第5話 遠慮なく触って♡

 羽衣さん・結衣さん姉妹の家庭教師をする事になった俺。勉強を教えた経験はないが、普段している勉強方法を2人に試してみよう。


「今から、見せてもらった問題集で間違えた問題だけを一部出題するからな」


「えっ!?×2」


2人はハモってから、気まずそうに俺から目を逸らす。わかりやすい反応だな…。


「おいおい、間違えた問題をそのままにしちゃダメだろ」


「だって、めんどくさいもん。ねぇ? お姉ちゃん?」


「うん…」


復習をしなければ、成績は絶対伸びない。2人には頑張ってもらわないと!



 さっき言ったように、間違えた問題だけを出題してみる。…2人は予想通り、間違えた問題を再び間違えた。


「間違えた問題は、2度と間違えない気持ちで復習するんだ。わかったか?」


「わかったけど、覚えられる自信がないなぁ…。圭君はどうやって覚えてるの?」


「俺は…、“声に出しながら書く”スタイルだな。視覚と聴覚の両方を使うから覚えやすいぞ」


「ふ~ん。圭くんがそう言うならやってみよ」


俺のアドバイスを聴いて、羽衣さんと結衣さんは声に出しながら書いて覚え始める。本当に覚えているかどうかは、後で再テストして確認だ。


そのまま見守ろうと思ったが、1つ気になる事がある。


「結衣さん、もうちょっと声のトーン落として。独り言ぐらいで良いから」


「そうなんだ。大きい声のほうが良いと思ったのに…」


「それだと声を出す事に意識が向きがちだ。バランス良くしてくれ」


「は~い」



 2人が答えを覚え始めて10分ぐらい経っただろうか。問題数は多くなかったし、これぐらいで切り上げよう。


「どうだ? 覚えられたか?」


「多分…」

2人は顔を見合せた後、自信なさそうに答える。


「じゃあ再テストするからな。これの出来に関係なく、終わったら休憩にしよう」


「わかった」


「お姉ちゃんより良い点取るぞ~!」


……結衣さんの宣言も空しく、2人は再テストで同点だった。さすが双子の姉妹。


「しばらくはこんな感じでやって行こうと思う。良いかな?」


「私は圭君の言われた通りにするよ」


「あたしも!」


どうやらやる気はあるようだ。少しずつ、こまめにやるとしよう。幸い時間はある。


「圭君、私達の勉強を見てくれてありがとう。お礼に好きなだけ触って良いよ♡」


「あの話、冗談だったんじゃないのか!?」

普通に考えて、女子が異性に自分の体を触らせるとは思わないだろ。


「あたし達の覚悟を冗談扱いするなんてひどい!」


「だよね!」


マズイ、結衣さんだけでなく羽衣さんも怒りだしたぞ。2人は親戚なうえに年下の女子だ。理由はどうあれ、手を出して良い訳がない!


何か話題を出して、2人の気を逸らさないと! 何が良いかな…?


「そういえば、2人はになるのか? それとも二卵性?」

昔は気にならなかったが、同居するなら知っておきたい。


「圭君、いちらんせいソーセージって何?」


「“いちらんせい”と“にらんせい”ってメーカーがあるの? あたし聞いた事ないな~」


…予想の斜め上を行く回答。2人は勉強が苦手なだけでなく、おバカかもしれない。


「メーカーとかソーセージは関係ないよ。…こう書くんだ」

俺は適当な空きスペースに一卵性・二卵性双生児を書く。


「そういう事だったのか~!」


「まぁ、言葉だけだとわかりにくいかもな…」

本当はそう思ってないが、結衣さんをフォローするために嘘を付いた。


「それで、結局どうなんだ?」


「確か……、お母さんは“二卵性”って言ってた気がする」


根拠はないが、羽衣さんが言う事は正しいと思う。というのも、この姉妹は外見こそ似てるが、話し方はそこそこ違うからだ。


一卵性なら、ここまで違わないだろう。あくまでうろ覚えの知識だから、過信はできないが。


「やっぱり圭君は物知りだね。これからも色々教えて♪」


「これぐらいは常識の範囲内なんだが…」

笑顔の羽衣さんに見つめられると照れ臭くなる。


「…そうだ! 保健体育も圭くんに教えてもらうのはどう? お姉ちゃん?」


「それ良いね! 圭君お願いしても良い?」


「良くない! 保健体育は専門外だ!」

万が一でも、変な事を考えたら…。


「そんな事言わないでよ~。教科書ではわからない事を教え合おうよ~」


結衣さんは諦めようとしない。…だいぶ休憩したから、勉強に移れるな。


「2人共、休憩はここまでだ! 勉強を再開するぞ!」


「次の休憩の時に、圭くんを説得しようね。お姉ちゃん」


「そうだね」


さっさと忘れてくれ…。そう心の中で願う俺だった。

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居候する事になった親戚の双子がおバカな件 あかせ @red_blanc

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