうことも多々あるのだろう。たとえそれが己の意思に反していたとしても、命令には従わなければならない……。


 『社長の命令には絶対に従うこと!』


 これはある意味、良心的な表現なのかもしれない。言うことを聞かない構成員など、組織には不要だ。社会の不文律を文字に起こしただけ……思うところはあるが、やはりそう捉えたほうが良いのだろう。


 ……もし月子の言う通り、異人たちがこのようなルールを利用して、とんでもない命令を下してきたとしたら、自分はそれを受け入れることができるのだろうか。それこそ倫理に反することだったり、人間と敵対するような行為を……。

 

 「あーもうっ!」


 月子の影響で、悪い想像ばかりが膨らんでしまう。入社したての新人が、こんなことを考えてどうする!


 部長も言っていたように、まずは異人たちの過ごす空間に慣れることだ。徐々に仕事を覚えて信頼を積み重ねていけば、そのうち大きなことも任されるようになって、昇進の道も拓けるかもしれない。

 そう、出世すれば、自分が他人を動かす立場になるんだ。月子の言うように、他人の意のままにされるだけではなくなる。そうだ、それが良い。一所懸命に働いて、出世することを目指そう。これぞ健全なサラリーマン!


 明日も頑張ろう。そんな前向きな思いを抱いて、風太は一日の生活を終えていくのだった。

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